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人間のドラマチック思考

 一般的な思考パターンていくつもあると思うんですが、所謂『ドラマチック思考』(この後説明します)が誰にもあります。これが日常生活においては邪魔になるから気をつけないといけません。

 『ドラマチック』という言葉にネガティブなイメージはあまり無いと思います。文字通り『ドラマ』のような日常に近いようでかなり非日常なフィクション物語、夢見る物語、小説や映画など、創作物としてはとても面白いものがあります。

 当たり前のように毎日同じ時間にやってる『ドラマ』ですが、何故こうも当たり前に制作され続け、放送され続けるのでしょう?技術的な革新も何もなく、ただただその時の世情に合わせて、その時代の演者の仕事場として、同じように世に出続けています。フィクションの作品は映画も小説も全てそうです。

これは人間の『ドラマチック思考』を刺激するから、そして本能的に『ドラマチック思考』を人が楽しむから、という理由があります。

 ただ娯楽という点においては何も問題がありませんが、こと日常生活に反映させてしまい間違った認識を持つ事が多々あります。

▽例えば年の差婚。
 これがドラマで流行ると、それが今の流行り(新しい常識)だと錯覚する。そして結婚=幸せ、ともすると独身=不幸だという根拠の無い恐怖感を植えつけられる。そして結婚=幸せのゴールと思い込んで、年齢に焦り生活の全てを婚活に捧げる。結婚が幸せのゴールなら年に30%も離婚しません。不倫のドキドキもドラマとメディアがカリギュラ心理を煽る典型です。
▽例えば医療現場。
 事実とは異なる知識が広まることの多い事例です。一つの病でも人によりケースバイケース。これをドラマの知識で偏った見方を現実にもしてしまいます。これが誤った民間療法や他者への誤解に繋がる。
▽例えば貧困。
 かなり特殊なケースで、実際はそんな貧困は家庭内暴力と同じくらいの数しかないのに、凄まじい数の『ドラマチック思考によるイメージの』貧困が想起され、正しい支援が行われなかったりします。ケニアのマサイ族、と聞くと原始的なイメージを持つ人が多いですが、観光用の建物以外にアンテナのある建物もあり、誰もがスマホを使っています。

枚挙にいとまがないのでこの辺で。

 どれもフィクションとして受け止めていて、あくまで現実とは違うという認識があれば良いのですが、人間にこの『ドラマチック思考』が備わってるせいで(お陰で?)全てドラマチックに考えてしまいます。

 ポジティブな事もネガティブな事も。こうだったら良いのに(ドラマチックなのに)という思考をしてしまいます。

これは本能に近いので防ぎようがありませんが、ドラマチック思考をしているかも?という自覚は大いに役に立ちます。

 例えばシンギュラリティ(技術的特異点)
 AIの知能が人間の知能を超える時、さも起こりうる未来かのように『AIによる人間の支配』や『AIによる職の喪失=不幸』みたいな事を真面目な顔をして語り心配する人がいますが(ここで著名人=正しい事を言っていると信じやすいのも人間のバイアスです)、果たして本当にそうなのでしょうか?

 まだ起こっていない未来を心配する時、人はドラマチック思考に陥ります。考えうる最悪のパターン(正確により最高のパターン)を考え身動きが取れなくなったり、挑戦に歯止めがかかる時があると思います。
ただ今まで、その最悪のパターンに陥った経験はどれだけあるでしょうか?

 何万人、或いはそれ以上もの天才達が作りうるテクノロジーの進化や制度の変化、環境の変化、誰も予期し得ないものに『ドラマチック思考』を働かせて得する事はありません。極端な話、夢を持って生きる事に拘る事もドラマチック思考の悪いところです。サクセスストーリーを夢見る、子供からの夢を叶えたスポーツ選手やドラマの主人公に自分を投影させる。(一番タチが悪いのは親がそれを決める事です)

 今、Youtuberとして活躍している若者の、誰が幼い頃に今の自分を想像したでしょう?Appleで働くエンジニアの、誰が20年前にiPhoneを作る自分を想像したでしょう?今の自分は、10年前に想像した自分とどれだけ一致しているでしょうか?

 少し先の未来を予想するドラマチック思考はまず当たりませんし、それはメディアに作られた刷り込みです。どんな教育をすれば将来食べるに困らない子供になるか、そんな事誰にも分かりません。

 学ぶ必要が出た時に学ぶ、用意する時に用意しなければいけないから用意する、これを事前に行う事はかなり小さい可能性に賭けているギャンブルのようなものです。

 ただ面白い事に、この『ドラマチック思考』を逆手に取ったビジネスは沢山あります。
▽例えば宝くじ。
 募金に使われるという購入者を納得させる理由も設けながら、うまく人の心理を読んでいるなと思います。
▽例えば防災。
 一時期核対策のシェルターが真面目な顔で販売されたり、東京大震災が来る確率が50年以内に何十パーセントだからヤバいぞとか。本気で心配するなら地震大国、日本を出ましょう。家に防災グッズを用意していて、家にいる時間は起きてるうち1日の何時間でしょう?地震が起きた時どれだけ持ち出せるでしょう?それよりは避難場所、備蓄場所を把握する事と正しい知識を学ぶ事の方が可能性は高いですよね。
▽例えば保険
 これは説明するまでもありませんが、『保険に入っていて良かった』と思わせる為のCMはちょっとワルイな、と思います。笑
数学を習った人はその期待値でも計算してみてはいかがでしょうか。

 どれもそれを『善意で』行っている人が多く存在するので、それが悪い事だとは言いません。ただ『ドラマチック思考』に駆られ、無駄な時間やお金を消費したり、今を楽しめなかったり、間違えた数字で世の中を見てしまう事は良くない傾向だな、と感じています。

最後に。東日本大震災に寄付した人は日本人4人に3人だそうです。その中で、募金後に被災地がどうなったか、支援や寄付の結果を気にした人はどれくらいいるでしょうか。

24時間テレビで募金をした貧困国のその後を気にした人はどれだけいるでしょうか。難病の子の術後を気にした人は?テクノロジーがこれだけ進歩していて、貧困が減らない訳がありません。大富豪が年間に救う難病の子供達の人数は何人でしょう?国が救っているのは?

 ドラマチック思考に駆られると、行為が目的化してしまって、本当に必要な支援は何か、寄付が何に使われたのか、そこまで頭が回転しなくなります。その行為自体は素晴らしいのに、それを自己満足で終わらせることが果たして良い事なのでしょうか。

 今日は問いが多くなってしまいました。
情報を批判的に見る事も大事だし(悪く見がちなのも良くない、ドラマチック思考で考えるより良くなる事も沢山あります。)、何より『自分を批判的に見る』事も同じくらい大事です。

 そして、誰もが『自分はドラマチック思考に支配されてたわ、てへ^^』くらいに過ちも認められる空気作りが大事になると思います。

#ドラマチック思考 #本能 #コラム

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