2019年徳島ヴォルティスの振り返り③欠かせなかったバックアップメンバーの貢献

ここで一度バックアップメンバーにも焦点を当ててみたい。2019年シーズンの徳島の特徴は、出場した選手たちが彼らの出場時間に関わらず担ったタスクを全うしていたということだ。そうでなければ、この怪我が多いチームが躍進することはできなかった。たとえば河田は前半戦は戦術にフィットせずわずか1ゴールだったが、佐藤の負傷から1トップを任されるようになると後半戦だけで12ゴールを挙げチーム得点王に輝いた。藤田、田向と実力者が相次いで負傷した右サイドではFWが本職の岸本が任せられると、大外から一気にゴール前に入っていけるアタッカーとして重宝された。
そして個人的に欠かせない存在だと思ったのは押谷である。得点力不足に泣いた2018年途中に加入した押谷は、2019シーズンが終わった今でも、まだ本領を発揮できていないと言っていい。2019年はわずか4ゴール。愛媛戦であげた同点弾以外は勝敗に絡むものではなく、印象は薄かったかもしれない。押谷は42試合中30試合に出場、うち23試合に途中出場している。にも関わらず、終盤までリードを許していた第38節水戸戦(○2-1)や、第40節の横浜FC戦(●0-1)には出場していない。ファジアーノ岡山で2度の2桁ゴールを記録するなど、エゴの強いストライカーとして生きてきた選手にとっては到底納得できる起用ではないはずだ。しかし、それでも押谷は出場すれば前線からのプレスを怠らず、隙を見せればゴラッソを叩き込んで試合を決定づける、クローザーの役割を淡々とこなしていた。スタメンやベンチから外れた選手も託された役割を忠実に遂行し、またそういう選手の想いも背負ってピッチの上の選手たちは戦っていた。岩尾だけでなく、野村やバイスなどが音頭を取りチームとして戦えていた。これほどまでに一体感を感じたことは、これまでになかった。
チーム最年長のDF石井秀典にしてもそうだ。石井はレギュラーだったがビルドアップ能力に長けているとは言いづらく、得点が欲しい展開になったときはたびたび前半だけで下げられた。しかしそんな試合でも、同点に追いつくとカメラにはベンチでリカルドと抱き合う石井の姿が映っていた。
若いチームではベテランとして扱われる押谷や、最年長の石井。彼らがただひたすらにチームの勝利のために戦う。その姿は、チームに一体感を植えつけるのに、大きな力になった。

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