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気まぐれショートショート ドローンの課長

ウチの課長は何というか、変わっている。
というか扱われ方が異常である。

廊下で歩いていると、
ドローンに引き回されている課長をよく目にする。
そしてすれ違いざまに
「あっ北崎さん。出来た書類僕の机に置いといて。後で見とくから」
と言伝を受けたりする。

仕事はちゃんと見てくれるのはいいが、
別部署の人と一緒の時に
「あれって、お前ん所の?」
と聞かれるのが死ぬほど恥ずかしい。

ある日、部内の暑気払いのことだ。
定時で上がり、みんなでエントランスを出た時、
けたたましいプロペラの音とともにドローンが下りてきた。

「課長、稟議書の件ですが」
スピーカーから、総務の人の声がした。
「稟議書って、さっきメール出したでしょ」
「前回のものと金額が違ってると経理部長から。
ご確認の上、再度承認印を頂けますか」
「めんどくさいなぁもう」
課長が渋々了承すると、ドローンはアームで課長の両肩をしっかりとつかんだ。

「じゃあ僕ちょっと言ってくるから先にお店はいっ……」
課長はシャボン玉の歌のように天高く飛んで行った。

(432文字)


仮にドローンがもっと普及したとして、果たしてこんなシチュエーションに遭遇することが今後の人生であるのかどうか。
いやあっちゃ困るんだけど、でもちょっと見てみたい気もする。

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