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国立新美術館「李禹煥」


 終了間際となるが、国立新美術館で「李禹煥」の展覧会を見てきたので、その感想を書いてみる。

 李禹煥はかなり好きな作家で各所で展示を見ているので、コロナ禍で少し展覧会からも遠ざかってたし。今見たら、どうかなという確認の意味でも見てみたのだが、大体、見た感想も「うーん。どうかな」という感じで少し煮え切らなかったかもしれない。

 いや、もちろん、作品は素晴らしいのだが、場所がどうなのか。国立新美術館のいかにも大型のギャラリー感のある冷たい感じがあまり李禹煥の作品とフィットしてない感じがしないでもない。小石を敷き詰めた部屋などは良いのだが、関係性を大事にしている李禹煥の作品だけにどうも床とか天井が気になってしまって、どうもなぁという所も。直島の李禹煥美術館の体験があまりにも最上級すぎた後に見てるので、多少、物足りなさを感じてしまうのは当然としても、例えば、群馬県立近代美術館の作品なんかも群馬県立近代美術館で見た時の方が感動したような気がしないでもない。まあ、見た順番の問題はあるのだろうが、先入観もあるかもしれないけど、意外と日本の古い美術館の佇まいとかの方がフィットする作家なのではないか。

 とは言え、時代順に作品を網羅してるので作家の全体像をつかむには良い展覧会だったとは思う。特にペインティングは近作に行くに従って良くなってると感じられ、昨今の新作の方が完成の域に近づいているのではないか。

 元々、バーネット・ニューマンに影響を受けた作品づくりをしていたようだが、こうして見ると、初期のペインティングやオブジェクトには、その影響がものすごい出ている気がするのに近作では全然違う地点でニューマンレベルのシンプルな絵画構造に達したのが凄いなと思う。新作が見られたのは、この展覧会の良いところで、今回はそこが一番良かったかもしれない。

 あと、同時に70年代の日本美術の展示資料展もやっていて、そちらもすごい面白かった。


 何というか、昔の日本美術の熱さというか、この時代にこういう事やったら、それはハプニング感があるだろうなーというか、当時生きてたら、それは面白かったんだろうなーと思いつつ見たけど、まあ、でも、今でも多分こういう「熱さ」は再現できるんだろうし。ある程度ある気もするので、まとめたら意外とそこそこの物量になって「昔って良かったなー」ってなる可能性もあるのかもしれない。とは言え、70年代の場合、意外となんか拙い感じのも結構あって、それがこうやってキチンと語られていくのが文化が若いなという感じはした。意外とこっちを見る方が李禹煥の作品が成立する背景がよく分かった気もする。


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