【無料公開】 『動画大全』 ~はじめに

この時代を生きるすべてのビジネスパーソンに告ぐ。
AIが当たり前のように人間とやりとりし、世界中でTikTokに8.7億人が動画を投稿する今、「アテンション」 を抜きにしてマーケティングを語ることは不可能だ。

SNSが生む影響力の種——「アテンション」を得るために、誰もが明日からやれるたったひとつの冴えたやりかた。
その答えこそが、「動画」 なのだ。

「動画2.0」時代から5年。
時は満ちた。
何者でもなかった僕が、何者かになった後に経験した時代のうねりを、この本には、すべてぶちこんだ。

『動画大全』。
大全と冠するにふさわしい内容が、本書にはある。
SNSの持つ力学も、ショート動画をゼロから作る設計図も、そして君が「何者かになる」ための羅針盤まで——この本に詰め込んだ約12万字のなかに置いてきた。

さあ、再生を始めよう。

Prologue 僕は誰だ?

この本を手にとった君は何者だ?

何者かになりたい。

これほどまでに「誰かが何か」になりたい時代は、かつて存在しなかっただろう。
これまで、長者番付やCM出演ランキングしか指標がなかった 「人気者」の度合いは、今やフォロワー数という数字によって定量化され、お金と同じようにある種の資産となっている。

あえて言おう。
フォロワーがいれば何でもできる。
これは、いわゆる芸能人やYouTuber、インスタグラマーやTikTokerといった人たちに限定された話ではない。
すべてのビジネスパーソンに当てはまる新しい原則になりつつある。

君がもし学生ならば、新卒採用で希望の会社に行ける可能性は飛躍的に高まるだろう。
営業の仕事をしているなら、クライアントのアポは格段に取りやすくなり、業績は目に見えて上がるはずだ。
うまくいけばメディアからインタビューを受けたり、本を出したり、テレビに出ることだってできる。

今や、若者の尊敬は「お金持ち」であることより、「フォロワーがたくさんいる」ことにシフトしている。
いわばフォロワーを抱えることは、現金や持ち家と同じくらい、人生における重要な資産になりつつあるのだ。
強い共感を持つファンを多く抱えることに成功した者は、「インフルエンサー」と呼ばれている。
僕もまた「動画」という領域においてインフルエンサーとして扱われ、そのメリットを存分に享受した人間だ。

インフルエンサーになる以前と以後との人生は、まるで異世界転生してしまったかのような違いがある。

この本の前作にあたる『動画2.0』(幻冬舎、2018年)が出版され、全国を講演して回った。
小学生の頃、テスト用紙の裏に書き殴った以来のサインを自分のケツの右側に配置していく。
(あの本の表紙をめくると、裸でトマトを投げ合う僕の写真が掲載されていた)

北は宮城、南は鹿児島まで、動画の未来を説く旅は続いた。
そんな日々のなかで、仕事の金額はそれまでよりも「桁違い」に引き上げられ、あの中居正広氏の番組にもレギュラー出演が決まる。
絵に描いたようなサクセスストーリーだ。

そんな、いわば人生の頂点と言ってもいいタイミングで起きたコロナショック。
会社の業績は、予定していた売上が半分吹き飛ぶほどの大ダメージを食らった。
しかしそんな逆境ですらも、自身がインフルエンサーであることをフル活用して、V字回復を果たすことができた。(本当にインフルエンサーで良かった!)

インフルエンサーとは、『鬼滅の刃』(吾峠呼世晴、集英社、2016~2020年)で言うところの「柱」みたいなものだ。
つまり、それぞれが自分の強みを活かし、"SNS" という名の戦場で、"個性" という武器を用いながら華麗なバトルをくり広げている。

検索エンジンからSNSへと流入のチャネルが変わった今、特定のテーマにおいて柱と見なされるようなSNSアカウントは、個人もブランドも多大な影響力を持つようになった。
例えば、実店舗に一切流通していない通販のみの商品が君の周りで突然話題になり始めたようなことはないだろうか。
いわゆるD2Cブランドというものは、パワーを持ったSNSアカウントによって人々に知られ、購買へとつながっている。

そんなSNSの力学の秘密を解き明かす前に、時計の針を少しだけ戻そう。

あれは、2018年の夏のことだった。

「ロバート秋山の新作かと思ったらガチのクリエイターだった。すみません。」

そんなタイトルのネット記事が拡散していることを僕が知ったのは、Facebookで大学時代の友人がメッセージを送ってきたときだ。
会社の資金調達時に撮影した記念写真が、まさかこんな形でバズるなんて。
スタイリストさんが持っていたダイソンのドライヤーを使って、同席した社員が悪ふざけで僕の髪をなびかせたことで生まれた、人生初のアー写。
これが偶然にも、ロバート秋山氏の「クリエイターズ・ファイル」に出てきそうなクリエイター像と完全に一致したことから、この祭りは始まった。

僕はこの機会を最大限に活かすことにした。
Twitter では意識して「教祖」っぽいキャラを演じることにした。
時代の先を予言し、動画に興味のある人たちが確実にフォローしたくなるようなパンチラインを増産するために、1日12時間くらいかけてTwitter に向き合った。

そうした甲斐もありフォロワー数は1ヶ月ほどで1万を超え、NewsPicksを始めとした多くのメディアから取材依頼が舞い込む。
そして、幻冬舎のカリスマ編集者・箕輪厚介氏との邂逅。
彼との対話を通して、拙書『動画2.0』が生まれることになる。

さらには「WEEKLY OCHIAI」で落合陽一氏と共演、日曜朝の「サンデージャポン」で壇蜜氏と髪をなびかせる。
僕は動画の教祖と呼ばれるようになり、トヨタ自動車やユニクロといったナショナルクライアントの仕事を獲得。
ブランドがYouTubeやTikTokに取り組むならワンメディア 、という第一想起を得ることができた。

この話を聞いて、君は僕のことを「とんだペテン野郎」だとか「詐欺師」だとでも思ったか?
そう呼ぶのは勝手だが、この話には1つだけ大事な教訓が隠されている。

僕は自分にアテンションが集まる瞬間を、そのモメンタムを決して逃さなかった。
そのために、ありったけの時間と熱量をコンテンツづくりにつぎ込んでいたのだ。

昔の人が「宝くじにあたる」ような幸運は、現代においてはSNSで注目される「アテンションが集まる」、そういった瞬間なのかもしれない。
しかし、宝くじは【購入した宝くじの量】×【運】=【当せん金額】の掛け算でしか結果が出ない。
宝くじを買うためのお金は有限だし、運は自分の努力ではどうにもならない。
しかし、SNSでアテンションを得る試みは違う。

「試行回数」と「エンゲージメント」が「アテンション」を生み出す

アテンションは、【試行回数】×【エンゲージメント】=【アテンション】の式で導かれる。
つまりそこには「再現性」があり、どれもが自分自身の継続的な努力にかかっている。
持って生まれた運や、今使えるお金の量は関係ない。
義務教育並みに平等なゲームなのだ。

お金は使ってしまえばそこでお終いだが、株式投資などを通して賢く資産運用すれば、増やすことができる。
アテンションも同じだ。
注目を満足に変える対価(コンテンツ)をきっちり用意することができれば、アテンションはフォロワー数として資産に変わり、その影響力を活用することで自分自身のビジネスや人生を好転させることができる。

「影響力の種」をSNSで作り続ける

同じことを個人ではなく、ビジネスの単位でも捉えてみよう。
一過性の話題をきちんとリピート顧客に変えることができれば、売上は急拡大する。
Instagramでバズったパンケーキ店が行列のせいで常連客が離れ、ブームが去った後に閉店するような事態は、マーケティング的に望ましくない。

では、どうしたら一瞬の注目に終わらず、サステナブルに発展する状態に転換できるのだろうか?

それこそが真のインフルエンサー(まさに柱)になるための鍵なのだ。
個人も企業も持続的な影響力を持つことにより、今よりずっといろいろなことがうまくいくようになる。
持続的な影響力とはつまり、広告費という罰金を払うことなく、君のビジネスを広める武器を持つことだ。

何年も活躍する偉大なインフルエンサーにはもう1つの顔がある。
彼女/彼らは、クリエイターとして影響力の種を作り続けている。
現代におけるクリエイターとは、自らのプレゼンスを高めるために、SNSに渦巻く人々のアテンションを集める人間だと僕は考える。

この本は、クリエイターになることを通して、自らにアテンションを呼び込み、その機会を最大化するための方法を解き明かすものである。

世界で「クリエイターエコノミー」と呼ばれているビッグウェーブには、動画が大きく関わっている。
ブロガーの時代とYouTuberの時代を分けるのは、そこに "動画" があったかどうかだ。
"文章" の時代には、小学生がなりたい職業にインターネット系の仕事がランクインすることなんてなかった。
YouTuber、ストリーマー、TikToker……。
かつて、「動画2.0」の時代に開いた新しい扉の向こうには、クリエイターの黄金時代が待っていた。

これを他人事だと考えてはいけない。
人々のアテンションは今や、テレビや新聞といったレガシーなメディアから、スマートフォンの画面にシフトしている。
君が朝起きて最初に、あるいは夜寝る前の最後にチェックするのは、SNSのタイムラインのはずだ。

マーケターはもちろん、すべてのビジネスパーソンとブランドは、これからクリエイター化していかなければならない。
金を払えばリーチは買えるが、アテンションを手に入れることはできない。
そして、そのアテンションを動画によって手に入れた者たちが今や、この世のなかの主役になっているのだ。
ヴィジュアルコンテンツがもたらした、新しい時代の羅針盤を君に届けよう。

「映像」と「動画」の、違いのその先へ。
「動画」が支配する新世界への出航だ。

大丈夫。
君が船出さえすれば、クリエイターエコノミーという大波が船を前へと進めてくれる。
何を始めるにも、今日が一番人生で若いタイミングなのだから。

さあ、もう一度、再生を始めよう。

Opening 動画をやり抜け、勝ちたいならば

『動画2.0』出版時の2018年から、世界は様変わりした。
本の帯にあった「さあ、世界を激変させる動画ビジネスの大波に乗れ!」という鼻息荒い煽り文句は、時間という洗礼を経てマジな予言へと変わってしまった。
文字通り、動画で世界は変わったのだ。

動画をやり抜いて、まったく無名だった個人や企業が有名になり、ブランド化・メディア化し、既得権益を倒して勝利する。
そんなシーンをこの5年間、何度も繰り返し見てきた。
YouTubeの活用は、その代表的な事例だ。
今やYouTuberが、かつての芸能人よりも影響力を持つようになり、YouTubeをマーケティングに活用していない企業の方が珍しくなりつつある。

なぜ、世のなかはこうも変わったのか?
その秘密は、動画を通して得られる「アテンション」にある。

会社の偉いオジサンたちがドヤ顔で言う「経営資源の三大要素はヒト・モノ・カネ」というフレーズ。
かつてはここに「情報」が足された時期も一瞬あったが、まったく流行らずに終わった。

ヒト・モノ・カネはどんなビジネスでも絶対に関わる要素だが、「情報って町の青果店にも関係あるの?」という疑問が浮かぶ。
ここで、テスラモーターズから青果店に至るまで関係せざるを得ない、情報よりも大切なものがアテンションという概念なのだ。

経営資源の新・四大要素は、この4つだ。

①ヒト
②モノ
③カネ
④アテンション

これは日本のみならず、確実に世界の潮流となりつつある。

アテンションはSNSによって生まれた。
君が日々、「いいね!」やフォロー、コメントしたり、あるいはもっと手軽に、スクロール・スワイプしているその指を止めて何かに注目している瞬間に、それは生まれている。

「インスタ映え」「TikTok売れ」という言葉は、アテンションがもたらす原因と結果を表すものだ。
アテンションが支配するSNSの世界では、いわゆる従来のコミュニケーションでもっとも大事だった指標であるリーチ——つまり、君が発信した情報がどれだけ多くの人に到達したか? が意味をなさなくなってきている。

だって君は、自分の指が高速でスクロール・スワイプしている最中に、過ぎ去っていった広告のことを覚えているだろうか?

例えば、50代以上が見ているメディア(テレビ・新聞・ラジオ)で誰かに何かを伝えようと思ったら、広告枠を買えばいい。
こういったメディアの広告は、すべて「リーチ」を軸に価格が設定されている。
テレビであれば「GRP(Gross Rating Point :延べ視聴率。以下、GRP)」、新聞であれば「発行部数」によって広告費が変動する。

GRPも発行部数も、それらはリーチという概念によって広告費へと転換される。
つまり広告を出稿するということは、リーチをお金で買うということに等しい。

しかしアテンションというものは厄介で、お金でそのまま買うことができない。
君が突然、「100円あげるから僕に注目してくれ!」と言われたら、どう思うだろうか。
無視するか、100円もらって注目してるフリをするかの2択だろう。
本当に誰かの注目を得たいなら、同じ100円で面白いことをする方が正しい。

10年前にYouTuberが、冷蔵庫にあったコーラにメントスをぶちこんで動画を作ったように。

こうしたアテンションという新しい資源をもっともうまく活用しているのが、ジェネレーションZ——日本においてはZ世代と言われる、1990年代後半から2012年頃に生まれた世代だ。
アメリカでは19歳にして、TikTokで5億円を稼ぐスターが現れている(2020年8月時点)。

インターネット普及以前の、リーチを得ること自体に希少価値のあった時代は、テレビCMや新聞広告を出稿することそのもののハードルが、金銭的な事情以外でも高かった。
加えて、「お金で買えるリーチ」を買える人がそもそも少なかったため、リーチの効果はあった。

しかしネット広告という、誰もが数百円からリーチを買える時代になると、このリーチというものが(同時にお金というものが)、どんどんコモディティ化していく。
コモディティ化したゲームのルールでは、より多くの資源を持つ者が勝つ。

そんな退屈なゲームをひっくり返したのが、アテンションなのだ。

誰もがリーチの洪水に慣れきっていて、僕らの感覚は自動的にそれを遮断してしまう。
幼い頃から、スマホやSNSを使いこなしているZ世代は、その傾向がより顕著になっている。

心からの興味をかき立てるアテンション、それを引き出すことができれば、ヒト・モノ・カネの資源を持たないちっぽけな個人でも、一発逆転が可能になる。
大企業がリーチを得るため、広告費という罰金を払い続けることを尻目に、僕らはアテンションを駆使してゲリラ戦を挑もう。

これは魔法なんかじゃない。
個人でもちっぽけな会社でも、誰でも使える再現性のある技術だ。
つまり簡単にいえば、ビジネスパーソンの生存戦略や企業の成長戦略は、アテンションとSNS、それぞれの力の掛け合わせによって最大化できる。

では、そのアテンションを生み出す種となるコンテンツとは何か?
それこそがこの本のテーマであり、SNSによって生まれた新たなコミュニケーションツール
─「動画」なのである。

動画をやり抜け、勝ちたいならば。

本書は、動画を信じ、動画に愛された男のちょっと数奇な人生をスパイスに、今日から使える実践的なノウハウと、君の未来への航路を示すマジな超大作だ。

これから10年。
マスメディアはもはやマスのままではいられないし、リーチというものはますます意味をなくしていく。

アテンションを得た個人と企業がメディア化し、そのパワーを使って稼ぎ、成長する時代なのだ。
それをやり抜くための唯一無二の技術、「動画」に向き合いたいならば、この本を買え。

再生ボタンはすぐそこにある。

(To Be Continued...)

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本当に魂込めて頑張って書きましたので、よろしくお願いします!


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