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諦められるか?/映画大好きポンポさん レビュー

「諦める」という言葉には、「明らかにする」という意味がある。自分に本当に必要なものは何か?自分が捧げるべき物事は何なのか?それを明らかにする行為が諦めるという行為だ。

ジーン・フィニも今までの人生で色んな事を諦めてきた。友達、家族、見た目、運動、勉強..... どれもしっくりこなかった。でも映画だけは全く別だった。映画を見ている時間だけは生き生きとした心地になったし、「何で面白いのか?」を徹底的に深堀しなければ気が済まなかった。

さっきシーンのどこが良かったか?どこに違和感を感じたか?カメラワークがどのように動いたか?カットはどういったテンポ感で切られているのか?それを何度も何度も自問自答し、その答えをノートに書く。その結果、彼はいいショットを見極める審美眼、脚本の運び方、膨大な量のテイクから本当に必要なテイクを厳選する判断力。様々な映画のセンスを身に付けた。

打算ではなく、ただ好きだったのだ。映画を観てる時、そして自分の頭の中にある理想を画面上に具現化していく時だけ、1番豊かさを感じていた。

しかし本当に良いもの、心に残り続けるものを生み出すには一点集中しなければいけない。あれもこれもと欲張って出来上がった映画は、伝えたいメッセージはぼやけ、自分の中に悔いが残る。そんなものを公開してしまえば取り返せない悔いが残る。それだけは嫌だったのだ。

足りないのだ。好きなもの(映画)以外を諦めてもまだ足りない。映画の中でもさらに諦め、諦め、本当に必要な芯だけにしなければいけない。そうする事で初めて完成するのだ。


この映画は大枠で見れば冴えない主人公のサクセスストーリーだ。話の展開もベタだと思う。でもうまみはそこではない。成し遂げたい事の為に、どこまで捧げられるか?どこまで諦められるか?憧れの為にどこまで大事なものを捨てて、本当に大事なものだけを残せるか。目の前の事をまっすぐ見つめる大変さ、そして心に火が付いた感覚。そういった体験を映画を通して経験出来た。


自分があそこまでたどり着けるか?そう質問されたとして、はっしりと「はい」と答えられるだろうか。あそこまでたどり着くまでに色んなものを失うし、惜しまずにはいられないだろう。諦めなくても生きてはいけるのだ。十分に豊だ。
でも、スクリーンに映っていた彼らを見て、誰もたどり着いたことのない場所で、多くのものを切り捨てて全力で立ち向かう姿は、とても心に残った。そうやって心を動かされるからこそ、こうしちゃいられないと感化され、この映画を観て良かったと思えるのだろう。

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