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エル・アール「I WISH」

 Amazonミュージックの中にエルアールの「I WISH」がある事に気付いて、久々に聴いた。

 エルアールは自分の人生の中で唯一ファンクラブに入っていたバンドで、ほとんど全てのCDを持っているはずだが、断捨離後に何故かこの曲が入ってる「NICE TO MEET YOU」のCDだけ中身(要はCDの盤)が無くなっていたことに気づいた。しかも、何故だかこの曲は名曲の割に他に収録されてるCDもなく、YouTubeにすら上がってなく、長らく聴く事が出来ず、ずっと気にかかってた曲だ。それがAmazonにあるとは!

 とは言え、エルアール自体、そこまでマイナーなバンドでもないし。当時それなりに売れていたので、現在でもそこまで「NICE TO MEET YOU」のCDは入手難でもない(はず)。ふらっとブックオフに入っても、あるときはあるのかもしれないし。そもそも、家のCD(数百枚はある)のどこかにふらっと紛れ込んでるかもしれない。ちなみに、当時は何故か2枚持っていて1枚は売ったのも悔しい。

 しかし、そうこうする内に時は流れ、流石にそろそろ再入手しとかないと不味いのではないか?と検索したら、音源があっさりAmazonにあって、無事に聴けて感動した。そして、久々に聴いたら、曲も本当に素晴らしく感動したので、この文章を書く事にしてみた。前置きが長い。

 さて、「I WISH」である。この曲は前述の通り「NICE TO MEET YOU」のCDに収録されていて、そもそもは両A面で発売されていたものながら、何故だかAmazonでもB面集に入れられているという微妙な扱いになっている。正直、個人的には一曲目の「NICE TO MEET YOU」より好きで、当時よく聴いていたものだが、それが、なぜ、こんな扱いになっているのか?

 一つには「NICE TO MEET YOU」というCD自体がエルアールのCDの中で唯一のマキシシングルであり、かなり特異な位置付けのCDになっているという事があるだろう。

 エルアールは1995年に「KNOCKIN' ON YOUR DOOR」でミリオンヒットを飛ばすのだが、デビュー時はポリスターに所属していて、豊富な音楽知識を元にした玄人好みの音源を作っているようなバンドだった。それがポニーキャニオンに移籍して、ドラマ主題歌に使われてブレイクしたのだが、当時の感じから、こうしたヒットの一連の出来事に対してメンバーが少し違和感を抱いていた面が見られないでもない(「というより、ヒット後に続くシングルの「BYE」の歌詞にもそういう感じの所がある)。

 この事は、楽曲自体にも少し影響があったのではないかと思われて、少なくとも、ポリスター時代(Land of Riches)からのファンである自分としては、当時ヒットした事により、何かストレートじゃない変数のようなものが加わってしまった感じがしたのを覚えている。「I WISH」の収録されている「NICE TO MEET YOU」も正にそんな印象を受けないでもない一曲だった。

 曲は良い曲なのだが、Wikipediaによると、1996年初頭にキリンラガービールのCM曲になっていたらしいが、発売したのはその放送が終わった6月だったらしい。その辺も若干ヒットさせる気がないのかなという感じを醸し出すエピソードだが、曲にシタールが用いられていたり、今ではそんなに珍しくないかもしれないが、当時としては、ヒットを狙う曲としては随分ひねられてる感じのする曲でもあった。

 しかし、この「ひねられてる」というのも曲者である。そもそもエルアールの楽曲は、元々、ひねられてると感じるものも多く、そちらの方が本筋にも思え、ファンとしては、そちらを求めてる感じもあったからだ。全般的にヒットソングとしての歌謡的な側面からいうと、ポニーキャニオン時代の方が良い曲が多いとも思うが、しかし、エルアールの真骨頂は、やはり、デビューしたポリスター時代の方に多く内包されているようにも感じられ、そこを求めてしまう気持ちも当時からあった気はする。

 こうした微妙な気分を抱える中、エルアールのポニーキャニオン時代のカップリング曲というのは、B面に趣味性の強い楽曲が多く、それがある種コアなファン的には楽しみでもあったのだ。

 しかし、「I WISH」は、それとは違う。カップリングではなく、両A面という扱いであったからかもしれないが、カップリング曲のマニアックさはほとんどなく、聴いた印象としてはストレートな楽曲で、いま聴き返してみても、エルアール史上でも屈指の名曲なのではないか?と思えるほど良い曲である。

 エルアールは、この曲の後、少し間を置いて、「Doubt」という、かなりコンセプチュアルなアルバムを出す事になるのだが、このアルバムのテイストから言って「I WISH」は合わないので、このアルバムには収録されなかったのだろう。エルアールはこのアルバムを最後に活動休止に至るのだが、それもあって、この「I WISH」は活動の間に咲いた徒花のような曲になってしまったのだと思う。

 と思っていたが、こうしてサブスク時代になると、さすが売れたバンド。普通に聴けるようになるのだから良い時代になったもんだ。というより、調べたら、配信だと、結構この曲は入手しやすそうで、一回ヒットしたバンドは強いなと思うなとともに、キチンと音源化してくれたポニーキャニオンに感謝したいと思った。

  という、この話は当時のファン以外には全く届かない話なのではないかと思うが(そして、当時のファンに届いたら、結構、異論がある部分もあるかとは思うが)、久々に聴いて感慨深かったので、ちょっと書いてみた。Amazonプライムに入っていれば聴けるので、気になった方は是非、聴いてみて欲しい。曲自体、今のSTAYHOMEな空気にもちょっと合ってると思う。

(ちなみに、冒頭のイラストは、なんとなく貼ってみただけの自分のイラストで、内容とは全く関係ありません)

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