ポケモンのランクマデータを分析してみた

年末にスポーツのデータ分析に関する本をいくつか読んでいる中で東大野球部からソフトバンクへと進んだアナリストの方が書いたPythonの入門書があった。

ざっと読んで「あれ? これ俺でもできそうじゃね?」と感じ、なんかやってみようかな~と考えていたところポケモンのランクマのデータがちょうどよさそうということに気づきやってみることに。
もう百点満点がつけられるくらい著者の思惑通りに動かされている。

以下はその過程で得た教訓と悪戦苦闘の備忘録である。


データを集める

データを分析するにあたって元となるデータがなくてはいけない。本来は「何を」分析したいのかがあって、そこから元データの引用元やデータ構造が決まるのが正しい順序だと思うが、今回はそこまで深く考えず遊び感覚でやってみようということで先にデータを集めることにした。

元となるデータは「ポケモンバトルデータベース スカーレット・バイオレット」さんから得ることにした。というか、このサイトの存在が頭の片隅にあったのでポケモンならできそうと感じたのでこのサイトのデータが元となるのは必然であった。

とりあえずこちらのサイトに登録されている構築記事のポケモン・技・数値・特性・もちもの・テラスタイプあたりを入れればいいだろうと考えていたのだが、実際に着手して想像をはるかに超えるめんどくささであることに気づいた。

どうしようかと考えた結果、ポケモン・もちもの・テラスタイプに関しては構築記事へのリンクとともにアイコンが表示されているため力技(ソースをぶっこ抜いてなんやかんやする)で比較的容易にデータが揃えられることに気づいた。技・数値・特性に関しては記事を見なくてはならないため今回は省略し、ポケモン・もちもの・テラスタイプにフォーカスして分析することとした。ちなみに本当に純度100%のパワーで解決したため、もっとスマートな方法があればぜひ教えてほしいと思った。

データを分析する

下準備

分析するにあたって多用しそうな関数をまずは用意することに。まあPythonは初めてだとはいえ他の言語とは書き方がちょっと違うだけ……と舐めていたがDataFrameとリストの扱いにこれ以上ないほど引っかかった。groupbyに用いた項目を列から外すのはやめてください。
ある程度最初に構想したものが揃ったので分析のフェーズに入ることにした。

もちものについて分析する

まずはシンプルに採用されていることが多いもちもの、すなわち強いアイテムは何なのかを集計し、上位10件を表示してみた。また、全構築記事の何割で採用されているのかを見るため割合で表示してみた。

まず、「たべのこし」と「きあいのタスキ」が半数以上の構築で採用されている強いアイテムであることがわかった。3位以下と10%以上採用率に差があり、効果の強さやクセの少なさが高い採用率につながっていると推測できる。

また、シーズン3で解禁されたパラドックスポケモンにしか効果がない「ブーストエナジー」が4位に名を連ねていることから、パラドックスポケモンの強力さが見て取れる結果となった。このように、ある要素(もちもの)についての分析が違う要素(ポケモン)の分析につながることもある。

「とつげきチョッキ」が3位である点や「こだわりメガネ」が「こだわりハチマキ」より多く採用されている点から、SVは特殊環境であるという考察もできる。パラドックスポケモンでも特に強力なハバタクカミやテツノツツミは特殊ポケモンなので、先の分析と併せて一定の信頼度はある。

続いてもちものの推移について調べてみた

全シーズンを通しての採用率1位だった「たべのこし」だが減少傾向にあり、シーズン14では4位に沈んでいることがわかった。
多様化が進み減少傾向にあるもちものが多い中「きあいのタスキ」と「ブーストエナジー」が安定して高い水準を保ち、シーズン14では「オボンのみ」が躍進した。「オボンのみ」の躍進は、オボンパオジアンの増加やブリジュラス・タケルライコなど相性の良いポケモンがシーズン14から解禁された影響が大きいことが次のグラフから推測される。

ポケモンについて分析する

先の項で「たべのこし」が(減少傾向にあるとはいえ)強いアイテムであることが判明した。このアイテムと相性が良いポケモンを探すため、登録されている中で「たべのこし」の採用率が高いポケモンを抜き出した。また、「くろいヘドロ」はどくタイプ限定で「たべのこし」と同様の効果を持つため、あわせて抜き出した。

全体的に耐久が高いポケモンや「たべのこし」の回復と相性のいい技(まもる、あくび、やどりぎのタネ、キノコのほうし など)を使うポケモンが多くなった。また、チオンジェンやヘイラッシャなど再生回復技を持たないポケモンが回復リソースとして「たべのこし」を持ちやすいことも見て取れた。サザンドラがやや異色に見えるが、受け崩し要員として採用されるサザンドラは「たべのこし」を持たされることがあり、このグラフに入っていることはその有用性を示している。

次に、いわゆる"こだわりアイテム"についての分析を試みた。

イーユイが2位に25%以上もの差をつけて圧倒的な1位であった。このグラフを見ると"こだわりアイテム"が採用されるケースは以下の3つが多いことが見て取れる

  • 高火力を押し付ける戦い方をする

    • イーユイ、サザンドラ、イルカマン、ドラパルト、ハバタクカミ、ウーラオス

  • 「トリック」を使って受け崩しができる

    • サーフゴー、ロトム

  • 「とんぼがえり」「ボルトチェンジ」などの対面操作技を使う

    • サザンドラ、イルカマン、ランドロス、ドラパルト、ウーラオス、ロトム

この中で多くのポケモンが「こだわりスカーフ」と「こだわりメガネ」もしくは「こだわりハチマキ」という持ち方をする。しかしドラパルトだけは物理・特殊どちらも存在するポケモンであり、今作から登場したアイテム「ブーストエナジー」によってすばやさを上げる戦い方が流行していることを考えると「こだわりスカーフ」の採用もありえる。そこで、ドラパルトに関して別途"こだわりアイテム"の採用率を円グラフで表した。

「こだわりスカーフ」の採用が少ないことが見て取れる。環境のSラインが全体的に上がっているとはいえドラパルトに「こだわりスカーフ」をもたせるのはやや過剰と考えるプレイヤーが多いようだ。
一方、ドラパルトはCよりAが高いポケモンにも関わらず「こだわりメガネ」が「こだわりハチマキ」よりも多く採用されている。これは①ドラパルトに有用な物理ゴースト技がないこと、②特殊技が豊富であることが影響していると考えられる。

テラスタイプについて分析する

第9世代の目玉要素であるテラスタルについても分析した。まずはシンプルにシーズンごとにどのテラスタイプがどれくらい採用されているのかをグラフで表した。

  • フェアリー、はがねは安定して一定数の需要がある。

  • みずはレギュAでは需要が低かったが、レギュB以降で評価を高めた。

  • ウーラオス入国(S8)でみずが評価を一段と上げほのおが評価を下げたが、オーガポン参戦(S10途中)によって逆の現象が起き、以前の評価と同じくらいに落ち着いた。
    オーガポンは一時的にいわの採用率を上げる現象も引き起こしている。

  • どくの優秀な耐性が注目され現在では採用率5位まで躍進した。

  • 一方でかくとう、じめんの採用率が減少傾向にある。

  • むし、エスパー、ドラゴン、こおりは一貫して採用率が低い。

次にもっと限定したテラスタイプについての分析を行うことにした。
SVの環境では「でんじは」を中心としてまひ戦術が流行っており、カイリュー・ハバタクカミ・サーフゴーを始め強いポケモンも「でんじは」を採用しているケースがある。そこで「でんじは」を拒否するテラスタル、すなわちでんきorじめんテラスタルが環境の変遷によってどのように使われているかを探るため、特に「でんじは」を受けやすいポケモンということでハバタクカミをモデルケースに分析した。

このように、ハバタクカミにおいて「でんじは」を拒否するテラスタルが増加傾向にあるのがわかる。ただし、この結果をより細かく分析すると違った傾向が見えてくる。
先のグラフは「でんじは」を拒否するという意味でまとめたが、じめんとでんきを別々に集計すると次のようなグラフとなる。

このように、ハバタクカミにおいて増加傾向にあるのはでんきテラスタルである。「でんじは」を拒否するだけでなくはがね技(「バレットパンチ」など)への耐性も相性が良い。
一方でじめんテラスタルも、全体の減少傾向を考えるとハバタクカミにとっては一定の需要があるテラスタルと言えそうだ。こちらは「でんじは」を拒否するだけではなく、主力技である「ムーンフォース」とじめん「テラバースト」の補完が良く、でんきよりも攻撃に比重を置いたテラスタルと言えそうだ。このあたりは各テラスタルにおける「テラバースト」の採用率を分析すればより説得力の高い考察を得られそうだが、残念ながら技のデータは収集できていないため今回はそこまで至らなかった。

感想

  • とにかくデータを揃えるのが大変だった。本当にやりたくない。マジでめんどくさすぎる。もっとデータをオープンにしてダウンロードできるようにしてくれ。

  • 今回分析して得られた結果は肌感覚として持っていたものも多いが、可視化することによってより明瞭なイメージを持つことができた。

  • 分析自体は仕事柄プログラミングに慣れていたのもあって簡単だった。あとPythonは調べるといろんなことがすぐ出てくるので情報を拾う能力があれば初心者でもできそう。でもDataFrame.groupbyお前だけは許さない。

これからやってみたいこと

  • 耐久指数やSラインの推移(流行)を分析する

    • 調整の助けになりそうだが、数値のデータを集めるのが困難なので実現しなさそう

  • あるポケモンとともに採用される割合が高いポケモンや技を調べる

    • これは今回やったことを組み合わせてごちゃごちゃすればなんとかできそう

    • もう一段階深く進んでそのポケモンの属性がわかるとなおよい

      • f.g.ラティオスと組んでいるポケモンははがねタイプが多い など

    • この組み合わせならこの型であるケースが比較的多い、といった分析もあり

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