林檎
林檎は死にました
赤い頬が
爆発して死にました
林檎は恋をしていました
静脈青き青年に
焦がれてほんとに焼け死にました
林檎は最後に言いました
life is very short
土に還って恒久の
生命を手にいれ死にました
青年はやがて違う女に惚れました
女も満更ではなさそうでした
ふたりは夜ににけつして
鳥居が跨がる階段へ
仲良く腰をおろしました
そこへゴキブリが一匹
のこのことやってきて
女は叫び
青年は興奮して
何度も何度も踏みつけました
何度も何度も踏みつけると
何度も何度も踏みつけたくなって
何度も何度も踏みつけました
何度も何度も踏みつけつづけ
土に膝まで埋まりました
林檎は死にました
林檎は死にましたが
林檎は生きていました
林檎は青年の脚を食べて
幸せに死にました
おしまい