石川金子

書いては捨て書いては捨て。 石川金子 (@dodoria_broly) https:/…

石川金子

書いては捨て書いては捨て。 石川金子 (@dodoria_broly) https://twitter.com/dodoria_broly?s=09

マガジン

  • 東京云景

    東京に住む、田舎者の東京日記。

  • 赤虫

    赤い少女の話

  • 日記

    日記。とりとめもない、つれづれ。

  • 葬列【小説】

    葬式のはなし

  • エッセー尾形【エッセイ】

    エッセイ

最近の記事

  • 固定された記事

HOTEL J【短編小説】

ある夏の暑い日、男はホテルの一室でワイングラスを傾けていた。中身はイタリア産の赤ワインと錦糸町の哀愁が五対三の割合で入っている。残りの二割は『  』である。名前はまだない。  男がその液体Aを飲み干し、液体Bを催したためにソファを立ち、床に置いてあった液体A{C}の瓶に躓いたところで、ドアがノックされた。  狐、狐。間違えた。コン、コン。  男は足元を濡らしながらも平然としたニヤケ顔で鍵を開けた。中に入ってきたのは汚いモナリザだった。勿論、ヴィンチ村のレオナルドさんが生み

    • 虚無層の手記

       まず、テレビで野球中継を観て、ヤクルト・スワローズがそこにいないのが薄らと嫌で、試験も今日仕事をずる休みしたことも薄ら嫌で、ついでにYouTuberとかいう輩が「おすすめ」されるのが嫌で、外へ出た。  元来「おすすめ」されることが嫌いである。 「おすすめ」されればされるほど、触れたくないのである。  かと言って、「おすすめ」されたものを全く無視している訳ではなく、ベジータのプライドの如き高い壁を突破する条件は以下 ①はなから私が興味を持っている ②気が付いてない ③つま

      • 東京云景  第一景 代官山

         その日、代官山は湿っていた。  初めて行く街は、電車の中で幾度も地図を開いて閉じて開いて閉じて、開いて閉じても駅から降り立ったら全てが無駄になる。  GPSほどあてにならないものはないね。あたしとあなたみたいに。  とりあえず看板が見えたスタバ(幼少期から慣れ親しんでいたから敢えて、ね)の方角に進めば良い。画用紙を切るとき、端にチョンとえんぴつで印をつけるくらいの頼りなさで、歩いてみる。  ライブに向かうときはだいたい、グッズを身に着けている人についていけばいいのだが、サ

        • こんな夜

          例えばこんな夜があってもいい 中村一義を聴きながら、セックス教団の構想について考える夜 例えばこんな夜があってもいい プレイステーションが静かに眠り、夕焼ける夜 例えばこんな夜があってもいい じゃがいもの芽をとりながら、流れている紛争のニュースを観ない夜 例えばこんな夜があってもいい 谷間のほくろが、壁這う蜘蛛を吸い込んでいった夜 例えばこんな夜があってもいい 寺山の詩集をほんとに破った夜 例えばこんな夜があってもいい ティッシュの山に、生命が宿る夜

        • 固定された記事

        HOTEL J【短編小説】

        マガジン

        • 東京云景
          1本
        • 赤虫
          2本
        • 日記
          1本
        • 葬列【小説】
          4本
        • エッセー尾形【エッセイ】
          3本
        • 咳【小説】
          2本

        記事

          赤虫#2

          数メートル先に少女らが連れ立っていたので、少女は病院の東側を通らなければいけなくなった。   少女は畦道を行く。  蚊柱が濃く視界を奪い、ぬかるみはソックスに水玉模様を作る。少女は休耕田からはみ出たヨシに膝丈を濡らしながら畦道を行く。 声を枯らしたカラスが一羽飛んで来る。どこまで続くのかわからない田園のはじまりの方から飛んで来る。カラスは少女を追い越して、なにかの死骸を突いている。  この町はいつの間にか血生臭くなった、と少女は思う。 あれは猫か鼠か。顔が潰れてよおくは見えな

          スケッチ3

          ここ数日は乗り込むと必ず、youtuberの処女小説の広告の前に立たされてしまう。 普段は人の温みを嫌い、輪っかに手首を通す私も、このときばかりは吊り革をぎゅっと握る。 悔しさでしょうか、悲しみでしょうか。 嫌悪です。 10年前まで素晴らしかった(虹や鳩や堂々たるヴィーナス像がそこには見えた)世界はすっかり無くなった。 今の世界は陰毛と埃にまみれて……

          スケッチ3

          スケッチ2

          眼の前の座席には老婆。 ベージュのモッズコートに、同じくベージュのベレー帽、同じくベージュのマスク。白髪のショートカット。黒いパンツから覗く靴下はショッキングピンクである。 良い。とても良い。 私は常に行く先を案じている。 温泉は恐怖である。自分の未来がタオル1枚で真剣に背中を流しているのである。 着飾る文化をこれほどありがたく思ったことはない。

          スケッチ2

          スケッチ1

          眼の前の男が降りたので、今日は座席に座ることができた。 高田馬場はアナウンスから駅への到着までに数分時間がある。アナウンスに釣られて立ち上がってしまう人を見るのが小さな愉しみである。 無知への優越である。この数分間に己の小さなプライドが脈打つのを感じる。

          スケッチ1

          林檎

          林檎は死にました 赤い頬が 爆発して死にました 林檎は恋をしていました 静脈青き青年に 焦がれてほんとに焼け死にました 林檎は最後に言いました life is very short 土に還って恒久の 生命を手にいれ死にました 青年はやがて違う女に惚れました 女も満更ではなさそうでした ふたりは夜ににけつして 鳥居が跨がる階段へ 仲良く腰をおろしました そこへゴキブリが一匹 のこのことやってきて 女は叫び 青年は興奮して 何度も何度も踏みつ

          夜です

          なにもかもがちぐはぐで どうにもならない夜です もう魔法がつかえなくなった ことにきづいてしまった夜です かつての友は夕焼けの 用水路をばまさぐって メダカをふたつすくっています あの子に会わせる顔がない 涙をふたつ流す夜です

          報告書DAY4

          かんずめ。 シャチ、三振。 4日目はこうだ。 朝の労働を終えて、そのまま外へ。 コーヒー屋の2階から、街が明転、暗転を繰り返すのを眺める。 ときどき、枯葉のような古本を山ほど積んだトラックがドナドナと走っていく。 荷台に屋根はなく、周りを廃板で囲っただけの、粗末なトラックである。 All the lonely people Where do they all come from? なんだか木枯らしが吹いたので、部屋に戻って眠る。出かけている間に清掃されていて、

          報告書DAY4

          報告書DAY3

          かんずめになっている。 拉致、軟禁。 三日目はこうだ。 朝またパンが出た。 出た。という感じなのである。うわぁ、出ちゃったよ。という感じなのである。 袋に入っているパンがやたらでかくて固くて、さながらゴローンである。腕をもがれた、ミロのゴローンである。本来の用途としてバターを塗る、チーズやハムを挟むなどをするはずなのだが、パン3種といつもと同じポテトサラダとキャベツの千切りとコーヒー以外には何もない。なんならフォークすらないときがある。とりあえずかぶり付ついて、7割食う

          報告書DAY3

          報告書DAY2

          かんずめになっている。 自らを拉致し、軟禁している。 二日目はこうだ。 朝、外は茶色くて中は白く、スポンジのように柔らかいが表面が布で包まれているみたいで、沢山噛まないといけないやつを3つ喰った。 無味のとしょっぱいのと甘いのである。 無味のは、集合写真の男子生徒が腿に置く拳みたいな形で、表面の茶色い布が真ん中で十字に裂けて、なかの白いスポンジが覗いていて、とにかく沢山噛まなければいけなかった。 しょっぱいのは、ぱりっと糊付けされた茶色い布が幾重にも重なり、映画『

          報告書DAY2

          報告書DAY1

          かんずめになる。 自らを拉致し、軟禁する。 一日目はこうだ。 松屋でハンバーグを食べた。 やけに注文の多い男がいた。 4度も厨房へ行き、何か指図をしていた。 袖のみ赤く、胴だけ黒のTシャツを着ていた。 ドッヂボールとプーマの筆箱を思い出した。 目の前のハンバーグにクラスメイトが靴を擦って線を引いた気がした。 その線がいよいよ皿を出て、近くのGEOまで届きそうなとき、ふと我に返ると、店内の客は私一人だった。日曜の昼である。 その後、ずたずたのハンバーグを掻き

          報告書DAY1

          朝起きて学校に行く話

          目覚ましのアラームが鳴ったので、殴った。 うんと殴ってやった。 目覚ましはサンドバッグ。殴られるのが仕事である。彼はたまに僕の部屋から出て、渋谷の夜の街。ハチ公に見られながら、「一回100円」のスケッチブックを片手に殴られ屋をやっているらしい。だけれども、こんなご時世だから、スケッチブック代を稼ぐのもやっとで、始発までうんうん粘って、ほとほと疲れた顔でこの部屋へ帰ってくる。 あまりにも疲れた日は、僕を起こすのを忘れて眠っている。寝坊した僕は怒って、彼を殴る。無料で殴る。沢

          朝起きて学校に行く話

          timelimit 122

          2105310855 オールナイトロング/人生 俺の背中に火をつけろ! !/大竹まこと 人間なんて/吉田拓郎 だいぶ前、大竹まことが歌っている映像を見せられたことがある。 野音かどこかの。 それを急に思い出したので探した。 私の知っているシティボーイズは三人ともおじいさんなので、叫び散らしている姿は新鮮。 そして捨てるほどの人生は私にはない。 ついでにおすすめにでてきたタモリ俱楽部「ナゴム倒産」。 俳優をやる田口トモロヲしか知らないし、ケラリーノサンドロヴィッチも劇作

          timelimit 122