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待ち時間に対する想い

待ち時間、という言葉がどうも好きになれません。

僕がいるクリニックでも、入社当初から待ち時間短縮、という目標を掲げていて、ひたすらに無駄を削減する日々を今も続けています。

その活動に対しては、心から経緯を表します。
ただ、待ち時間(ニュアンス的には、待たせ時間)というのがなんとも幸せじゃない気がして、ずっと違和感を感じています。

待ち時間を削減し、待ち時間の感じ方を変えていくために、
医療機関の中の人の目線で、待ち時間とは何なのかを掘り下げてみたいと想います。

待ち時間を分解してみよう

不妊治療クリニックは待ち時間が長い、と言われます。
ではその待ち時間の正体を明らかにしていくために、どこに時間がかかっているかを分けて、考えていきたいと思います。

1.受付

現状、受付については、多くの医療機関が自動再来受付機を入れていると思います。入っていないとなると、ここで待ち時間が発生します。

初診の方の場合は
・問診票入力からのカルテ作成
・事前説明などのイントロダクション
などで時間が発生いたします。

よく言われると思います。
来院の〇〇日前までに、問診票を入力してください、と。

それはこれが理由です。
事前説明などのイントロダクションは現在は動画を取り入れているところも多いでしょう。
クリニックによって、通院時の注意点などは異なりますので、事前に見ておくことを推奨します。
当日、見ることになれば、その分、滞在時間が伸びてしまうことになります。

2.問診

初診のケースを例にとります。
クリニックによって、順序は違うところもあると思いますが、まずは患者さんの意思の確認も必要なので、多くは問診から入ると思います。

基本的に医師の数<患者さんの数、なので、医師との対話は短くなりがちです。

クリニックによって、事前に質問を投稿できるようにシステム化しているところもあり、大変素晴らしい取り組みだと思います。

医師とあったら、何を聞きたいか、を事前に用意しておくことで、この問診の時間は短くご自身にとっての満足度の高いものとなります。

また、ここでの時間が長くかかるケースもあります。
納得のいく答えにたどり着けておらず、医師や看護師と話したい時もあると思います。
それはそれで適切な範囲であれば構わないと思います。

ただ、上述の場に、医師の数<患者さんの数、なので、
問診にかかった時間の分だけ、後ろの人の待ち時間になってしまう構造であることは知っておいてほしいです。

だから、問診を短く済ませよう、ということではなくて、
他の人も悩み考えているんだな、と想いをはせてほしいです。

ただ、もう一つ待ち時間を発生させる要因があります。
それは医師の数に対して、患者さんが予約できる枠が多すぎる場合です。

これは、経営側でコントロールできる部分です。
来たら来た分だけ受け入れるというのでは、完全予約制という意味がありません。
ここで、そのクリニックの人気度合いと経営者の姿勢を感じます(これは、中の人ならではかもしれません)

3.検査

絶対的にかかる時間としては、この検査工程での待ち時間です。
特に採血の結果については、機械の使用上、絶対に時間がかかり、
ここを短縮することは現実的には不可能です。

そのため、ルーティンで図っている検査であれば、検査時間を待たずして、その他の処置を終えて会計を済ませ、後でメールなどで検査結果を知る、などの対策もできますが、当日聞きたいという人もいると思います。

採血の結果が出るまでには、30-45分程度は見ておいた方が良いと思いますので、この時間は頭に入れておきましょう。

4.内診&問診

この後は内診をして、その結果を踏まえて、治療をどうしていくかというより具体的な問診になるかと思います。
治療方針が決まっている場合は、その日から治療が始まる方も多く、看護師からの説明となるケースもあるでしょう。

実際に使う薬剤の説明などを受けます。
自己注射が基本となりますので、院内で薬剤を作成したり用意して、患者さんに注射指導を行います。

これは、多くの方が初めてのことにもなるので、あっという間に終わる方もいれば、どうしても時間のかかる人もいます。

こればかりは患者さん側の要因でもあるので、誰にも左右できるものではないです。

また、この時間をなくしてしまうこともできます。
それは「注射を使わない・自己注射をしない」治療方針とすることです。

そうすることで、患者さんには決められた錠剤と点鼻薬のみを処方しておけば良いということになり、指導の時間は激減します。

ただ、採卵を行い多くの卵を得るには、卵巣刺激を行い、卵子を十分に成熟させる必要があります。

現実的にはその効果を確かなものにするために、注射が必要と考えられています。

注射をなくせば、待ち時間は減るでしょう。
ただ、一度の治療で得られる卵子が減ってしまうため、治療を終えるまでにかかる期間自体は長くなる可能性が高いです。

5.会計

すべての処置を終えたら、電子カルテが会計に来ます。
当日実施している処置内容、薬剤内容や、各項目を医療事務がチェックして、会計を出しますが、ここで抜けや漏れ、間違いがあると、カルテは差し戻され、修正をすることとなり、ここで時間がかかります。

この時間は患者さんはひとしきりやることを終えていますし、目的は達している状態なので、体感時間としては、多分一番長く、一番満足度が低いだろうと思います。

特に保険診療になってからは、請求項目も多岐に渡ることから、入力のミスが増えるのは一定数は出てしまうので、今後、AIなどで管理していくことが望まれる領域です。

ここも抜本的に短くする方法がいくつかありますが、代表的なのは、
当日会計をしない」ことです。

これができるようになれば、処置を終えれば、待たずに帰宅することもできます。

(中の人はかなり大変だと思いますが)

専門領域における常識は一般には非常識とされるものも多くありますが、
それでも
・必然のもの
・代替可能なもの
・不要なもの
があります。

医療機関としては、まず全力で不要なものを削減していくことになります。次に、代替可能なものですが、これは条件付きで代替可能なもの、というのが多いです。
具体的には、患者さんの協力が必要なケースです。
患者さんが医師や看護師からの説明を多く求める状況の知識で、不妊治療をすれば、当然問診時間は長くなりますが、
事前に動画を送付しておくので、問診前に見ておいていただく、などにより、この状況は変更可能です。

待ち時間にはいろいろな思惑が詰まっています。
実際に待ち時間で困っている人もたくさんいらっしゃると思います。
どれくらい待つか、ではなく、●時くらいまでには出なければならないが、その場合何時に予約を取れば良いか?ということをスタッフの方にたずねてみることが良いと思います。
電話対応される方が、いまいちな場合には、診察時に強引だと思われても、先生にその予定を伝えてみるのが一番良いと思います。

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