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関東No.1私鉄「東急」の強さのヒミツはやはり「渋谷/シブヤ」にあった!? がっちり企業の儲かり素顔【※新シリーズ※株価でわかる!】

 経済バラエティ『がっちりマンデー!!』(毎週日曜あさ7時30分~放送中/ TBS系)をもっと深く楽しめる『がっちりスクール!!』お金やビジネスについて一緒に学んでいきましょう!

 今週は、「株価でわかる! アノ会社の儲かりの秘密」という新シリーズ
 『がっちりマンデー!!』に出演いただいた企業の儲かりの秘密を、「株価」という視点から探ってみようというもの。株価が推移するグラフを観察すると、その会社が本当は何で稼いでいるのか? 特徴やヒミツが見えてくるんです! 株価の動きにひもづけて、業界内での立ち位置や、経営戦略、将来の成長性、会社の社会的な存在意義などを解説。 

 『がっちりスクール!!』編集部員である、投資を始めて6年&株価チャート見るのが三度の飯より大好き南祐貴(セカニチ #世界最速で日経新聞を解説する男が楽しくお届けしていきます!

 今日一緒に見ていくのは、1日300万人が利用し‟住みたい沿線”と人気の、関東を走る私鉄「東急(株)」さんです!

 東急は、渋谷と横浜をつなぎ、代官山、中目黒、自由が丘とオシャレタウンに停車する「東急東横線」や、渋谷から三軒茶屋、二子玉川、たまプラーザなどを経て江の島方面(中央林間)に向かう「田園都市線」、東京メトロ南北線と直通し、目黒、田園調布、武蔵小杉を走る「東急目黒線」など8路線があります。

 10/27放送の『がっちりマンデー!!』では、
 線路の長さは短いのに、関東大手私鉄グループでトップ“売上1兆円超え”の東急の儲かりの秘密を、「他の電鉄会社と乗り入れを増やすことで乗客数アップ!」「街の人の流れを誘導して、街全体が儲かる仕組みを作る!」
 
と紹介。その「儲かり戦略」を掘り下げました。

 そんな東急を「株価」の視点で見てみると……。
 
ライバル鉄道会社を圧倒して2013年から右肩上がり株価好調の背景はやはり、「東急が主導する都市開発、不動産ビジネス」にありました!

100年に一度! 渋谷の街が大変身中

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 2019年秋の渋谷。スクランブル交差点に立ちJR渋谷駅方面を見上げると、近未来的なビルがそびえ立っていることに気づきます(※写真上 渋谷 スクランブル交差点から撮影。2019年10月現在)。

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※写真上 渋谷駅東口の交差点から撮影。2019年10月現在。

 これらのビルはすべて、東急はじめ、JR東日本や東京メトロが進めている渋谷の大規模な再開発の一環です。

 渋谷は、2012年に開業した商業施設「渋谷ヒカリエ」を皮切りに、2018年開業の複合施設「渋谷ストリーム」など100年に一度といわれる規模の再開発が続いています。
 2019年11月には、大型施設「渋谷スクランブルスクエア」がオープン。これらの商業ビルはもちろん、渋谷全体の再開発一大プロジェクトを主導しているのが東急なんです!

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 電鉄の会社なのに、
 渋谷の再開発が関係あるの?

 関係、ありまくりです! 10/27放送の番組でもお伝えしましたが、東急にとって、鉄道事業はまちづくりのための1つの手段渋沢栄一が理想的な住宅地を目指して創業し、100年前は田園都市(株)という会社名でした。
 「都心の近くに田園都市を作り、都心と田園都市を鉄道で結んで活気ある街に!」という考えがベースにあります。

 最新の2018年度の決算資料を見ても、「交通」と「不動産」がほぼ同じ300億円の営業利益を出していて、2017年度の実績も2019年度の見込みも営業利益はほぼ同じ金額。鉄道と並んで、不動産事業(=まちづくり)が非常に大きな事業の柱となっています。【出典】2018年度 決算 投資家様向け説明会 資料

Q. 持ってる線路は短いのに、東急が関東の私鉄の中で一番稼いでいるのはなぜ?

A.都市開発、不動産ビジネスが(電鉄会社の中で)抜群にうまいから

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 そんなイケイケな東急。上記のグラフを見てください。

 右肩上がりの株価からも、2019年10月現在、JR東日本、東京の私鉄3社(小田急電鉄、京浜急行電鉄、東武鉄道)に大きく差をつけていることが分かります。

 でも実のところ、東急も株価が低迷していた時期もあったんです……!

 2008年のリーマンショックにより、株価は大暴落。2011年には東日本大震災が発生しました。2019年10月に最高値2150円をつけた東急の株価は、実は2008~2012年には700~1000円の周辺を低迷していました。(現在の株価の1/2~1/3!)

 そこから日本経済全体として株価の上昇に大きな影響を及ぼしたのが、2012年12月に発表された日本銀行による「金融緩和(通称:黒田バズーカ)」です(黒田バズーカとは、お金をたくさん発行して、金利を下げることで、不動産を借りやすくして好景気にするよ、という金融政策です)。

 2013年の第1弾、2014年の第2弾の金融緩和などにより、2012年→2015年にかけて電鉄・不動産系の会社の株価は上昇しました。

 グラフからも分かるように、電鉄各社の中でも特に東急は大きく上昇しています(10/27放送の番組をご覧になった方は東急の「街の人の流れを誘導してビジネスを生み出し、街全体が儲かる仕組みづくり」……などの儲かるヒミツをご理解いただいたかと思います)

ライバル鉄道会社と株価を比べてみると?

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 比較するとわかりやすいので、10年前の2009年10月に時価総額が約5000億円とほぼ同じだった(!)「東武」さんの株価を見てみましょう

 東急(グラフ赤)と東武(グラフ青)の株価は重なるように推移していたのに、2013年春から東急が一気に引き離し、2019年10月の現地点でその差は歴然です(グラフは、2009年10月の株価を基準(0)とした伸び率を表しています)。
 一体何の差が、2社の勝敗を分けたのでしょう?

 両社の決算資料から事業内容と業績を読み解いていくと、例えば、以下が挙げられます。

【不動産事業】
東急:渋谷の再開発(好調!)
東武:スカイツリー(不調…)
【ホテル事業】
東急:東急ホテル(好調!) 
東武:東武ホテル(不調…)

▼東急
 2013年の決算資料(2013年5月発表)
で好調な業績が発表されました。決算資料にはこう書かれていました。

■【対前年】東急車輛製造の事業譲渡などにより減収となるが、ホテル・リゾート事業において、震災影響からの回復などにより営業増益、法人税等の減少などで、純利益は+71億円の増益。
■営業収益は、当社 不動産販売業での大型物件販売や、当社 不動産賃貸業の大規模物件の収益貢献により増収。

 ホテル事業も不動産賃貸業も好調。さらに大きな発表としてこの資料の9-10P(以下参考資料)で初めて、「渋谷駅周辺開発(鳥瞰図)(=完成イメージ)」が投資家向けに大々的に発表されました。この完成イメージで投資家の注目を一気に集め、株価が大きく上昇することにつながりました。

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 2014年の春に発表された決算資料では、不動産事業が大幅に伸びたことも投資家の注目を集め、株価が上昇しました。

不動産販売業におけるドレッセ鷺沼の杜などのマンション販売の進捗などにより増収渋谷ヒカリエや武蔵小杉東急スクエアなどの当社 不動産賃貸業の貢献により増益

 日本銀行の金融緩和によって「お金が借りやすく」なったことが、不動産事業の伸長に大きく寄与しました。

 また、2017年の決算資料では、沿線人口の増加が書かれていました。

沿線人口の増加による当社鉄軌道業の増収等により、営業利益は増益。

 これは10/27放送の番組で紹介した、「路線距離が短くても、他の電鉄会社と乗り入れを増やすことで儲かる秘策」など、東急のこだわりや投資が功を奏したということです。

 東急が大きく伸長する一方で、東武さんは……。

▼東武
 東武の決算資料では、観光地やホテルの「レジャー事業」が2016年→2019年にかけて大きく失速していることがわかりました。特に東武は、ホテル事業とスカイツリー事業の失速が顕著。おそらく、2012年の開業から7年が経ったスカイツリーは、新企画などが足りず集客が不調であることが原因として考えられます。

 2009年時点ではほぼ同じ時価総額だったにもかかわらず、東急は好調な一方、東武は低迷を続け、10年間で大きな差が開いたわけです。【出典】2018年度の東武の決算資料( P7)

 そのほかの電鉄各社の株価を見ていると、2015年以降は金融政策において特に新しい材料もなく、2015年~2018年の株価は横ばいが続きました。東急の競合であるJR東日本、京王・京急・小田急・京成などの関東の私鉄も同じように金融緩和をきっかけに株価上昇、そして現在は停滞中という同じような動きをしています。 

長期経営構想を策定! その時、株価がまた伸びた

 最近の2019年9月2日、東急からビッグニュースが……! 

社名から「電鉄」を外し「東急」に変更したんです。

どこがビッグニュースなのか? 

 社名から電鉄を取り払ったことは、さらに不動産に力を入れていくという経営の意思表示の表れです。実際、渋谷の開発を、”当社における最重要拠点”として発表しました

 また、同じタイミングで「長期経営構想」を新たに発表。沿線内外の各エリアに対して、「交通インフラ」「都市開発」「リテール・生活創造」「ホスピタリティ」の4つの事業戦略を組み合わせていくことを新たな経営構想の核としています。

 社名変更&長期経営構想の発表後、東急の株価は大幅上昇しました。これは、「不動産事業への注力」に市場の期待が集まっているということ。さらには、長期経営構想が非常に優れたものとして市場から評価されたということです。

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 この株価上昇をきっかけに、2007年につけた最高値「2046円」を超え、「2150円」の新高値を更新しました(上グラフ)。

 ちなみに、‟高値更新は買い”という格言が株式相場にはあるんですよ。過去にも、最高値の壁を超えたら青天井で上がっていくという事例をたくさん見てきました。

 また、東急が株を大量保有する東急不動産ホールディングスは、2019年8月に発表された新オフィス移転にて、新しい働き方やスマートオフィス化などで”生産性向上”に非常に注力をしていることを発表しました。

 今後、複合施設・渋谷ストリームのオフィスビル内への誘致に成功したGoogleをはじめとした、IT系のオフィス誘致をして渋谷を盛り上げていくようす。東急グループ全体で、渋谷の街づくりに磨きをかけようとする姿勢はとても好感がもてますよね。

東急に日本の未来がかかっている!

 現在の不動産市況は、2020年の東京オリンピックに向けて建設費の高騰が続いています。さらには金融緩和継続によって不動産は値上がりが続き、都心ではバブル期のような値段の新築マンションも乱立しています。今後どうなるか予測不可能です。

 東急がホスピタリティ事業(ホテル・リゾートセグメント)として取り組んでいるホテル事業についても、東京オリンピック後の市況は不透明。将来の訪日外国人の数も予測ができません。

 過去の歴史を見ても、五輪終了後は景気が落ち込む事態は避けられません。2012年のロンドン大会終了後には、ホテルは空室が目立ち、観光地は軒並み入場者が減少。2016年のリオデジャネイロ大会終了後には景気悪化によって州財政が悪化し、凶悪犯罪も増加しました。

 日本も、オリンピック後に円高が進行して訪日外国人が減った場合、ホテル事業者は大きな打撃を受けることになるでしょう。

 東京オリンピック後の日本にポジティブな材料があるとすると、それは「都市の再開発」です。

 訪日外国人にとって「日本の中心」であるSHIBUYAの再開発を担う東急に、日本の未来がかかっているとは言いすぎではありません!  東急が仕かける渋谷の未来に注目しましょう。

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【出典・参考資料】
「渋谷再開発情報サイト」 東急(株)「金融緩和の強化について」日本銀行商号変更および鉄軌道事業の分社化に関するお知らせ 東急(株)長期経営構想を策定 東急(株)「渋谷ソラスタ」の新本社、8月14日(水)より営業開始

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(おわり)

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編集/コルクラボ エディターズギルド、図版デザイン(ヘッダー画像)/コルクラボ デザインディレクションチーム(LinkStory・みーこ)、文/セカニチ・南祐貴 #世界最速で日経新聞を解説する男