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発注はしません

「この20年で変らなかったのは、本への思い入れを読者に伝えようとし続けた書店員たちの存在である。彼ら、彼女たちがこれからも書店を支え続けるのである。・・・」 学芸出版社営業部の名物社員・藤原がお送りする、本と書店をめぐる四方山話。

発注をしない書店があると聞いて驚いた。
おそらく取次店から送られてくる新刊委託品と常備品、それと雑誌を売っていれば店の売上を維持出来るのだろう。

何も考えずに送られて来る本を並べ、売れなかったら返品するだけ。
誰でも出来るし、楽と言えば楽だけど、これでは店の売上は伸びないし、こういうのって書店と言うのだろうか。

売れる書店はこうだ」に書いたことがあるが、お客さんからの注文に「取寄せは1ヶ月かかります」と平然と言う書店とこの書店は同じチェーン店だ。
僕が経験した「取寄せは1ヶ月かかります」と言っていた書店はそれから5年ほどして潰れた。

注文という自発的な行為をしなくても書店はある意味成り立つ。
お客さんの方はその店にそんなに期待感もなく、欲しい本があるかも知れないから、とりあえず行ってみようと足を運ぶのだと思う。
全国展開している書店グループだから新刊はちゃんと入って来るし、雑誌はフルジャンル構成だ。
常備品だって出版社から貰うことが出来る。

注文して取次店から請求が来て、返品出来なくなったら大変だ。
リスクの低さゆえ、ロードサイドでは他業種からの参入が多い。
土地借りて、プレハブで店作って、取次店に頼んで常備品で棚を埋めて、後は取次店が送ってくる本を陳列すれば出来上がり。
その後は送られて来る本を陳列して、売れなければ返品。
この作業ならアルバイトさんで充分出来る仕事だ。
いわゆるコンビニスタイル。

しかしこの手の書店は規模が大きいのでコンビニのような人数では運営が無理であると思われがちだ。
しかしぎりぎりの人数でまかなっている場合が多い。
なぜなら規模の割には売上が少ないからだ。
よってアルバイトさんはかなりきつい仕事(力仕事)を任されることになる。

注文しないなんて言わないで、ドンドン注文を出してお客さんを喜ばし、売上を伸ばし、アルバイトさんを増やして、サービスを向上させて、さらに売上げを上げることを考えませんか、と言ったところでこういう店の経営者は、大きなお世話、これでいいのだと言うに決まっている。

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