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Fire HD 10タブレットと(djay 2のことは忘れて)WeDJでDJ環境を作る

(2020/05/05追記)
すでにアナウンスが出ていますが、djay2でのSpotifyサポートが2020年7月に終了し、その他全てのサードパーティ製DJソフトウェアでもSpotifyのサポートは終了すると発表されました。
執筆当時の文章をそのまま残してありますので、その旨ご注意ください。
https://www.algoriddim.com/streaming-migration#

井(djay)の中の蛙、大海(WeDJ)を知らず

つい先日の記事で、Androidタブレットとdjay 2でDJ環境を作ろうということを書きましたが、それを完全になかったことにするための続きです。この記事を読んでいただいたら、djay 2のことは忘れてもらってよいかと思います。

(前回の続き) djay 2でプレイリストが使えない

djay 2のトラック選択のインターフェースの中に、「PLAYLISTS」タブが存在するのですが、こちらにプレイリストが認識されないため、トラックのジャンル等でのカテゴリ分けが大変だ、という話を書きました。

「プレイリスト」といえば、世界的に標準はm3u形式を指すものだと相場が決まってます。PCでm3u形式(単にファイルリストをテキストで並べるだけです)としてファイルを作成し、タブレットに転送してみました。

Fire HD標準の音楽プレイヤーではこれだけでプレイリストを認識してくれました(ご丁寧にパスをタブレット内のフォルダ名に置き換えた上で)。しかし、djay 2の「PLAYLISTS」タブでは何も反応はありません。

次にメジャーであろう、pls形式(これも多少の記述ルールがあるだけで単なるテキストです)で保存したファイルを転送してみました。こちらも音楽プレイヤーでは認識しましたが、djay 2では読み込みません。

iOS版ではiTunesのプレイリストを読んでいたので、iTunesからプレイリストをいくつかの種類(m3u、xml、txt)でエクスポートし、それぞれ転送してみましたが、やはりdjay 2では読み込みませんでした。

これはいよいよ、Spotify以外のプレイリストは読まないのではないか、という疑惑が強まったため、djay 2の開発元であるAlgoriddim社に問い合わせをおこなってみました。(FAQには特に記述はありませんでした)

(2020/01/07 追記)
Algoriddim社のサポートより返答があり、djay 2のAndroid版では、Google Playミュージックアプリのプレイリストに対応しているとのことでした。実際に試してみたところ、たしかにプレイリストを認識していることが確認できました。
(2020/01/07 追記 ここまで)

そもそもなのですが、Android版のdjay 2は、完全にサブのプラットフォームの扱いのようで、iOS版やMac/Windows版に存在する機能のいくつかがオミットされているようです。(という記述も公式にはありません)

djay 2との決別とWeDJとの出会い

問い合わせの返答は待つにせよ、プレイリストが使えないのではDJをやる上ではかなり支障があるため、なんとなく他のDJアプリはないものかと思ってストアを探していました。TRAKTORはiOS版しかないためヒットせず、rekordboxもAndroid版はありますが、「DJ演奏アプリ」ではなく、PC版の「rekordbox dj」やCDJで使用するための楽曲管理ツールのみの提供(つまり、「dj」がつかない無償版のrekordbox)でしたので却下。

そうして見つけたのが、rekordboxと同じくPioneer DJ社(余談ですが社名が変わるそうですね)のDJアプリ「WeDJ」です。

こちらは先述のrekordboxとは違い、純粋にDJパフォーマンスが可能なアプリになっています。rekordboxとの直接的な関係もなく、単体で完結します。

前置きが長くなりましたが、この「WeDJ」をちょっと触ってみたところ、もはやdjay 2を使い続ける理由がなくなってしまったので、前回の記事を書いたことで、もしdjay 2を購入してしまう方が出てくると申し訳ないという気持ちが出てきたのでこの記事を書くことにしました。

djay 2になくてWeDJにあるもの

WeDJは、後発なだけあって、かなりdjayのインターフェースを意識したデザインになっています。それに加え、Scratch Liveやreckordboxのような波形表示のレイアウトも可能なため、djayやその他DJソフトウェアを使用したことがある方であれば、概ねすんなり馴染めるのではないかと思います。

ではあるのですが、WeDJを使っていると、そういえばあれもこれもdjay 2にはなかったぞ、というものが見つかります。

まずはデッキ画面から。

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(こちらがWeDJのデッキ画面。これは縦の波形表示ですが、横表示も可能です。)

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(こちらがdjay2のデッキ画面。基本的にはWeDJとほぼ変わりません。)

・モニタリングON/OFFスイッチ
前回の記事でも書きましたが、djay 2はスプリット機能はあるものの、モニターするチャンネルを明示的に選択することができません。これがWeDJには普通にあります。

・キーロック(Master Tempo)
曲のピッチを変えたときに、音程が変わらないように、オリジナルのキーに固定する機能がCDJにも他のDJソフトウェアにもありますが、これもdjay 2にはありません。曲のズレを微調整するときに、音程がよれてしまって気になるため、WeDJは助かります。

・ピッチフェーダーの解像度(変化範囲)
CDJにはついている、「±6%」「±10%」といった切り替えスイッチがWeDJにはついています。djay 2にもあるのですが、設定画面に入る必要があるのでアクセスが悪いのと、両デッキまとめた全体の設定のため、デッキごとに変更することはできません。

次にトラック選択画面について。

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(WeDJのトラックリスト表示。アーティストタブでは左右2列のレイアウトです。)

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(djay2のトラックリスト表示。ヒストリーはタブからではなく別のメニューから選択可能です。)

・ソート(並べ替え)
むしろdjay 2がソート機能を持っていないことに驚きますが、WeDJはちゃんとリストのソート機能があります。トラック名、アーティスト名、BPM等、一通りのキーでソートができます。

・プレイリスト
問題のやつです。
WeDJでは、m3uだろうがplsだろうが音楽プレイヤーで作ったプレイリストだろうが(形式は不明ですがおそらくm3u?)すんなり読み込みます。また、WeDJでは「タグリスト」と呼ばれる、いわゆる専用形式のプレイリストをアプリ内で作成可能ですが、djay 2ではプレイリストを作成する機能はありません。

・アルファベットショートカット
例えば、「ZEDD」(というアーティスト)の曲を選びたいとしたら、djay 2では、手動でスワイプしてZで始まるアーティストまでスクロールさせる必要がありますが、WeDJでは、リストの横に並んでいるアルファベットから「Z」をタップすれば一発でそこまでジャンプします。iOSでは当たり前の機能ですが、djay 2にはこれがありません。(もちろん検索機能はどちらにもありますがそれはさておき)

・波形プレビュー
トラックを選択する前から、一覧表示で楽曲の波形を見ることができます。rekordboxにはありますが、TRAKTORにはない(はず)なので、私はほぼ使ったことがありませんが、今はブレイクの長い曲は入れたくないな、といったときには波形でわかるので便利かもしれません。ただし、波形プレビューを有効にすると、非常に動作が重くなります。Fire HD 10タブレットなど、コスパ重視のミドルロースペックなデバイスではあまり使い物にならないかもしれません。

・2列レイアウト
WeDJでは、全てのトラックから選択する「トラック」タブ以外(アーティストやアルバム)のタブでは、レイアウトが2列になり、階層的に操作、閲覧できます。djay 2ではレイアウトが1列であり、アーティストを選択すると、そのアーティストのトラックリストに画面が切り替わる形になるため、視認性がいまいちです。

・トラックの一斉解析
djay 2でもトラック解析は可能ですが、デッキにロードしたときにしか解析できず、事前に全てのトラックを一括解析する機能はありません(ちなみに、iOS版のdjay Proにはあるようですが、Androidにはdjay Proがリリースされていません)。WeDJでは解析ボタンがあるため、寝てる間に解析を済ませておく、といったことが可能です。

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(Fire HD 10ではスペックが不足しているのか、解析は結構時間がかかります。1時間で150~200曲くらいの印象です。)

最後に、設定画面です。

・モニター出力のボリューム調整
djay 2ではスプリット機能を使った際の、Master出力とモニター出力とを独立してボリューム調整することができませんが、WeDJでは設定画面の中ではあるものの存在はしています。

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(オーディオ設定画面。マスター音量はAndroidのOS管理の音量と連動します。)

WeDJで気になるところ

もちろん、djay 2では気にならないですが、WeDJでは気になるという点もいくつかあります。

縦フェーダーの場所
djay 2では、隅っこではありますが、デッキ画面内にボリュームフェーダーが存在しますが、WeDJではミキサーパネルを表示する必要があります。波形を見ながら縦フェーダーでMixできないのでこれは不便に感じます。

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(WeDJでのミキサーパネル。波形が隠れてしまいます。)

・表示、操作と音声のズレ
処理負荷が高いのか、あるいは単なる遅延なのか、WeDJでは、明らかに画面の表示と出力されている音声にズレがあります。PLAYボタンを押してから画面が反応するまでは遅延はないのですが、実際に音声が再生されるまで、一瞬ですが遅延があるため、操作に対しても画面中で表示されている波形の動きに対しても音声が少し遅れて聞こえます。そのため、片方のデッキの音を聞いてジャストのタイミングでもう片方のデッキをスタートしても完全には合いません。結構致命的な問題だとは思いますが、これはSYNC機能で補うなり、気持ち早めにボタン操作をするなりして合わせる必要があります。

・処理負荷
WeDJでは、上記の波形プレビューなど、特定の操作で処理が重くなることがあるようです。標準的な機能だけを使っている分にはあまり気になりませんが、ひょっとするとエフェクトなど多彩な機能を使うと、負荷が気になるかもしれません。波形プレビューをおこなった際に、画面が停止し、そのまま強制終了することが一度だけありました。Fire HD 10では少し荷が重いかもしれません。

CUEボタンの挙動
WeDJのCUEボタンは、CDJとほぼ同じ動作をします。PLAY中に押せばCUEポイントまで戻り、一時停止中ならその場所にCUEポイントを打ちます。CDJに慣れていれば問題ないですが、そうでない場合、ボタンの挙動が一意でないため戸惑うかもしれません。djay 2は「SET●」というのと隣の矢印ボタンがCUEの役割をします。見ての通り、SETはどんな状況でもCUEのセット、隣のジャンプボタンはCUEへのジャンプです。

(2020/02/09追記)
・トラックのBPMの手動設定がない
トラックのBPMはトラックのロード時に自動的におこなわれますが、その後で自分でタップするなどして設定し直すことができません。これは結構大きな問題です。
ドラムンベースのようなブレイクビーツ主体の曲や、三連符主体の曲は、間違った解析をされることもしばしばありますので、これらはオートシンク等は使わずに自力でBPMを合わせる必要があります。トラックリストのソートも正しくなくなるので結構不便に感じます。
djayでは、タップによるBPMの後付け設定はもちろん、BPMを2倍にする、1/2にするといったことも可能です。
(2020/02/09追記ここまで)

まとめ

まだ家でいじってみた程度で、実際の現場で使っていないので断定はできませんが、Android版においては、概ねWeDJの方がdjay 2よりも多機能で使いやすい印象です(iOS版においてはもう少し機能差は小さいかもしれません)。無料版ではお試し程度しか使えませんが、有料完全版も220円と大変安い(2020年1月時点)ので、DJをこれからやってみようという方も気軽に試してみてはいかがでしょうか。

【djay 2を選択すべき人】
・ロースペックなタブレットでDJがしたい(Fire HD 10ならWeDJで大丈夫だと思います)
・楽曲がないので、Spotifyの楽曲でDJしたい(2020年7月でサポート終了とのことです)
・Pioneer DJ以外のサードパーティのDJコントローラーを使いたい(未確認ですが、WeDJの対応コントローラーはPioneer製品のみのようです

【WeDJを選択すべき人】
・基本的に上記に当てはまらない方すべて
・Pioneer DJ製のDJコントローラーを使いたい

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