GABRIEL

普通の30代。 普通の会社員。 普通にひとり暮らし。

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最近の記事

ばあちゃん

祖母が他界した。92歳の大往生。 こじんまりとした家族葬で、涙々というよりも笑顔で思い出話に花を咲かせた。 通夜前日、祖母についてたくさんの事を聞かれた。 告別式の司会原稿作成に必要なようだった。 さながらクイズのようで、親戚同士で回答権を押し付けあった。 たとえば、こうだ。 好きな食べ物は? 好きな飲み物は? 好きな色は? 趣味は? 性格は? 毎日していたことは? 夫婦でよくしていたことは? 思い出の旅行先は? 何気ない質問が、頭を悩ませる。 自分の知っている祖母が

    • 呪詛

      戻りたくない場所がある 戻りたくない自分がいる 1人になりたいわけじゃない 誰かといたいわけじゃない 誰の指図も受けたくない もうここらで打ち止めだ こんな願いが叶うなら どんなに楽なことだろう 何も望んでない 期待してない あなたがどう思っていようともどうでもいい わたしには関係ない 離したくない 自分のものではない 叶わない 心を持っていかれてはいけない 変な幻想をもってはいけない 夢や空想の話で 映画やドラマの話で 現実世界では起こりえないし そもそも幻想

      • こういうのも幸せ

        相変わらず、馴染みの店に1人でふらっと立ち寄るのが好きだ。 来るもの拒まず、去るもの追わず。 ハイカウンターのスツールによじ登り 右に左にゆるゆる回りながら会話を楽しむ。 人生の先輩方はほろ酔いになると 決まって愛だの恋だのを説きたがる。 どうしようもないその指南が どうしようもなくおもしろい。 若い女性客に恥じらいながら話しかけ、 気の強い女店主に愛想をふりまき、 我が家で待つ女性に思いを馳せる。 おもしろい。 元気がでる。 こういうのも幸せだと思う。 お決まり

        • おかゆさん

          子供の頃からよく可愛がってくれた叔母が入院した。 5年前から体調をくずし、これで何度目の入院だろう。 気持ちをつなぎとめるため、親戚がかわるがわる毎日見舞いに行っている。 母と2人で、片道1時間半の新幹線旅。 不安と緊張でいつもの親子漫才は陰をひそめた。 病院という場所はなぜあんなに居心地がわるいんだろう。 心がざわついて、平静を装うことができない。 母の誘導で建物内をぐんぐん進んでいく。 心の準備なんてできやしない。 いつになく、母から焦りを感じた。 辿りついたのは、

        ばあちゃん

          傷口はふさがった

          雨の日に家の窓から外を眺めるのが好きだ。 窓をそっとあけて、雨の音と匂いを感じながら、じっと外を見る。 中でも雨が木々にあたる音は格別だ。 心が静まりどこか満たされていく感覚になる。 父親のスーツのジャケットの匂いが好きだ。 父親が帰るのを夜遅くまで待って、眠い目をこすりながら玄関まで迎えに行った。 高熱をだした私を抱きかかえて、病院に連れて行ってくれた。 卒業式、よく頑張ったね、と言って抱きしめてくれた。 年上だけど後輩のステキ才女が好きだ。 愛犬おもいで、ちょっと自分

          傷口はふさがった

          因数分解

          仕事おわり、自転車をおしながら歩いて帰るのが最近のお気に入り。 秋の風を感じながら、他愛もない悩みごとを1つ考える。 ゆっくり歩いて15分。 自分と向き合って、真意をみつけるにはちょうどいい時間だ。 若者がざわめく繁華街をぬけて、おじさん御用達の渋い居酒屋地帯を通る。 間には小川が流れ、ガールズバーで同僚に馴染めない女の子が橋の上で佇んでいる。 陰と陽を感じる。 騒がしい飲み屋のせいで、そのコントラストが一層激しく、川べりの人々が物憂げに映る。 数日の内にぶつけられた問

          因数分解

          ビリビリ

          誘いを断られるのが苦手だ。 この世が終わったような絶望感でいっぱいになる。 ただ都合が合わなかっただけなのに、 また誘えばいいだけの話なのに、 シュルシュルと気持ちがしぼんでいく。 ただ待つということが苦手だ。 特に在宅を迫られる予定がどうしても入れられない。 宅配便の受け取り、業者の工事。 ほんの数時間で済む話なのに、ポッキリ心が折れてしまう。 注目されるのが苦手だ。 特に好意をもたない目にさらされると、緊張と恐怖でブルブルと震えてしまう。 瞳の奥の感情が、ありっ

          ビリビリ

          きっと忘れない

          人は忘れる生き物とはよく言ったものだ。 中でも自分はその最たるもので、受け皿が極端に小さい。 どれだけ真剣に聞いても、人の話は忘れるし、 どれだけ心動かされても、本の内容は思い出せない。 記憶をするにもある程度努力は必要で、それを怠っているんじゃないか?とある人が言う。 実際そこまで興味がないから、記憶に残らないんじゃないか?とある人が言う。 果たしてそんなに薄情な人間だっただろうか。 といった経緯で、noteに思い出を残すようになった。 この際、時系列なんてどうだって

          きっと忘れない

          夏の思い出

          「去年の夏、どうやって乗りきっただろう…」 毎年そう思うことは覚えているのに、どうやって夏を過ごしたか全く思い出せない。 日々、物忘れに拍車がかかっている。 なんだか大事なことも忘れてしまっているんではないか、と炎天下のアスファルトの上で不安にかられた。 そういうときは音楽を脳内再生すればいいよ、と誰かが言っていた。 先人の知恵はなんとやら。実践あるのみだ。 目をとじると、ケツメイシの『夏の思い出』が頭の中をめぐる。 学校で補習授業をうけながら、山しかみえない窓をにらみ

          夏の思い出

          レイニーブルース

          雨がしっとりと降る金曜の朝、自然と部屋の灯りをつけた。 暗い分厚い雲が空をおおっていた。 梅雨にはいる前から、雨天用の靴をさがしていた。 子供が履くピンクや黄色のでもなく、地元のおじちゃんが履く黒いゴム長でもなく。 機能性と見た目を兼ね備えた、すーぱーれいんしゅーず。 去年買ったconverseの真っ赤なレインスニーカーは、雨に濡れると予想以上に重く、履きなれないハイカットのせいで両足首はミミズ腫れになった。 2回ほど履いたら、きれいに箱に戻してBIG AMERICAN

          レイニーブルース

          よくできた友人

          こんな言い方をしたら、何を言ってんだと叱られそうだけど、私の友人はよくできた人だ。 常日頃から知性の高さと品の良さを感じていたのだけれど、この間彼女の昔話を聞いて、改めてそう思った。 いつも聞き役に徹する彼女が、その日はすこし饒舌だった。 飲みなれた日本酒ではなく、ワインとジンジャーエールのカクテルにときめきを感じたせいかもしれない。 キティ(赤)とミッフィー(白)を交互に飲んでいたから、そのせいもあるだろう。 ほんの1年前まで、彼女には付き合っている人がいた。 地元で社

          よくできた友人

          感じっこ

          7歳頃まで関西で育ったので、いまだに母と話すときは関西弁になる。 DNAに染み込む関西弁のパワーには驚かされるばかりだ。 とはいえ、過ごした年月でいえば今の地元(関西圏ではない)の方がずっと長い。 多感な中高時代と、触れるものみな傷つけた大学休学時代を過ごした。 しかし不思議と方言は身につかなかった。 リスニングはできるが、スピーキングにはつながらなかったのだ。 かくして標準語と関西弁のバイリンガルとなったわけだが、最近それぞれの言葉を話すとき、自分の心持ちが微妙に違うこ

          感じっこ

          遊び

          ゲームというものにあまり触れてこなかった。 ドラクエ、FF、ポケモン、バイオハザード…新シリーズやリメイクが話題になっているが、あまりピンとこない。 私はいったい子どものころ、なにをして遊んでいたんだろう。 幼稚園のころは、もっぱら人形遊びとぬり絵。 両親が仕事から帰ってくるのを『東京ラブストーリー』や『101回目のプロポーズ』を観ながら待っていた。 小学1年生のころは、空前のセーラームーンブーム。 背が高くてパワフルでどこか繊細なセーラージュピターに憧れた。 『なかよ

          大事にしている物

          物に執着のない自分が、唯一大事にしている物がある。 20歳の記念に両親からプレゼントされた自動巻きの腕時計だ。 当時、自分が持っている物の中で一番高価で、箱からだすことさえためらっていた。 ピカピカのシルバーのボディーに、かすり傷ひとつつけたくなくて、身につけ始めた当初は腕時計のまわりにタオルをぐるぐる巻きにしていたものだ。 21歳の2月の夜中。 好きなラジオ番組がおわって眠りについたころ、家の外がさわがしく感じ目を覚ました。 窓の外がオレンジ色に光りまぶしかった。 おも

          大事にしている物