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家でビッグマックをつくる ソース編

ビッグマックの人気に大きく貢献しているのは、あの酸味のある特徴的なソースであるということに疑いの余地はないだろう。ポテトにはケチャップをつけるように、唐揚げにはレモンを絞るように、ビーフパティには酸味のあるソースを合わせなければならない。

ところで、家でビッグマックをつくろうとしている人にありがちな悩みが、あのソースをどのように用意するかということだ。かくいう私も同じ悩みを抱えていた。

このソースは実はカナダで2017年頃に販売されていたそうだが、現在は販売終了している。日本でも同じ頃に数量限定で販売されたことがあるそうだが、いずれにせよ2023年現在では入手は難しいだろう。

つまり、ソースは自らの手でつくる必要がある。

※本稿は「家でビッグマックをつくる 完成編」のソース作成部分を抜き出したものになる。ビッグマック自体のつくり方はそちらの記事をご覧いただきたい。

ソースを分析する

ビッグマックに使われているソースの再現レシピを調べると、無数に存在することがわかる。しかし、それらを一つずつ試していたら日が暮れてしまうため、あらかじめある程度のアタリをつけておきたい。そこで、まずは原材料の情報を活用することにした。「どうつくるのか」がわからなくても、「何が使われているのか」は実際にカナダで販売されていたビッグマックソースのパッケージを見れば明らかだからだ。パッケージ情報から原材料を決め、その後ネットにあるレシピを参考に配分を詰めていく方針でいこう。早速、カナダで発売されていたソースのパッケージの裏面の画像をネットで探し、原材料を訳してみた。

大豆油、スイートレリッシュ(きゅうりのピクルス、砂糖、ブドウ糖、果糖、酢、コーンシロップ、塩、キサンタンガム、ソルビン酸カリウム、香辛料抽出物、ポリソルベート80)、マスタードソース(水、酢、マスタードシード、塩、マスタードブラン、砂糖、カラメル、ターメリック、香辛料)、水、卵黄、酢、乾燥玉ねぎ、塩、マスタード粉、アルギン酸プロピレングリコール、香辛料、乾燥ガーリック、加水分解植物性タンパク質(トウモロコシ、大豆および小麦グルテン)、着色料(パプリカ)、エチレンジアミン四酢酸カルシウム二ナトリウム

さて、現時点では作れる気がしない。翻訳したにも関わらず、いったい何なのかわからないものが多数ある。ひとまずここから自力で作れるものに落とし込むために内容を簡略化しよう。まず、なんとかカリウム、なんとかナトリウムなどのよくわからない成分だが、これらは主に保存性や粘性などに影響を与える成分で、味には直接影響しないだろうと予想して除外する。その後、砂糖や酢などの重複しているもの整理すると以下のようになる。

大豆油、スイートレリッシュ、マスタードソース、卵黄、酢、乾燥玉ねぎ、塩、香辛料、乾燥ガーリック、着色料(パプリカ)

これで知ってるものだけになった。ただし、ここからソースをつくるとなると、厄介なのが乳化の作業だ。乳化とは、本来混ざり合わない水分と油分を均一に混ざり合ったような状態にすることを指す。この時に、水分と油分をつなぎ合わせるはたらきをするものを乳化剤と呼ぶ。今回の原材料でいうと、酢と大豆油を乳化剤の働きを持つ卵黄とともに混ぜ合わせることで、半固体状のソースが完成する。乳化自体は頑張って混ぜまくればできるのでこれをやってもよいのだが、試行錯誤の過程で何回もやる必要があることを考えると面倒だ。そこで、これらの工程をすでにやってくれている調味料「マヨネーズ」に置き換える。

乾燥玉ねぎと乾燥ガーリックはそれぞれオニオンパウダーとガーリックパウダーと解釈して差し支えないだろう。着色料(パプリカ)も同様にパプリカパウダーを使おう。香辛料は中身がわからないのでとりあえず無視する。これで、最低限必要なものがそろった。

マヨネーズ、スイートレリッシュ、マスタードソース、オニオンパウダー、塩、ガーリックパウダー、パプリカパウダー

いけそうな気がしてきた。まずは適当にソースをつくってみよう。

ソースをつくる

上記の材料を適当に混ぜてソースをつくってみた。後々の基準となるため、一応重さを計りながらつくった。マヨネーズはキューピー、マスタードはS&Bのものを使用した。他のメーカーのものを使用する場合は多少配分が異なるかもしれない。

材料
マヨネーズ     20g
マスタード     3g
レリッシュ     7g
塩         1g
パプリカパウダー  5振りくらい
ガーリックパウダー 5振りくらい
オニオンパウダー  5振りくらい

味見した感想だが、まず塩気が強い。塩はマヨネーズとマスタードに含まれる分で十分な気がした。次に、ビッグマックのソースに比べるとまろやかで酸味が薄い。このまろやかさは時間経過とともにソースの味がなじんでさらに増すことが予想されるので、混ぜてすぐ食べた今回でこれではダメそうだ。ガーリックパウダーも減らした方がいい。

酸味を含む材料はマヨネーズ、マスタード、レリッシュだが、それら含まれる酸味だけでは足りないため、酢を足す必要がありそうだ。方法としては2つあって、一つは単純に酢を加える方法。もう一つが、酢と砂糖と塩と香辛料を含む調味料「ケチャップ」を使う方法だ。ケチャップの場合は赤みもあるのでパプリカパウダーを加える必要もなくなる。

酢を加えるとしてもなんの種類がいいだろうか?ケチャップを加えた方がバランスが崩れにくいか?次の一手に迷っていた私に答えをくれたのは、またしてもカナダだった。

オープンな国、カナダ

なんと、かつてカナダのマクドナルドの公式チャンネルにはビッグマックの作り方という動画が公開されていたそうだ。動画内では、エグゼクティブシェフ(つまり総料理長)のダン・クードロー氏が家庭でのビッグマックの作り方を説明している。家庭での作り方ということは、なんとかカリウムなどは一切使わずに、家にある一般的な調味料でつくるということである。私がこれまでやっていた、ビッグマックのソースの原材料を家庭にあるものに落とし込むという作業は、既にマクドナルドの料理部門のトップが終わらせていたのである。ただし動画内では詳細な分量については言及されていないため、配分はこちらで考える必要がある。

残念ながらその動画自体は現在非公開になっているが、その動画を見てソースの再現に取り組んだネット記事から、使用した材料を知ることができた。それによるとマヨネーズ、刻んだピクルス(レリッシュ)、マスタード、白ワインビネガー、オニオンパウダー、ガーリックパウダー、パプリカパウダーを使用しているとのことだ。

私の方向性は間違っていなかった。先ほどのレシピから塩を抜いて、白ワインビネガーを加えてソースを作っていこう。

ふたたびソースをつくる

白ワインビネガーは近所のスーパーの酢のコーナーではなく、ドレッシングのコーナーにあった。何回か試作をして私なりに出した結論が以下の配分だ。というか途中で何が正しいのかよくわからなくなってきたので、これでいいんだと自分を納得させて終わらせることにした。

使用した材料

材料
マヨネーズ     20g
マスタード     4g
レリッシュ     7g
白ワインビネガー  2g
パプリカパウダー  5振りくらい
ガーリックパウダー 3振りくらい
オニオンパウダー  3振りくらい

全部混ぜれば完成。マスタードは粒のないものを使用する。レリッシュは今回は近所のスーパーでたまたま見つけた刻みピクルスのチューブを使った。もちろん普通にピクルスを細かく刻んでもいい。

完成したソース

味の感想と作ってみた感想

見た目はほとんど同じだが、よく見るとパプリカパウダーの赤い粉が点々となっているのが少々気になる。これを無くそうとすると、パウダーではなくパプリカの色素のエキスを加えないといけない気がするので、今回はこれで妥協するしかない。

味は完全に同じではないが、味のベクトルはかなり近いと言える。だがやはり、オリジナルのソースと比べると違いはある。オリジナルのソースにはまろやかさと酸味の奥にガーリックやオニオン以外のスパイスの風味が感じられるからだ。ソースを食べ比べることで、中身がわからなくて無視した香辛料が初めて姿を現したわけだ。ただ、この香辛料が何かを特定できるほど、私はインド人ではないため、こちらも今回のところは諦めるしかない。

まとめると、食べ比べるとなんか違うが、これ単体で食べればだいたいビッグマックのソースになっている、といった具合の完成度になった。

今回、原材料からそれなりに真面目に過程を踏んでソースを考察してきたわけだが、終わってみると結局ネットに無数に転がっているレシピと対して変わらない材料と配分になってしまった。この結果には若干がっかりした一方で、多くの人がビッグマックに興味を持っているという証拠でもあり、それだけビッグマックには魅力があるのだということに改めて気付かされた。

余談だが、マックのポテトを余ったソースにつけて食べたら結構美味しかった。ソースを自作した際には割と余るので、是非試していただきたい。

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