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秋の季語「佞武多(ねぶた)」(季節を味わう#0018)

世界で一番短い詩、俳句。
「季節を味わう」では、毎月第2水曜日に季語を一つピックアップ。
その季語が使われている俳句も紹介します。あくまでも私の好みで。

【佞武多】

8月(秋)の季語です。
青森県の代表的な七夕行事。青森市では8月2日〜7日、弘前市では8月1日〜7日、五所川原市では8月4日から8日に行われます。
青森市のねぶたは歌舞伎人形灯籠で、「ラッセーラ」の掛け声も勇ましく跳人が飛び跳ねます。
弘前市のねぶたは扇灯籠が主、五所川原市は高さ約20mの立佞武多が街を練ります。

この夏(2023年8月6日)、私は青森ねぶた祭を実際に拝見することができました。自分の目で見て、感じたことをもとにして2句選んでご紹介します。

佞武多去るくれなゐが去る総て去る   鈴木鷹夫

2023/08/06撮影

実際に青森ねぶた祭の巨大な灯籠を見て、この句の通りだと思いました。
火祭りであるねぶたは、近くで見ると圧倒的に明るいのです。暗い中、お囃子の音に導かれるように、内側から光り輝く巨大な歌舞伎人形が近づいて来る、その迫力には思わず「わぁー」っと声をあげずにはいられません。
ねぶたの明るさと夜の闇はまさに明と暗。鮮やかなねぶたの色の中でも、印象に残るのは赤色です。ねぶたが去った後、瞼の裏に残るくれない、その残像が去ると、残るのは夜の暗さと、興奮の後の静けさ。
まさに「佞武多去るくれなゐが去る総て去る」でした。

つかのまの若さを跳ねて佞武多かな   仙田洋子

撮影:ハイハイ様

ねぶた祭のパレードは、太鼓や笛、鉦によるお囃子が先導し、その後ろにハネトやバケトが続き、そのあとで大きなねぶたが現れるという繰り返しで展開します。

「ラッセーラ、ラッセーラ、ラッセーラッセーラッセーラ」の掛け声も勇ましく飛び跳ねるハネト。ハネトが務まるのはある程度の年代まででしょう。まさに「つかのまの若さを跳ね」ているのです。
青森の冬は早いと聞いています。「つかのまの若さ」は年齢的なものもあるでしょうが、短い夏を惜しむ意味も込めているように感じました。

ところで私は今回生まれて初めてねぶた祭を拝見したのですが、ハネトの皆さんが想像したほどには跳ねていなくて、肩透かしをくらった気分。
「こんなものなの?」と思っていたら、翌日、レンタカーで移動中、地元のFM青森を聞いてわかりました。

パーソナリティさんいわく、コロナ禍で中止が続き、今年(2023年)4年ぶりに開催されたねぶた祭。ハネトも久々すぎてペースがつかめず、バテる人が多かったとのこと。「跳ねるってこんなにしんどかったっけ?」とおっしゃるハネトさんも多数だったそうです。
私たちの観覧席はスタート地点から かなりの距離がありましたから、ちょうど疲れが出るころだったのでしょう。
今後、祭りが毎年開催され、ハネトの皆さんが思う存分跳ねることができますようお祈りしています。

(2023年8月9日)


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