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散歩を愉しむ & カワセミのこと

朝夕の散歩が習慣だ。歩き始めたのは、蟄居生活から軟禁生活に変わる頃、去年の4月ぐらいだったろうか。緑の色も匂いも濃くなった5月には習慣になっていたと記憶する。そう、細君と一緒に歩いている。

これまで挙げてきた私の作文で、我が配偶者のことを ”細君” と称している。年頭作文を始める前に、どう表わすか考えた。候補は、”妻” ”嫁” ”嫁さん” ”奥さん” ”奥方” とたくさんあったが、字づらと音の良さから ”細君” を採用することにした。意味からすると、へりくだりと共に女性を少し蔑んだニュアンスがあるのかもしれないが、女性のしとやかさ、か弱さが感じられる。まあうちの人が、しとやかでか弱いのかと問われればそうではないし、あまり細くもない。

散歩の話に戻る。朝の散歩はゆっくりと、近くの池を囲む公園までの往復。夕方は速足で、川沿いから環状線の脇道に入って帰ってくる周回コース。朝は散策、夕は運動といった様子だ。

春は木々や草花の生命力を感じ、夏は強い日差しの下でセミの声を聞き、秋の落ち葉を踏みしめ、冬のキーンと張りつめた空気を頬で受ける。一年を通して日本の四季を味わうことは、この齢になって初めてだった。”プレバト!!” の俳句はずっと見ていて、夏井先生をお慕いしているのに、まるで風雅が浮かんで来ないことが残念でならない。

朝の散歩の愉しみのひとつが、鳥を観ることだ。行き先の公園には池と、その周りに手つかずの森がある。そこでは大小さまざまな水鳥や陸鳥が暮らしている。それらを見て、そして声を聞いて愉しむ。

たくさんの鳥の中でも、私にとって特別はカワセミだ。カワセミは警戒心が強く、人間には近付かないし動きが俊敏なため、めったに見られないし見られたとしても短時間だ。色は頭と羽がブルー、お腹がオレンジという配色。このブルーは色素によるものでなく、羽毛のナノレベルの構造によって光が干渉してブルーに見えている。これを構造色 (structural blue) という。

【余談ですが】孔雀やモルフォ蝶、玉虫の発色も構造色によるもの。最近では人工的にその形を持つ微細な粒子を作れるようになっています。2年程前、レクサスLCにその粒子が原料のカワセミブルーが塗装され、限定車として発売されました。

カワセミはたいてい単独で行動していて、水上30㎝ぐらいのギリギリを高速で飛ぶ。ホバリングもでき、水中の小魚に狙いを定めて、直角に水面に突撃して一瞬で捕獲する。高貴な姿かたちと孤高な振る舞いに、スター性を感じませんか。登場してきた時の高揚感は、B'zのライブで稲葉さんが登場した時のそれに近いかもしれません。

【余談ですが】細君はかれこれ20年以上B'zと稲葉さんのファンです。

私の場合、カワセミを見た朝は何か良いことがあるんじゃないかと思ってしまう。これは多分に、少年時代に流行したザ・タイガースの ”青い鳥” という歌の影響だ。 ♫ 青い鳥を見つけたよ、美しい島で。幸せ運ぶ小さな鳥を  ♪♪調べてみると1968年発売、メンバーの森本太郎の作詞作曲だった。カワセミを見ると必ず、この曲のエレキギターによるシンプルで物悲しいイントロが、頭の中で鳴り始める。

ある日曜日の朝、久しぶりにカワセミが見られたので、少し気合を入れて馬券を買ってみたが、どうやらギャンブルの幸せは運んで来ないとみえる。

カワセミの生育は環境に影響され易く、それ故 ”環境汚染のバロメータ” と言われる。”飛ぶ宝石” カワセミをいつまでも見られることを切に願う。

他の鳥についても書きたいことがあるのですが、文字数も嵩んできたので、それは別稿に譲リ、今日はこれまでとします。


下の画像、真ん中より少し右に青いところがありますよね。カワセミです。スマホで拡大しましたが、これが限度でした。

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カワセミは漢字で ”翡翠” と書きます。"ひすい"と同じ字です。

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