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漫画実写化の新しい方向性かも「寄生獣ザ・グレイ」

岩明均の漫画を原作としたNetflixの韓国ドラマである本作。

寄生獣といえば、個人的にも一生のうち一度は読んだ方がいい名作の一つで、過去に山﨑貴監督で映画化されたり、アニメ化も製作済みの大人気コンテンツ。正直また実写化してどうする?と疑心暗鬼で、しかも予告を見ると、主人公も女性だし、名前を借りただけのオリジナル作品になるのか?と不安要素もありました。

それが実際に鑑賞すると面白いこと面白いこと。
同じNetflixの三体を見終わったらおすすめに出ていたので少し流すかと見始めたのですが、すっかりハマって二日で全6話見終わってしまいました。
私がこのベースで鑑賞したのは、スプリガン以来で、三体ですら2週間くらいかけて見終わったので、それくらいガッツリ楽しめる作品でした。

ストーリーは、「もしあの寄生生物が日本だけでなく、世界中で発生し、韓国でも脳を寄生されたパラサイト達が人を襲っていたら……」というIF展開。当然展開にも韓国ならではの要素が多く盛り込まれていましたが、原作の核となる部分はしっかり踏襲されてたため、原作ファンの私もとても楽しめる内容になっていたと思います。

1.主人公とパラサイトの奇妙なバディ感
主人公はチョン・スインという29歳の女性で、スーパーのレジ打ちをしていたところ、男に逆恨みされて殺されかけたところをパラサイトに寄生されますが、瀕死の彼女を助けることにリソースを使った影響で、顔の右半分しか規制できない状態で共存することに。右半分という部分がミギーのリスペクトなのでしょうが、原作のジョー(顎に寄生)と違い、スインの意識を乗っ取る形で出現するため、基本的には同時に会話ができないというデメリットが。この同じ要素を違う方向から詰めてきたことにより、逆に互いが互いを思いやる描写を自然にいれることもでき、終盤の盛り上がりにも貢献していたと思います。
なお、パラサイトの名前はハイジ。当初ジギルとハイドから別人格的な存在としてハイドと名乗っていたが、本作のもう一人の主人公ソル・ガンウからもっと可愛いほうがいいと、アルプスの少女ハイジから命名されていました。この安直さとジャパニメーションリスペクトが良き。

2.主人公はパラサイトの能力が使える人間だけど、弱点もある。
原作のミギーは主人公泉新一の命を救った代償として、一日4時間は完全な眠りが必要な弱点を抱えていましたが、ハイジの制限はもっと厳しく、一日15分だけ現出可能で、本当にここぞ、という時にしか戦えません。そういえば助けた影響でスミン自体が超人化はしてませんでしたね。

3.登場人物の原作からの絶妙な組み換え
寄生獣の怖さの一つは、ある日自分の家族が全く別の存在に変化して襲ってくるところ。
本作ではガンウの姉がパラサイト化したり、スミンの唯一の血縁である叔父で刑事のキム・チョルミンが彼女の眼の前で首を落とされ、パラサイトに乗っ取られるという過酷な展開が。直前まで彼女の理解者として行動していたチョルミンが死亡するシーンも本当にあっさりと描かれており、この演出自体も原作に通ずる要素に感じました。
また、前述のガンウの姉は、原作の田村玲子(田宮良子)の要素も持っており、終盤で共闘関係になるなど、人間とパラサイトの関係を考える存在になっていました。

他にも、人間側にもパラサイト側に寝返る人がいたり、人間組織に入り込もうとするパラサイトが首魁だったり、パラサイト自体も自分たちが脆弱と理解していたり、勿論繁殖もできない設定も踏襲していたりと、原作要素は本当にしっかり拾っている印象でした。

その上で、パラサイト達が教会を乗っ取っていたり、警察以外にパラサイトに対抗する組織が1話から結成されていたりと、韓国ならありそう、と思われる要素がしっかり機能しているのも良かったです。知っている原作が、全く予想できない展開で語られることが、こんなに気持ちがいいとは。

このパラサイト対抗組織がサブタイトルにもなっているグレイなのですが、ここのチーム長を務めるチェ・ジュンギョンもオリジナリティあるいいキャラクターでした。彼女の夫がパラサイト化したのですが、彼女はそれを生きたまま捕獲し、他のパラサイトを探知するレーダーとして使っていました。彼女の復讐心と前夫への複雑な思いも、本作独自のの見所となっていました。

グレイが1話から活動し、パラサイトが登場した序盤以外では、既に彼らが狩られる側にもなっている部分は、テンポの良い作劇とともに、原作の知名度の高さ故の部分もあったと思います。何度もメディア化された作品でもあるため、そこは視聴者も知ってて見てる事を信じて作っているように感じ、原作への理解とリスペクトを強く感じた部分でもありました。

作品の肝である、アクションやVFXも本当に素晴らしく、新感染ファイナルエクスプレスのヨン・サンホ監督、いい手腕だし、しっかりお金かけれる韓国ドラマ界の強さを実感しました。

ラストに原作主人公の泉新一(演じるのは菅田将暉!)を一瞬出して終わる本作。ここは原作ファンへのサービスと理解しましたが、一瞬のシーンだけに彼を使う贅沢さ。
正直作品としてはきっちり完結しただけに、続編は無くてもよいのですが、菅田将暉の新一が本作の主人公たちと別の事件を追う展開も、作られるなら見たいと思います。

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