SHIROBAKOなど、お仕事アニメに定評のあるP.A.ワークス制作の新作映画は、ウィスキーを作る蒸留所を舞台に、幻のウィスキー復活を目指す家族の絆を描く作品になっていました。

仕事に無気力なwebニュース社員を主人公の一人に添えることで、ウィスキーの製造工程を丁寧に描きつつ、彼の成長物語に繋げていくつくりは上手いなー、と感じました。
また、もう一人の主人公、父の急死により若くして蒸留所を継いだ女性社長が製造中止になったウィスキー「独楽」を復活させるストーリーは、駒田蒸溜所社員も含めた「家族」の絆を再認識する流れになっており、こちらは過剰にウェットにしない演出が冴えていたと思います。

P.A.ワークスが手掛けたお仕事アニメも色々ありますが、本作はその中でもかなりリアル寄りで、登場人物はみな成人だし、ファンタジックな要素は皆無。デフォルメされる演技もほぼ無く、その動きは舞台となる蒸溜所含めてとても地に足の付いた描かれ方をしていました。

そのリアルな物語を支えていたのが、主人公の二人、早見沙織、小野賢章を始めとする声優陣。他にも中村悠一、細谷佳正、井上喜久子、鈴村健一、堀内賢雄と人気、実力を備えた声優たちが家族や社員を演じているのですが、皆いわゆるアニメのキャラっぽさは皆無で、本当にそこにいそうな人たちを好演していました。

こういうオリジナルのアニメ作品が作られると、話題作りのためもあると思いますが、俳優、アイドルが声優を務めることも多い昨今ですが、ここまで本職の声優を固めてくれたことで、逆に彼らの演技の幅広さが伝わってくれるといいな、と思わずにはいられません。

映像も素晴らしく、特に冒頭のウィスキーの映像を見るだけで、「あー、今夜は丁度買っていたウィスキー飲もうかな」と思わずにはいられません。
まあ、劇中に登場するウィスキーの1/10以下のお値段で買った安いものですが。

そのウィスキー、一時期よく買っていたのですが、その時はシングルモルトウイスキーを愛飲していまして、グレンフィディックとかマッカランなどを好んで飲んでいました。
しかし本作でブレンダーの仕事を目の当たりにすると、ブレンデッドウィスキーも奥が深いと認識を改めました。
これは次に買うのは国産のブレンデッドウィスキーですね。

そんなわけで、定期的にお酒を飲む私はとても楽しめましたし、お酒に興味がなくても長野の風景はきれいだし、ウィスキーの製造工程という普段馴染みのない世界を味わえるし、何より家族の物語として、仕事の物語としてよく出来ていると思いますので、かなり幅広い、普段アニメを見ない層にもお勧めできる作品と思いました。