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娯楽大作としてよく出来てました「ゴジラ-1.0」

衝撃的な作品だったシン・ゴジラから7年、実写邦画としては久しぶりのゴジラは、シン〜より更に一般向けの娯楽大作として、幅広い層が楽しめる作品になっていたと感じました。

序盤からしっかり登場して恐怖を与えるゴジラ描写(この時はまだ小型でしたが)、海上での小型船との攻防、中盤の銀座大暴れとクライマックスの激闘など、様々なシチュエーションで暴れるゴジラの描写は満点の出来。ただでさえ日本では頭抜けた白組のCG技術で、シン・ゴジラから更に進化した映像を見せてくれました。
特にゴジラと人間との対比が秀逸で、冒頭の島で人を襲うゴジラ、銀座で踏み潰す描写は、リアリティあふれる映像故の恐ろしさを感じました。

音響も最高で。今回ドルビーアトモス版で鑑賞したのですが、360度音に包まれる能力を最大限に活かした音響は、ガルパンにも引けを取らないほど。特にゴジラの咆哮は、空気が震える感触を耳のそばで感じることが出来ました。

今回のゴジラは、大戸島の伝承生物という以外の情報はなく、どういう生き物なのか、という点についてはほとんど描かれませんでした。それ故の不気味さは感じられましたが、シン〜が結構生態について深掘りしてくれたので、少し物足りなさも感じたり。

ストーリーは、元特攻兵の敷島(神木隆之介)の感情を主眼に語られており、この辺も組織対怪獣にしていたシン〜と好対照で、特に敷島の帰還から典子(浜辺美波)の出会い、そして孤児の明子(永谷咲笑)との疑似家族を作っていく下りは、ゴジラでスパイファミリーか!と思いながら楽しんでました。
明子役の永谷咲笑さん、独特の存在感があってよかったです。急に泣き出す演技にゾクゾクさせられました。

俳優陣だと、吉岡秀隆さん演じる野田も良かったです。朴訥な学者肌ですが、時折覗かせる戦争帰りの苦悩を感じる演技に惚れ惚れしていました。

その野田さんが終盤提案するゴジラ駆除作戦も新鮮でした。
オキシジェン・デストロイヤーを使わず、かといって国家規模のヤシオリ作戦でもない、自然の力を利用した水圧押しつぶし作戦(海神作戦)は、時代背景と民間の力しか頼れない現状の解として、それでいてしっかり科学の力も用いているバランスが興味深かったです。

民間の力、というと、今回びっくりするほど政府の存在感がなかったですね。ここもシン〜と対照的なのですが、個人的にはこれはやりすぎかなー、と思ったり。存在感というと、ゴジラ上陸の可能性について箝口令を引いたのが一番大きな影響だと思いますが、家族が危険な目に遭う可能性が高いのに、唯々諾々と従った主人公たちの心情も正直、よく分からなかったですね。リークして避難くらいすればいいのに……。アメリカがソ連の動向を気にして軍を派遣できない設定は良かったですね。それでも基地近くにゴジラが来たら迎撃しそうなものですが。

そして避難、というと、遂に上陸して、銀座で暴れるゴジラと、それに巻き込まれる典子の描写が面白かったです。
特に列車に恨みがあるのか執拗に攻撃してくるゴジラ、前世(シン)で何かあったのか?と勘ぐりたくなるくらい(在来線爆弾の悪夢)。
そしてその列車に居合わせた典子さん、ゴジラに加えられて傾く車内で手すりに捕まってのクリフハンガー。ミッション・インポッシブルが始まったのかと思いましたよ(デッド・リコニングのクライマックスに同様のシーンあり)。

そしてミッション・インポッシブルといえばトム・クルーズなのですが、本作のクライマックスも、トップガンを彷彿とさせる激しい空戦シーンも見どころでしたね。
敷島が飛行機を求めたとき、来るかなーと思っていたらやはり登場した震電。過去にも様々なフィクションで登場、活躍してきたこの試作機。やはりプロペラが後部についているデザインがかっこいいですよね。
そしてこちらの予想に大抵答えてくれる山崎監督、庵野監督と比較しても、とても多くの観客に近い感性を持ったオタク監督なんだろうなあ、と思います。それ故のヒット連発なんだろうなあ、と今回改めて思いました。その部分が逆にマニアからするとちょっと、となる部分も多いんだろうなあ、と。

そしてかっこいい、というと、今回のゴジラの熱線描写も恐ろしくもかっこよかったです。背びれが尾先から伸びていって強烈な熱線を吐き出すシーンは、その後の爆発もあわせて、数は多くないものの強烈な印象を与えてくれました。
海上での熱線シーンも、激しい爆発とデコイなので人命被害は最小限、という面白いシーンになっていました。

そしてその海上で、民間船の船長を務めていた田中美央さん、こないだ相棒にも出て、悪役である公安部長を存在感たっぷりに演じていました。最近顔と名前を覚えましたが、いい役者さんですね。

などなど、見たときの感想とそこから連想される物事でnote書いてみました。
その他気になったのは、
・典子さん、ゴジラ熱線吐くときに敷島救うのはいいけど、突き飛ばさずに一緒に飛び込もうよ……。「生きる」ことにこだわっている彼女が、自己犠牲するのは違う、と思いました。それ以外にも本作の女性描写、「この世界の片隅に」を知った後だと全般的に物足りなかったです。
・震電の爆弾で、脱出装置が付いているのは分かりやすいフラグだったなあ。
・「やったか?」やってない展開多すぎ問題。それ一回くらいで抑えてほしかったです。
・電報のシーンとかも、超ベタだけどそれやれてしまうのが山崎監督作品の強みか。
などなど。

色々つらつらと書いてきましたが、娯楽映画として本当に楽しめましたよ。初日の興行も上場らしいので、しばらく上映は続くでしょうが、大きなスクリーンで、良い音響の劇場を選んでいくのが良いかと。席は出来るだけ前の方で見ると、ゴジラの大きさ、迫る恐怖を追体験できるのでおすすめです。


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