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階段の降り方は人となりを表す

階段では足を下に運ぶ度に、靴が段を叩き、音が打ち鳴らされる。そのリズムと音色に、その人の内在的な感情が現れてしまう。

大抵の人は階段を降りる際、4拍子のリズムを奏でる。
『トン タン タン タン トン タン タン タン』となる。ただの一定のリズムに聞こえるかもしれないが、聞く人が違えばその音の中に様々な表現が含んでいることがわかる。
この4拍子には、自然に生かされているという謙虚さ、他者への愛、生活に必要な食事と住居、慎ましくも日々満ち足りた生活という4つの事が表現されている。

次に多いのは階段を3拍子で降りていく人である。
『トン タン タン トン タン タン』 となり、これは4拍子が表現している4つの事から、他者への愛が欠けてしまっている状態だ。
胸を張った態度の大きな人や、ネット上で性格が変わってしまう人に多い。
しかし、中途半端なだけあって憎めない。

階段で2拍子を奏でる人間は
『ドン キン ドン キン』 と音を立てる。
この人の特徴は権力と金しか信用していない。上には従順であるが、下には理不尽を強要する。ただ権力がなくとも、彼らより金を持っていれば、彼らは冷や汗をかきながら対等ぶって懐柔してくるだろう。

また2拍子を奏でる人すべてが権力と金の権化ではない。
一段飛ばしで駆けていく人もまた2拍子である。
だた、先ほどと音色は変わり、
『ナン コツ ナン コツ』 となる。
膝の過重労働が現れており、これは膝の悲鳴である。

型にはまった階段の降り方はこれで一通り説明された。しかしまれに、変速拍子を奏でる人がいる。社会ではほとんど見られないが、ある時間帯のある場所には、その音が大量に発生する。

10時20分から大休憩が始まる。前の小休憩は5分だが、この時間は大休憩で25分だ。予鈴が鳴るまでの20分間も遊べる。ただ、隣のクラスにサッカーゴールを取られないように早く占領しなければならない。先生がチャイムと同時に授業を終えた。あとは終わりの挨拶だけだ。委員長のたっくんが早口に号令を言いのけた。

4階の部屋から急いで階段を降りる。
タタン タタン タタン タタン
タタン タタン タタン タタン
たっくんも隣で
タタン タタン タタン タタン
タタン タタン タタン タタン

3階からは1段増えて奇数になる。
タタン タタン タタン タタンタ
タタン タタン タタン タタンタ
タタン タタン タタン タタンタ
タタン タタン タタン タタンタ

と、これが変速拍子の代表例だ。
これらは周囲に陽気さを伝搬させる。その強さは間に暴言を挟んだところで少しも減らない。
タタン タタン タタン タタンタ
タタン タタン タタン タタンタ 
お前の母ちゃん お前の母ちゃん お前の母ちゃん でべそ はい!
タタン タタン タタン タタンタ
タタン タタン タタン タタンタ

著者は音楽の素養を一切持ち合わせていませんので悪しからず。

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