見出し画像

4月(晩春)の季語「雀の子」(季節を味わう#0053)

世界で一番短い詩、俳句。
「季節を味わう」では、毎月第2水曜日に季語を一つピックアップ。
その季語が使われている俳句も紹介します。あくまでも私の好みで。

【雀の子】

4月(晩春)の季語です。
雀の卵は10日ほどで孵化。数日はまだうまく飛べず、親が付き添って餌の取り方を教え、だいたい2週間ぐらいで巣立ちします。
雀の繁殖は年に2、3回ありますが、春に生まれたヒナ「雀の子」は春の季語で、雀のヒナは嘴の脇が黄色いため黄雀とも言われます。

雀の子そこのけそこのけ御馬が通る   小林一茶

私は学校時代この句を「雀の子に対して、馬が通るよ、踏まれたり蹴られたりしないようにどきなさいよ」という意味だと習いました。小さな雀に対する一茶の優しい視線を感じる句だと。私は「そこのけ」という言い回しに引っ掛かりを感じましたし、雀と比べると馬はあまりにも巨大で、そのサイズ感の違いも気になり、今ひとつその説に同意できないでいました。「この句が優しいかなぁ?」と。
後に、別の解釈もあると知りました。
二つ目は、「お馬」とは幼児が乗る小さな木馬であり、雀の子に対して、幼子が乗る馬に気をつけなさいよと呼びかけているという解釈。これだと、幼子が足で地面を蹴って遊ぶ木馬と雀、サイズ的に可愛らしくなり、子どもを大切にした一茶の気持ちに沿っているように感じます。
もう一つは、馬を権力者、雀の子を一茶自身とする説。
権力者に対して、非力な自分をユーモラスに描いたというもの。
私の個人的な好みとしては2つ目の説を推したいところです。

雀の子明日あることの楽しくて     池田摂陽

池田摂陽は私の祖父の俳号です。「季節を味わう」では時々祖父の句を紹介させてもらっているのですが、私にとってこの句はかなりのお気に入り。ひょっとすると小林一茶の句より良いのではないかと思うくらい。(完全な孫ばか)
何より「明日あることの楽しくて」が良い。まだ親雀の庇護のもと、雀の子は何の心配もなく今日を楽しみ、明日も楽しいと思っているのです。祖父は30年ほど前に亡くなりました。生前、この句について祖父と話したことはないけれど「生き物の世界は厳しく、いずれこの雀の子も生存競争にさらされるであろう。無邪気に過ごせる今を楽しむといい」という気持ちがこもっているのではないかと孫としては勝手に推測している次第。
うん、やっぱりこっちの方がいい!「そこのけそこのけ」より視線が優しい!専門家がなんとおっしゃるかは知らんけど。

(2024年4月10日)


「季節を味わう」は大阪府箕面市のラジオ局 みのおエフエムの毎週水曜日午前11:30と午後8:40から放送しています。パソコン・スマホで全国から聴取可能。下記QRコードからお聞きください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?