学校教育本 読書ゼミ

公教育に興味があり、10年近く民間企業の立場から学校に関わっています。特に高校。このア…

学校教育本 読書ゼミ

公教育に興味があり、10年近く民間企業の立場から学校に関わっています。特に高校。このアカウントでは、学校教育に関する書籍の読書感想文を投稿してきます。 Twitterで、記事投稿時に告知しています。https://twitter.com/SY3VAwKVjGe5xqj

最近の記事

「"義務"教育で、"主体性"を育む」ってどういうこと?(これからの「学び」の話をしよう)

今回は小学校教員を中心とした教育関係者が、「これからの学び」を考察するという本を読んだので、久々になってしまいましたが投稿します。 本日の本 前回の投稿から約3ヶ月、この間にもGIGA,探究と聞かない日はなかった。一方で、教育現場はどのように歩みを進め、変化したのか?本書は、小学校を中心に現場実践を行う著者3名が、寄稿+鼎談のような形で、実践での知見や体験を元にしながら、これからの学びを考えるという趣旨の本である。 「主体性を育む」というと聞こえは良いが,,,  タイ

    • 必修で「探究を課す」ことをどう考えるべきか?(探究モードへの挑戦)

      死にアカウントのようになっておりましたが、久々に投稿します!この間も色々な本を読んだのですが、今ひとつビビッとくるものがなく,,,というのは言い訳です、すみません。投稿していない間もフォローやいいねくださった皆様、ありがとうございます。 本日の本 もはや教育行界の流行語大賞とも言える"探究"。中央省庁で政策立案にかかわる方や、有識者として教育政策に関わる大学関係者がそれぞれの立場から探究を語る、というのが本書の特徴である。表紙にある寄稿者の名前を見れば、ある程度業界に精通

      • 幸せは、学校に作ってもらうのか?(みんなの「今」を幸せにする学校)

         熊本市教育長 遠藤さんの本。文科省から起業経験を経て、熊本市の教育長という異色の方である。またあとがきでは、悪性リンパ腫の病に侵された旨も記載されており、この方しか見えていない景色を見られているように思う。一方で、Noと言えない内容が多く、「書いてあること全部できたら良いな」というあまりモヤモヤのない読後感(どんどんやるのみ的な)でもある。それでも、より学校に福祉機能への期待が高まる中で、今後の教育の機能はどうあるべきか、考えてみたいと思う。 今の幸せ、民主主義の担い手、

        • 『よい教育』と『よい公教育』は同じか?(学問としての教育学)

           私は、「理想の教育は〇〇」という議論が好きでは無い。それを振りかざす人は穿ってみるようにしている。なぜなら、理想の教育は"人それぞれ"だと思っているからだ。万人に合う教育などないし、むしろ、万人共通の教育でも、人によって得る学びは異なる。しかし本書では、表紙に「よい教育とは何か。(中略)その全てに"答え"を出す」とある。これはと思い読み進めた次第である。 本書に関する理解(超ラフに)丁寧な要約は最後に記載するが、ラフにまとめると以下のような理解である。 よい教育って、そ

        「"義務"教育で、"主体性"を育む」ってどういうこと?(これからの「学び」の話をしよう)

          高校の役割って何?(月刊高校教育3月号)

           初めて、月刊誌を読んだ感想を書きます。すごい良かったか?と言われるとそうでもないのですが、それだけ難しく複雑な状況に高校教育が置かれていることを感じる機会となりました。本誌へはさまざまな方が寄稿されています。ただ、本投稿では特集『変われるか、普通科高校』に対して全国普通科高校校長協会の先生方が寄稿されている点を中心に感想を記載します。 そもそも、校長会とは? そもそも、校長会とは何なのか?HPを見てみると、主には「調査・研究」を行なっていて、時には発信する。そんな団体のよ

          高校の役割って何?(月刊高校教育3月号)

          教育DXってなんなのよ(智場#124 2030年代のデジタル学習論)

           私生活がバタバタしまして、大変久々な投稿になってしまった10月。そこからまた3カ月も経ってしまいました,,,しかし、緩くでも続けていきます。ご一読いただけたら嬉しいです。さて、3ヶ月前に書いたのはこちら。教育DXという言葉がやたら飛び交い始めていますが、どこに向かうのかとモヤモヤします。  というわけで、こちらの本を読みつつ、どうトランスフォーメーションするのかを考えてみたいと思います。 本日の本 さて、DXという言葉に初めて触れたのは2019年だったように記憶している

          教育DXってなんなのよ(智場#124 2030年代のデジタル学習論)

          教育DXで目指すべきは何か?(グローバル化、デジタル化で教育、社会は変わる)

          私生活がバタバタしまして、大変久々な投稿になってしまいました。noteを開くのすら懐かしいのですが、その間にもフォローいただいた方など、本当に嬉しく思います。またここから、自分なりのペースで続けていきます。ご一読いただけたら嬉しいです。  グローバル化とデジタル化が社会に大きな変化を引き起こし、求められる人材像が変わるので、教育を変えていかねばならない。このことが特に強く言われるようになったのは2015年くらいからだろうか。2013年に『雇用の未来(Carl Benedik

          教育DXで目指すべきは何か?(グローバル化、デジタル化で教育、社会は変わる)

          公教育は誰に何を担保すべきか?(日本の公教育 - 学力・コスト・民主主義 -)

           公教育は誰のためにあるのか。何を目的にあるのか。そんなことを問うてくる本書。1947年に教育基本法が制定されて以降、高校進学率の高まりが訪れ、次いで大学進学率の高まりが訪れ、そして昨今の少子化の訪れにより、社会における公教育に対する期待は変わってきた。進学率の高まりは受験競争加熱を生み、学校外の教育サービスへの期待も高まった。公教育と言っても、公立と私立で期待がまた違うだろう。さらには相対的貧困率の上昇をどう捉えるか。経済的に余裕のある家庭は選択の自由でより良い教育を求める

          公教育は誰に何を担保すべきか?(日本の公教育 - 学力・コスト・民主主義 -)

          あなたの学校観を教えてくださいと聞かれたら?(OECD Education2030プロジェクトが描く教育の未来)

          少し感覚が空いてしまいましたが、是非お読みいただければ幸いです。  「教育によって世の中はよくできるし、教育によって世の中をよくしたい」。そう信じ、願う人にとって是非読むべき1冊。教育は「1億総評論家」とも言える中、OECDでの議論の経緯やエビデンスを多く掲載し、誰もが期待したり疑問に思うことを端的に説明していく。大変ロジカルにまとめられており、内容の質・量に対して極めて読みやすい点もありがたかった。 変えるべきもの - 教育観・学習観・学校観・授業観・生徒観・教師観 本

          あなたの学校観を教えてくださいと聞かれたら?(OECD Education2030プロジェクトが描く教育の未来)

          【6/19 ウェビナー】「学びの個別最適化」を考える1日 〜産学官民で語り合う教育DX〜

          【6月28日追記】 パネルディスカッションの発言要旨及び所管が記載途中で更新できていませんでした。是非ご覧くださいませ。 繰り返しになりますが、一部私の解釈が入っている可能性があることはご容赦ください。 今後の方向性を知る良い機会となりました。 こちらのウェビナーに参加しました。参加しながら記録&気づきを残していったものです。なお発言要旨に関しては、できる限り私の解釈を含めないようにしておりますが、ニュアンスが異なっている場合もあるかもしれません。その場合はご指摘頂ければ幸

          【6/19 ウェビナー】「学びの個別最適化」を考える1日 〜産学官民で語り合う教育DX〜

          成熟社会で学ぶべきことは何か?(「生存競争」教育への反抗)

           少子高齢化は加速するし、昔のような経済成長は見込めないし、その割に「社会問題だ!」と言われることはどんどん増えていく。こんな時代で学ぶべきことは何なのだろうか?最近のもっぱらの問いだ。そんな矢先、ふとAmazonのリコメンドで本書が出てきた。生存競争教育に反抗する。タイトルから大変期待した。競争に勝っても幸せになれることが保証されないこの時代、どのような教育が望ましいのだろうか。  結論、前半の問題提起は大変共感しながら読み進めた。他方、最終章の帰着がそれでよいのか?と思

          成熟社会で学ぶべきことは何か?(「生存競争」教育への反抗)

          教員の評価で、生徒が失うものとは?(学習評価)

           昨今、「カリキュラム・マネジメント」や「授業改善」という言葉をよく聞く。そして、その目的は「児童・生徒に資質能力を身につけるため」と言われる。本書は、学習評価をキーとして、その実現を目指すものである。しかし、読後の感想としては、学習評価をキーに、「カリキュラム・マネジメント」や「授業改善」で「資質能力育成」を目指そうとすればするほど、遠ざかっていくのではないか…そんなことを思う。 評価をキーに、計画→指導→評価→改善サイクルに取り組む辛さ  第4章の章題「学習指導の計画と

          教員の評価で、生徒が失うものとは?(学習評価)

          学歴は幸せの「必要条件」か「十分条件」か?あるいは「条件でない」か?(教育格差)

           「生まれ」が人生を決めている。絶対そうとも言い切れないし、そうでないとも言い切れない。なんとなく認めたくない気もする。しかし、本書は紛れもなく「生まれ」がその後の人生に影響を与えていることを示している。それでも読後に思うのは、「生まれで、幸せな人生になるかどうかは決まらないのでは?」ということだ。 「親」「生まれる場所」が与える影響  まず、新書にしては333ページ(註釈含めると360ページ)とかなり厚い。しかし、定型の分析パターンで論展開が進むため読みやすい。それは、①

          学歴は幸せの「必要条件」か「十分条件」か?あるいは「条件でない」か?(教育格差)

          なぜ学校は、生徒に学んで欲しいのか?(大分断 教育がもたらす新たな階級化社会)

          学校は何を願い、生徒に学んで欲しいのか 大前提として、本書は広く教育について論じており、学校教育や民間教育、家庭教育を分けて論じているわけではない。それでも読後に思うのは、なぜ学校(教員,親)は生徒(児童,子ども)に学んで欲しいと願うのか?学びの成果をどのように感じて欲しいのか?そんなことを思う。  まず、昨今の教育が抱えている問題は、日本だけでなく世界中の国で似たような状況のようだ。経済成長が進むと進学率上昇が同時に起こる。例えば日本の大学進学率は約50%で高止まり。しか

          なぜ学校は、生徒に学んで欲しいのか?(大分断 教育がもたらす新たな階級化社会)

          教育学者は、何を目的にしているのか?(流行に躍る日本の教育)

           教育業界に明るい方であれば、この本が賛否両論で別れたことをご存知だろう。鋭い指摘もあれば、批判のための批判もある。だからこそ、何のためにこの本を書いたのか、是非聴いてみたいところだ。  本書の紹介文には、下記とある。読後感としては、残念ながら「日本の教育がいま、本当に大切にすべきことは何かが明らかになった感」はなく、「教育のもつ真の力を再考した感」もない。 教育の「内」と「外」から、次々と押し寄せる「改革」という名の「流行」のうねり…それらは、教師の背中を後押しし、子ど

          教育学者は、何を目的にしているのか?(流行に躍る日本の教育)

          成長社会が終焉する中、学校はどうあるべきか?(FUTURE EDUCATION! ―学校をイノベーションする14の教育論)

          いつも文句を言われ、いつも期待される学校教育 学校は個人のためにあり、社会のためにあり、国のためにあるのだろう。それぞれの意味付けは時代で変わるが、どれかが0になることはない。常にグラデーション的に変わりながら、その存在意義を見出していくしかない。  2021年になった今、相変わらず学校は日本社会停滞の要因にされる。ありたい社会を描けていない政界,行政、業界のビジョンを牽引する企業がほぼ見当たらない経済界も相当な責任があると思うし、その影響を受けて教育行政は施工されることを

          成長社会が終焉する中、学校はどうあるべきか?(FUTURE EDUCATION! ―学校をイノベーションする14の教育論)