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これが富野アニメの最新形態「劇場版GのレコンギスタV 死線を越えて」

Gレコ、堂々完結!富野監督お疲れ様でした。
インタビュー等で話されていた通り、VはIVと違い、新展開的なものは少なかったように思えましたが、三つ巴を超える四つ巴の戦線、すなわちキャピタルアーミーにアメリア、トワサンガにジット団、が様々な思惑で戦場に飛び込む様子がかなり整理され、TV版より各陣営の流れが明確になったと思いました。
そんな大きな流れは同じながらも、情感たっぷりのエピローグに加え、油絵のような画像と共に流れるエンドロールと、その後に挿入されるポストクレジットシーンで驚きと喜びを感じました。
映像も、新規作画も多くあったと思いますが、正直どこまでがTV版で、どこからが新規なのか分からない部分も多く、TV版の短いスケジュールの中でここまで精緻な作画をしていたことにも驚かされました。

本作は、進んだ科学が必ずしも人類を幸せにしてくれるわけではない、ということを、宇宙を舞台にしたはるか未来のSF映画から描く。そんな重いテーマを内包しながらも、最後までどこか牧歌的、そして常に明るいムードを持って駆け抜けています。
テーマについては、スマホの技術を知らずに使う自分たちに当てはめてもよし、ハイテク装備を与えられ戦争をしている世界に当てはめてもよし、と現実を考える一つの切っ掛けにもなりましたが、それでもやはり私は、一つの娯楽作品として、劇場作品として再構築された本作を最後まで楽しむことができたことが幸せでした。IIIからは遠出して普段行かない映画館へ足を運びましたが、それも旅の一つとして記憶に残り続けるのでしょう。

富野展や実際の作品を見ていると、富野監督は本当に一つとして同じような作品を作っていない、常に何か新しいことを盛り込もうとしていますが、本作はまさにその最新形態だと思いました。最新で、最終ではないと信じているからこういう書き方をしています。

富野作品と言えば~で、かつては皆口にしていたであろう、「皆殺しの富野」なんてもう過去も過去。確かに本作でも確かに多くのキャラクターがお亡くなりになりますが、それでもメイン中のメインは最後まで生き残り、新しい時代を逞しく生き抜いていくことが描かれます。
ニュータイプの概念も、それっぽいことを本編に入れてはきますが、もうニュータイプが人類の革新とか全く考えていない。むしろリギルド・センチュリーの表現としては逆ですよね。宇宙は人を進化させるのではなく、退化させると考えている。
こういう問題意識は、シリーズものとしてのガンダム、商品を売るコンテンツとしてのガンダムとは相容れないのかもしれませんが、もっと多くの作り手、特にガンダム関連の作品を作る人達には共有されてほしいな、とも思います。

監督の問題意識はそれにとどまらず、軌道エレベーターも宇宙開発も簡単ではなく、フォトン・バッテリーみたく、夢のような技術的ブレークスルーが必要だし、いざ宇宙で生活したらしたで、ムタチオンのような問題が起きてくる、と無数に出てきます。きっとガンダムエースの「教えてください、富野です」等で多くの有識者たちと対談をすることで、自分の中で積み重ねられた問題意識の数々が反映されているのでしょう。
それでも監督は、生命力と新しい発想に溢れている次世代の若者たちなら、打ち破ってくれると信じている。日々のインタビューの発言と裏腹に、富野監督へ未来への希望を諦めない方なんだろうな、と感じるのです。
それは上記のポストクレジットシーンでの彼女のバイタリティあふれる行動や主題歌「カラーリングバイG-レコ」など、本作の全編からも伝わってきました。

パンフレットは880円。正直密度は薄いと言わざるをえないのですが、個人的にP.19~20の黒崎知栄実さん画の、ラストカットに繋がる絵が本当に感無量なので、V見て感動した人は買って損はありません。

VもIVと同様、上映館は決して多くはありませんが、お盆休みもありますので、ロボットアニメ好きの方々は、機会があれば遠くに足を運んででも、ぜひ見てほしい作品でした。

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