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パリーブレストーパリ出走⑦ ブレスト(BREST)からの折り返し

BRESTの折り返し地点では、少し長めの休憩をとることを予定していた。ここに来るまでどんな場所か全く分からずにいたが、学校のような建物であり、他の休憩ポイント同様食事するところや、簡易ベッドなどがあった。折り返し地点なので、規模も大きいものと考えていて、ゆっくりとくつろげることを考えていたのだが、思ったよりも大きなものではなかった。

迎えてくれた小俣さんたち(この時の様子はラルートに掲載されている)に挨拶をしたあと、自転車をラックに置き食事をとりに行った。GPSデータの保存とGARMINコネクトへのアップロード、往路ルートの削除と復路ルートの設定を行った。こうすることによってサイクルコンピューターのメモリを食わず、あまりコンピューターに負荷をかけなくて済む。途中でフリーズしてしまい記録を保存することができなかったら、頭を抱えてしまうことになるのだろう。

食堂は少しばかし混んでいた。スペースはルデアック(LOUDEAC)やカレ(CARHAIX)に比べて広くはない印象があった。なんとなくこじんまりしているそんな印象だった。今までのチェックポイントと違い、食べるものを選んでからお金を支払う仕組みではなく、先にこのメニューと指定して支払う仕組みであった。他の参加者に習い同じように並んで順番を待った。私の順番が来たら、レジのおじさんが「お前はビールが飲みたいんだな。どれだ言ってくれ」と声をかけられた。PBPはどのチェックポイントでもビールが売っている。日本と違いビールを飲みながら走っても全く問題にならないんだろう。「なんでビールと言われたのだろうか」一瞬私の頭は点となってすぐにハッと気が付いた。そういえばベルギービール「KUWAREMONT」のジャージを着用していたんだ。「あはははは 飲まないよ」と返しおじさんと一緒に笑った。

食事の最中トレイの右側にはバッテリーやサイクルコンピュータ、ライトなどを充電していた。SNSに到着の投稿をしたり、応援してくれる仲間のメッセージを見て嬉しかったり、ニヤニヤするなど食事の時間は案外とやることがあり忙しいものである。でもそれが頭の疲れを癒してくれる。本当にありがたいことである。食事をとった後は計画どおり睡眠をとることにした。

ブルベはそれぞれのペースで走るもの。私はあまり無理をせず、でもある程度は進みたいということで、最低限の睡眠時間をとることを計画していた。折り返し地点のブレスト(BREST)では4時間睡眠をとるということを考えていた。食堂を出て夜風にあたりながら暗い道を歩き仮眠所へと向かった。ところが、私がゆっくりと食事をしていたせいなのか、直前で満床となってしまい、参加者とボランティアスタッフとの間で少し殺伐とした空気が流れていた。なんてこった!ここで寝れると思ったがトホホ。。。もう少し早くご飯を食べればよかった。並んだりしてみて状況が変わるかどうか待とうとおもったが、この時の時間は22:20。ここでしっかりと寝てから出発しようと思ったが、残念ながら仮眠所は大人気でここで寝るのはかなわないことが現実となった。

必死で見つけて確保した
狭いベンチ
BRESTの夜

しょうがないので気持ちを切り替えて外で寝ることにした。フランスは西に進むほど気温は下がる。夏だがおそらくここでは夜間の気温は10℃ぐらいになるだろう。そうなると暖かい恰好をしなければ冷えることになってしまう。いろいろと歩きながら寝れる場所を探したが、結局細いベンチが一つだけ残っていたので、急いで確保して、そこで寝ることにした。周りを見ると地面で寝ている人、探している人がいたので寝る場所が確保できて大丈夫な気分になった。

暖かく快適に寝れるようにセッティングしたが、会場を照らすライトがまぶしかったことので手で光を防いで、寝れるようになんとかしてみたが。だが、西に行けば涼しくなるという話の通り、10℃ぐらいの気温で寒く、何度も目覚め、1時間少し寝たのか寝てないのかよく分からず、結局12時ぐらいに起きることになってしまった。そんな時X(Twitter)を見るとクロさんが地図をアップしてくれていて、姫井夫妻の現在地と私の位置をアップしてくれていた。姫井夫妻も順調にブレスト(BREST)に向かっているんだなあと思った。出場番号を入れると今はシステムでどこにいるのか地図に表示される。応援してくれていることに感謝してリスタートすることにした。

クロさんが追ってくれたツイート

そういえば、頭の中で描いていたブレスト(BREST)とは違い、闇夜に明るく照らされていた校舎であった。折り返しということに満足していたが、結局この街がどうなっているのかがよくわからないまま折り返していく。サイクルコンピューターを再設定して、よし!パリへ戻るぞと気合を入れなおして走り始めた。

数キロ走っていたが、サイクルコンピュータが通常とは違う表示になっていた。どうやらスタートボタンをおしていなかったようだ。そういえばBRESTは港町であったことを思い出した。どこかで街の様子を見れないか街中を抜けていきながら考えながらペダルを回していた。途中海が見え、大きな橋がありそこからオレンジ色に輝いている夜の街の様子を見ることができた。多分これがPBPで有名なブレスト(BREST)のプルガステル(Pont Albert Louppe)橋だ。暗闇の中から光に向かって別れを告げた。

PBPでは有名な橋の上から
今度は明るい時に来たい

ところでブレスト(BREST)の街を調べると、ここはフランス西の要、軍港の街であったことが分かった。お城もあり中世から砦としてここは存在していたらしい。街の中にはトラムが走り、観光をするにもとても良い場所であった。折り返しポイントから更に西側へ下っていくと、素晴らしい街の景色がみれたようだ。明るい時間にたどり着いたら、時間に余裕があったり少し滞在したりして違って見えたんだろうなあ。

暗闇の中を走っていた。どこを走っているかもわからずに。頑張ろうと気合を入れなおしたが、睡眠がとれなかった不安が心を襲ってくる。そうなるとどこか寝れる場所を見つけて仮眠するしかないな。進むかもう一度仮眠をとるか葛藤しながら暗闇の中を進んでいた。しかし、だんだんと仮眠をとれる場所を本能的に探していた。まだ街らしきところを走っていたのか、屋根付きのバス停がよいのだろうと、いくつかのバス停をみる度にここにしようかな、いや次でいいや、ここは人に見られてしまうな。と思いながら結局街のはずれのようなところにある屋根付きのバス停をみつけ、そこで再び仮眠をとることにした。

ここだったら風を防げそこまで寒くなく、ましな睡眠はとれるだろう。それに先ほどのベンチよりも広さがある。ということでまた寝るセッティングをして目をつぶった。しかし今度は参加者たちの車輪の音が気になる。存在を隠しているはずなのだが、やはり気になってしまう。そんなこんなでうとうとしはじめていたら、今度は私の寝ている前で車が止まった。そしてライトを照らされてしまった。うーんオフィシャルパトロールかなあ。起きようかどうしようか迷ったが、目を閉じていたら、行ってしまった。PBPではオフィシャルのパトロールが常に走って参加者の安全を確認している。コース脇で寝ていたりしていると、それこそ生きているか確認しているらしい。守られている感じがするが、暗闇の中だと誰だか分からず怖い存在のような気もする。それに道端での仮眠がちょっと悪いことをしているような気もしてしまう。小心者の日本人であることをこの時改めて感じた。

あきらめてバナナを食べながら起きて進むことにした。結局ここで45分ほど止まっていたらしい。止まると体が冷えきってしまった。こういう瞬間はやっぱり嫌なものである。参加者が何台もサーっと過ぎていったあと、赤いテールランプを目印にまた走り始めることにした。ちなみにバス停はこんな感じ。ストリートビューで見れる。

ここから次のポイントは往路にも通ったカレ(CARHEX)である。約85㎞で4時間ほど走るのかあと思った。暗闇の中テンションが低い中走り続ける。人は明かりがあると元気になるが、暗いところだと気持ちも下がるものである。しかし進まなくてはならない。コースは何度も登り、山の中や、村の中を走った。暗いと景色があまり分からなかった。眠くなっても、バス停で寝ることはやめようと思った。ちゃんとした睡眠がとれず時間をロスするだけであったからだ。オフィシャルパトロールにまた起こされてしまう。寝るのはポイントだなあと考えて走っていた。

PBPは辛いなあ。これは修行だなあ。とこの時初めて心の中で思った。
しかし思いもよらぬところで、助けられることになる。
40㎞ほど進んだらなんとシークレットPCが出現したのだ。
「CONTROL」の文字とスタッフの誘導
あたたかな光を感じた。こんなにうれしいPCは初めてだ。とっても嬉しかった。

シークレットPCには広い仮眠所があった。しかも室内はとても暖かく。マットと毛布が用意されていた。ここで明け方まで眠れる。救われた。。。と思いながら、眠りに落ちて行った。。



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