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アルバート・フィッシュを知っているか。 僕は知らないと答えた。 特別お腹が空いていた訳でもないのに、目に入ったから、歩き疲れてどこかに座りたかったから、所持金に余裕があったからという理由でハンバーガーショップに入店した僕らは窓際の二人用の席に着いて、一番安いハンバーガーのみでかれこれ二時間ほど粘っている。窓ガラスの向こうを頻繁に通り過ぎていく女子高生たちを眺め、誰に似ているかという話題だけで、最初の一時間はあっという間に過ぎていった。僕の向かいに座る前田は決まって同じア
「やっべえ! おれもっこりしちまった!」 喉をきゅっと絞り、腹から押し出すように放ったその言葉は虚空を漂って誰にも承認されず消滅した。 「一回ちょっと止めます」 監督の指示が入る。おれが唇を噛むのと同時に、だれかの溜息が聞こえた。 「いまのとこもう一回お願い」 「あ、はい。……やっべえ! おれもっこりしちまった!」 「もう一回」 「やっべえ!」 「ストップ。続く『おれ』との間に、気持ち間をおいてやってみて」 「あ、はい。やっべえ! …おれもっこりしちまった!」 「うーん
「コスプレイヤーの陰毛?」 ひなこの第一声に驚愕したぼくは、思わずその言葉を声に出して繰り返す。網の上で焼けていくカルビからは煙がもうもうと立ちのぼっていて、その向こうで彼女が「うん」と頷く。 ひなこはつい先日、駅前を歩いているときにコスプレイヤーを見かけた。その人物はセーラー服を身につけていたが、どこからどう見ても現役の女子高生には見えなかったそうだ。彼女いわく、化粧の仕方でだいたいわかるもの、らしい。遠巻きにその女の子を眺めていると、ひなこは不意に自分が何をしようとし
「う、ゥウッ……グッ……アッ……!」 その少年の放った震える声は、講義室の静寂にいとも簡単に飲み込まれてしまった。おれはすぐさま言葉を添えることはせず、肌を刺すようなこの沈黙をもって、彼自身に感じてもらうことにする。少年はひどい猫背姿で立ち尽くしたまま、浅い呼吸を繰り返しているが……。
生理がきて外も雨だから、せっかくの休日がさっさと終わってほしいだけの日曜日。 この先期待することなんてなにひとつないかのように、私は機微のない心をもてあましている。こんな日にふっと生きることやめに走ったりしかねないかもなあなんてことを思うのは、元来、この私に宿る自殺願望の露呈なのかしら。どうなのかしら。 お腹いたい。 イライラしてんのかな私。これはイライラか? やる気のないときのおまえはただの役立たずだ。そこんとこわきまえなさい。わきまえつつ、せいぜい無感動な、限ら