東京はもう飽きたと感じている方ヘ。東京を歩き尽くす表参道住まいの夫婦が知った穴場②「ヒルズ族」から覗く素顔・いばらき市/六本木ヒルズ

霊友会釈迦殿の裏は大きく窪んだ土地で、そこには時代から取り残された一戸建の民家やアパートが建ち並んでいた。散歩で通るたびに人の暮らしの匂いが薄くなっていったので、何かしらの再開発の対象区域になっていることは想像がついたものの、後年、麻布台ヒルズのプロジェクトを知り、その都心の住宅地を丸々と飲み込むというスケールの大きさに言葉を失った。
エリア内にあったすべての構造物の撤去工事が終わり、高台にある麻布通りから桜田通りまで見渡せた時期があったのだが、まるで巨大隕石の衝突跡だった。
六本木ヒルズの開発もまったく同じ手法だったと聞く。
ヒルズの自治会長の過去のインタビュー記事を読むと、地権者500世帯の80%にあたる400世帯が地権者権利交換でヒルズに暮らすことになったという。
再開発の対象となる地域には当然それなりの理由があり、ヒルズの元の土地は六六(六本木六丁目)といわれる木造住宅の密集地であった。
そんな庶民的な暮らしを送っていた彼らも、開業から20年が経ち、良くも悪くも「ヒルズ族」に同化した。
土曜日の朝6:00からけやき坂沿いの広場で開かれる、無農薬もシャレた西洋野菜もないが、真っ当なものを適正価格で売る野菜・花市は、ヒルズ開業時から設けられており、旧地権者と森ビルとの間の生活防衛に対する何かしらの取り交わしのもとで始められたのであろう。
早朝にも関わらず、それなりの服を着て、小型の洋犬を連れる彼らが、見た目の割に親しみやすいのはそんな背景があるからだと私は勝手に感じている。

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