シモーネ_マルティーニ

(1)-1額縁の始まりと普及

【額縁の教科書】
昨年末に原点である「額縁について」投稿しましたが興味反応があると知りました。
額縁は長く深い歴史を流れて現在も色々な形で存在します。諸説や推測、明確でない中でも歴史や意味を紐解く事で業界で共有しプロとしての意識の為の教科書があります。そこから額縁の歴史や様式、種類など一部ですが一般の方々にもお伝えし興味を持って頂きたく、これから定期的にその箇所を選び投稿して参ります。なお、ご指摘ご質問には対応出来かねますが今後の参考にはさせて頂きますのでよろしくお願い申し上げます。

ガクブチのヤマモト

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「第2章 額縁の歴史」 より

(1)-1額縁の始まりと普及

額縁の歴史を見れば、建築と深く関わり合いながら長い年月を経て発展してきたことが解る。古代の宮殿や教会の壁や天井には呪術的、宗教的な絵画、レリーフ(浮彫)やモザイク (ガラス、貝殻、宝石などを散りばめた図案、絵画などを表した装飾物)が描かれていた。人々はその場所を訪れ神仏と通じ、救いを求めたり豊かな暮らしを祈願した。やがて、神の分祀や布教の目的で壁画や天井画は持ち運びができるタブロー形式の画にも発展した。この時期に絵画やレリーフは建築から独立した芸術作品となり、その作品を飾るために生まれたのが額縁の原形であろうと思われる。

冒頭写真は「祭壇額」と呼ばれています。当工房では現在も制作を承ることがあります。

祭壇額の例(作家様から画像を送って頂いております)


1347年から1351年、黒死病(ペスト)が西欧全土を襲った。その時期以降、より崇高な精神でさらに強い信仰心を抱き、マリアの聖像を家庭に飾る人々が増えた。それが現在に通じる装飾的要素を含んだ額縁の普及を誘ったとも伝えられている。

黒死病大流行という大事件で「装飾的要素を含んだ額縁が普及した」のは一説に過ぎないが、その信憑性を高める大きな社会現象が背景にある。14世紀初頭、イタリアで始まったギリシア·ローマ文化復活を基調とする西欧の文化運動ルネサンスがそれである。ルネサンスでは、それまで教会建築の付属物に過ぎなかった絵画や彫刻が、宗教に題材をとりながら自由に創作され始めたのである。イタリア·ルネサンスは15世紀末に衰微するが、この時代にジョット(1266または1267~1337頃)、ボッティチェリ (1444頃~1519),レオナルド·ダ·ヴィンチ(1452-1519)、ミケランジェロ(1475~1564)、ラファエロ(1483-1520)など美術史を彩る芸術家を輩出した。

ルネサンスはヨーロッパ全土に波及し、ネーデルランド(オランダ)ではファン·アイク兄弟(フルーベルト1370頃~ 1426頃)、ピーテル·ブリューゲル(1525~1569)、ボッシュ(1450頃~1516), ドイツではデューラー(1471-1528)、グリューネルワルト(1475頃~1528)、ハンス·ホルバイン(1497~1543)、スペインではエル·グレコ(1541~1614)、ベラスケス(1599~ 1660)などの画家が優れた作品を残した。ルネサンスは、美術家以外に文学、学問、演劇など多分野からも優れた人材が世に出、大衆は彼らの作品や思想にふれ、市民文化そのものが高揚した時代であった。ルネサンスを契機に、額縁は市民の暮らしの中に徐々に溶け込んでいったと思われる。

(1)-2額縁の始まりと普及へ続く


参照:全国額縁組合連合会 監修のフレーマーテキスト改訂版

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