見出し画像

いじめによる不登校が家族に与える影響

「学校以外の教育」という名前で書き始めたからには、

ここまでの経緯を書いていかなければなりません。

(これから書くことは、あくまでも私たち家族からの視点です)


いよいよ来たなと身構えた日


私は日本人。夫はアメリカ人。娘はいわゆるハーフです。

関西の、比較的教育レベルの高い住宅地の一軒家で暮らしていました。


地元の公立小学校に娘が入学した頃から、「ガイジン?」とか

「なにじん?」とか言われることが増えてきました。

娘は基本的にタフな性格なので

「私は私!」と答えたり、

「地球人」と言ったり、

「ママは日本人。パパはアメリカ人。

だから私は日本人でもあり、アメリカ人でもあるよ」と

丁寧に返答したりすることもありました。


小学2年生の頃、学校の下駄箱にあった娘の靴の中に

紙切れが入れられていました。

「ハーフ」「しね」などと書かれていました。


いよいよ来たと、覚悟を決めました。

世界から多くの人が日本に暮らすようになった今でも

娘に対する人種差別は何らかの形であるだろうと思っていました。

娘がお腹にいる頃から、そこに立ち向かえる子育てをしようと

決意していました。


いじめの始まり


それでも明るく笑顔で通学していた娘でしたが、

小学5年生、いわゆる思春期が近づいてくると

周りの女子たちが「自分と周りを比べる」という作業に

夢中になっていきました。


肌の色が白いとか、髪が栗色だとか、

娘の見た目をあれこれ言い出す女子たちが増えました。

最初は「えー、いいな、羨ましい」。

そのうち「あいつ、うざい」と変化していったのです。


そして、娘が教室に入ると「うわ、あいつ来た。あっち行こう」

などと娘を避ける子が、日増しに増えていったのです。


私は昔から娘をハグするたびに大きく息を吸い込み

「あぁいい匂い!」とか言っちゃう母親なのですが、

その娘が同級生の女子から「臭い」と言われたり、

廊下を歩いていると急に足を突き出されて転ばされそうになったり、

日々傷つけられることが続きました。


「学校行きたくない」と涙を流すようになった娘は

本来の明るさやタフさを失い、それまで頑張っていたお稽古事にも

行く気力をなくしていきました。


「もう行かなくていいよ」


と私が言った時、娘は「いいの?」とホッとした顔をしました。


自己肯定力の急激な低下

それでも本人は「学校に行ったほうがいい」という思いにとらわれ、

「学校に行けない私はダメ人間だ」とか、お稽古事にも行けないことを

「なにもできない人になってしまった」と嘆き、

自己肯定力をみるみる下げていきました。


私と夫が仕事の間、娘は家で1人で過ごしていました。

暗い目をして、感情の起伏が激しくなり、

どんどんと家の中で荒れていきました。

「部屋を片付けて」程度の小言であっても、時には大爆発を起こし

夜中に家を飛び出して行ったり、

家中の物を投げ散らかしたり。

色々壊れましたよ。

オルゴール、テレビのリモコン、コップ・・・。

何度も片付けながら泣きました。

1度はあまりにも大声で叫び、荒れまくる娘の声を聞いて

近所の人に警察に通報されたこともありました。


事情を丁寧に説明して、女性警察官が娘の体をチェックして

アザなどの虐待の形跡がないことが分かり、

「何かあればご相談くださいね」と言って引き上げていかれました。



誤解を恐れずに言えば、それまでの我が家は

幸せそうな家族に見えていたはずです。

いや、実際楽しく、幸せに暮らしていました。

週末には友人と庭でバーベキューをしたり、

家族でちょっといいレストランに外食したり。

仕事で忙しくしながらも、オンとオフを切り替えて楽しんでいました。


でも、いじめが起こってから、我が家の雰囲気は一変しました。

娘が大爆発を起こし、私に暴力を振るって病院へ行ったこともありました。

家族でお出かけしたくても娘が嫌がったり、

作ったご飯を全然食べずに残されたり、

大きなことも小さなことも含めて、ネガティブな出来事が

家族をじわじわと追い詰めていきました。


まさか近所の人に警察を呼ばれてしまうなんて。

まさか病院に行くほどの怪我をさせられるなんて。

夕食のテーブルから笑顔が消えて、感情的に叫ぶ娘の声が響き渡るなんて。

毎日苦しくて、息が詰まりそうでした。


一番苦しいのは娘だと分かっていますが、

私と夫の気力も限界でした。

精神的に不安定な娘は、夜になるとさらに不安定になり

それに付き合って夜中のドライブに連れ出したり、

娘の辛い気持ちをひたすら聞いて、

午前2時ごろにようやく眠ったりしていました。



学校との話し合いも続けていましたが、いじめている子達は

巧妙にそれを隠し、先生からの追求ものらりくらりとかわしていました。

いじめグループの子達はお互いをかばい合い

「そんなこと言ってないよねー」などとごまかし、

彼女たちの横暴っぷりを横目で見ているクラスメイトたちは

関わらないようにと口をつぐみました。

100人近くいる同級生全員に学年集会をして、いじめの話を聞き取っても

誰1人娘の状況を伝える子はいませんでした。

学校から、娘が話をでっち上げていると疑われているように

感じることもありました。


でも、娘がかつて仲良しだった女の子に1対1で話をすると

「かばってあげられなくてごめんね。でも、私もいじめられたくない」と

はっきり言われたこともありました。


同級生のいじめに続く教師の無理解


その後、6年生に進級し、いじめていた子達とは別のクラスになり

しばらく学校に通える日が続き、ホッとしていましたが、

今度は教師による人種差別にあいました。


色が白く、唇の色が赤っぽい娘(赤ちゃんの頃からずっとそうです)を

「お前、メイクしてきてるのか?」と言って来た担任教師。

「していない」と答える娘は、それを証明するために

ティッシュで唇をゴシゴシこすって、色がなにもつかないことを

教師に見せました。

こすりすぎて、娘の唇から血が流れました。


娘のことを名指しして「彼女はみんなより色が白いやろ。

髪も明るい色やろ。みんなと違うねん。この違いは変えられへんねん。

だから、違うとか言ったらあかんねん」

とその教師からクラス全員の前で言われたこともありました。


「あの先生のいる教室に行くのは辛い」と娘が泣きました。

せっかく学校に通えるようになったとはいえ、

毎日恐る恐る通学しているような状態だった娘に、

味方してくれると信じていた教師からの無知な発言。


何度もその先生とも話をしました。

先生に悪気がないことはわかるんです。

ただ、意識が低くて、知識がないだけなんです。


「先生、娘の肌が白い、みんなと違うねん、という話をされた時、

娘がなぜ傷ついたか分かりますか?」と聞いたところ、

あまりピンと来られなかったようです。

「じゃあ、先生、質問です」

「もしうちの娘がアフリカ系とのミックスだったとします。

『あいつの肌は黒いやろ?髪もチリチリやろ?みんなと違うねん。

この違いは変えられへんねん』って言ったら、どう思います?」

と聞いたら「あ、なんかそれはダメな気がします」との返答。


「肌が白いというのは褒め言葉のつもりでした」と先生。


心の中で「お前はアホかーーーーー!!!」と叫んでいました。

その代わりに、

「なぜ、同じクラスの友達でしょ?というスタンスで話せないのですか?

なぜ、わざわざ見た目の違いを強調するのですか?」と言うと

「1人1人の顔が違うのと同じだ、ということも言ったんですが」と先生。


1人1人の顔が違うことはどの人だって当てはまります。

娘だけが皆んなと肌や髪の色が違うことをあえて言うこととは

全く違うと思うのです。


「先生は、今まで順風満帆、主流派で来た人生だったんでしょうね」と

私が言うと「うーん、まぁそうですね」と答えられました。



もうダメだな。と思った瞬間でした。


主流派、多数派の価値観だけで判断される世界に

うちの娘は馴染まないと実感した瞬間でした。

残念ながら当時の自宅があった地域には、

多様性はほとんどありませんでした。

いわゆる日本の中流家庭、みたいなおうちがほとんどでした。

お父さんはサラリーマン、お母さんはパートか専業主婦という具合。


うちのようにお父さんはアメリカ人、

お母さん(私)はフリーランスでバリバリ働いていて

学校の参観などにもなかなか参加できないどころか

運動会も途中で抜けたりする始末。

さらに娘はいわゆるハーフという我が家は

地域のアウトサイダーなのだとようやく分かりました。


沖縄への移住


ここには書ききれないほどの、多様性への無理解にさらされて

その後も紆余曲折ありながら、私たちは多様性を求めて

沖縄県へと移住を果たしました。


今、私たちが親しくしている人たちは、アメリカ、

イスラエル、アルゼンチン、ロシア、フィンランド、トルコなど

様々なバックグラウンドを持っています。


そして、彼らの子供達も、うちの娘も、

沖縄の地元の公立校に転校した途端、

ここでも多様性の無理解に直面したのです。


これが、フリースクールを作るという新たな目標に繋がります。

このことについては、また別記事で書いていこうと思います。


#不登校 #フリースクール #いじめ #多様性 #ハーフ  



サポートしてくださったらとても励みになります。フリースクールやオンラインクラスの運営に使わせていただきます。