しきい値と定量性

食品、特に健康食品などは「この成分を○○g配合!」と謳っているものがよくある。
古くはタウリン1000mgが有名だが、乳酸菌1億個、オルニチン25mgなど探してみるといくらでもある。
しかしこれ、改めて考えると、そもそもその成分が何に有効なのかもよく知らないし、どれくらい摂ればどんな効果があるのかも分からない。

ビタミンやミネラルのように摂取目安量が示されているものなら、それに対して不足しているものをサプリなどで補う分には良いが、それもビタミンCは水溶性だから多少摂りすぎても良いが、ビタミンAやカリウムなど摂りすぎると体に悪いものもあるなどといった知識とセットであればの話だ。

厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020 年版)」より

レモン50個分、しじみ70個分、レタス4個分などと言い出すともう基準となる単位からして分からない。東京ドーム何個分以上に分からない。
オルニチンが体の何に良くて、しじみ以外の食品には何にどれくらい含まれていて、どれくらい摂取すれば効果が期待できるのか。
エビデンスを示せとまで言わなくとも、そのへんの量的感覚をなんとなくでも答えられる人はどれくらいいるだろうか。少なくとも自分はさっぱり見当がつかない。

オルニチンよりも身近なイメージの乳酸菌でも同様だ。
1億個の乳酸菌というのはどれくらいの量なのか。明治ブルガリアヨーグルト400gパックには何個くらい含まれているのか。標準的な成人の腸内には何個くらいいて、何個くらい摂取、排泄されるのか。何個くらい摂取すると効果が期待できるのか。シロタ株とガセリ菌と有象無象の乳酸菌の違いは何なのか。
なんだかよく分からないけどついついパッケージの謳い文句に釣られて買ってしまう。

本当に効果があるのか、しきい値の感覚がどれくらいかというのの反対に、これが含まれているから健康に悪い!というのもある。
原発事故以来、放射性物質などは代表的なものだが、天然の放射性同位体の存在比どころか検出限界以下の分量に対して騒いでいるものから、毎日数kgの食品を何年も食べ続けないと健康被害を起こすような量にならないものまで、定量性を欠いた意見が多いように思う。

カフェインの致死量は5~10gだし、塩なら数十~数百gだ。水ですら短時間に飲みすぎると低ナトリウム血症で死に至る可能性がある。ゼロかイチかではなく定量的に考えれば少なくとも現実離れした数字かどうかは分かりそうなものだ。
効果を謳う類のものはキャッチコピーに釣られて買っても多少のコストアップくらいで済むかもしれないが、風評被害を扇動するようなものには気をつける必要があるだろう。


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