見出し画像

英国紅茶文化とシェイクスピア

先月UCL卒業式でロンドンを訪れた際、シェイクスピアのグローブ座 (Shakespeare’s Globe)併設の Swanというレストランにて、アフタヌーン・ティーを楽しんできました😽☕️🫖

DARJEELING
SAVOURY
SCONES
SWEET

このグローブ座というのは、1599年に建てられ、1613年の火事で焼けた翌年に再建されたシェイクスピア時代の劇場を、現代に甦らせたものです。

Shakespeare's Globe

この劇場では、2019年にガリレオが参加した UCLのSummer Course in English Phoneticsで100周年記念公演をご担当された音声学者 David Crystal先生の主導のもと、シェイクスピア時代の英語発音を再現した『ロミオとジュリエット』を上演するといった試みもなされたことがあります。

David Crystal先生&ガリレオ @SCEP2019

…とだけ聞くと、いかにも英国文化にどっぷり浸かった話のように思えるかもしれませんが、実はシェイクスピアの生きた時代:1564~1616(ひとごろし・いろいろ)の英国に紅茶はまだ入ってきておらず、Oxford English Dictionaryによれば “tea”という語の初出は 1655年であるということです(安井泉 (2002) pp.131-133「英国紅茶物語」)。

【注】:もちろんこれは「記録が残っていて確認できる範囲で」という意味ですが、少なくともシェイクスピアの時代に「英国といえば紅茶文化」という状況は存在しなかった…とは判断できます。

したがって、シェイクスピアの書いた戯曲の中に “tea”という単語は一度も登場しません。「テムズ川のほとり、シェイクスピアゆかりの場所で、アフタヌーン・ティーのひとときを…」という魅力的な謳い文句は、実際には商業的に観光客を誘い出すものであり、「かつてシェイクスピアも、こうしてテムズ川を眺めながら紅茶を楽しんでいたのだろうか…」とはならない話なのです。

そんなウンチクは差し置いても、Swanのアフタヌーン・ティーはとても美味しく、特に Devonshire産のクロッテド・クリームとイチゴのジャムでいただくスコーンがガリレオ的にはイチオシです。

☕️Swanの Afternoon Tea🫖

another ウンチク
クロッテド・クリーム→ジャムの順で塗るのが Devon流・逆の順で塗るのが Cornwall流。故エリザベス女王が Cornwall流であったことから、後者が「正統派」とみなされつつあるのが現在の潮流です。

参考文献
安井泉 (2002)「ことばからみる英国文化論」,『筑波大学「東西言語文化の類型論」特別プロジェクト研究 研究成果報告書』, 筑波大学「東西言語文化の類型論」特別プロジェクト研究.

David Crystal, (2019) Pronouncing Shakespeare: The Globe Experiment, Cambridge University Press.

※ガリレオ研究室は、Amazonのアソシエイトとして適格販売により収入を得ています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?