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ガンバの柱

「ミッドフィルダー50番 遠藤保仁」
ヤハマスタジアムのアウェイゴール裏から拍手が沸き上がる。

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激動の川崎戦から一週間、今節はガンバ大阪にとって重要な意味を持つ一戦であった。

昨シーズンのレンタル移籍を経て、ジュビロに完全移籍した遠藤との再会。
水色のユニフォームを身に纏い、50番を背負うヤットさんの姿に多くのガンバサポーターが複雑な思いを抱いたであろう。

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そうした中で私は別の意味で複雑な感情を覚えた。
それは「遠藤保仁にそこまで特別な想いを抱くことができない自分」との葛藤である。

もちろんガンバ大阪というクラブにおける遠藤保仁の存在の大きさは十分理解しているつもりだ。
2005年J1優勝から始まった数多くの獲得タイトル
2008年クラブW杯でファンデルサールから決めたPK
2012年降格から残留そして三冠、MVP
そのどれも輝かしいガンバの軌跡である。

しかし私は22歳、サッカー、そしてガンバの試合を集中して見始めたのは2014年〜である。
そして三冠を果たした2014年以降、ガンバの成績と遠藤の出場時間は下り坂を迎える。
宮本監督は脱遠藤へ舵を切り、遠藤はそれを察して、ガンバを去った。
(この間も試合に出れば彼は傑出した技術と戦術眼で我々を魅了してくれた)

これを踏まえて、遠藤保仁に抱くイメージは「偉人」である。
確かにそこにいて尊敬しているが「家族」「ヤットさん」と呼ぶには何だか烏滸がましいのだ。

こんな事は考えたくも感じたくも無いし、普通に「ヤット」と呼び捨てにしたいが、私には出来ない。

だが、そんな自分だからこそ感傷的にならず、見えたものがあるかも知れない。

試合中ふとある疑問が湧いてきた。
今シーズンのガンバで遠藤の代わりを担う選手は誰なのか?
遠藤の代わりなんていないという議論は一旦置いておいて、頭の中には倉田秋が思い浮かんだ。

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ピッチ外ではキャプテンとしてチームの顔となり
ピッチ内ではボランチとしてゲームの組み立てからチームを支える
正に長年遠藤がガンバで担ってきた役割である。

ただ、その背景は大きく異なる。
一言で表すと、「遠藤は自然体に↔︎倉田はチームの為に」という違いだ。

遠藤は自らが最もプレーしやすい場所としてボランチを選び、ゲームコントロールで強みを発揮してきた。また、その自然体で慌てない様がチームにも安心感をもたらし、それが彼のキャラクターとなって注目を浴びた。

倉田を見てみよう。
今シーズンの新体制発表会で彼は「10ゴール10アシスト」を目標に掲げた。その目標から照らし合わせると本人がゲームの組み立てを担うボランチでの出場を希望していたとは思えない。
そうした中で、時に批判を浴びながらも試合に出続けている。

また、ジュビロ戦のキックオフ前、石川を懸命に鼓舞する姿が見えた。
以前のインタビューで、背中で引っ張る存在でありたいと語っていた倉田。
元々コミュニケーションを多く取るタイプでは無いように映るが、キャプテンとしてチームに何をもたらせるか考えての行動だろう。

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ここで言いたいのは遠藤より倉田の方が良いとか悪いとかそういった問題では無い。
ただ一つ言えるのは遠藤保仁というガンバを形作る柱が抜けた今、倉田秋という新しいチームの柱がガンバを支えているということである。

ガンバ時代の遠藤のプレーで何故か一番記憶に残っているのが、2019年松本山雅戦の2点目をアシストしたスルーパスである。相手DFの頭を超え抜け出してきた選手にピタッと収まるパスを見て、見てる景色が違うと感じた。

一方でジュビロ戦の倉田で最も印象的だったのは、92分45秒のスプリント。ジュビロにスペースがある中で、逆サイドから戻り攻撃を遅らせる。
歯を食い縛り、足が廻らなくなりながらも懸命に走る姿に勇気づけられた。

芸術的なスルーパスと泥臭いスプリント、両者は全く異なるが、それで良いのだ。ガンバが強くなる為にキャプテン倉田秋は欠かせない存在である。

そしていつか遠藤が掲げたシャーレを彼にも掲げて欲しい。
山雅戦で遠藤のスルーパスを受けた時のように。

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