美術相談 画像が勝手に使われた…
弊社では弁護士と顧問契約を締結しており、必要に応じて契約書や契約手続のチェック、契約の同席などを行い、未然にトラブルになることを防ぐ取組みをしております。
今回は、美術にまつわる相談例を紹介します。
※ 相談内容は、顧問弁護士が作成したものです。
1.美術相談
⑴ 知人と数人で絵画を扱う店を開くことになり、私は、告知用のSNS投稿
画像の作成を担当しました。これまでに何枚か作り、SNSに掲載していま
した。
もっとも、社長Aとの意見の食い違いをきっかけに、私はお店を辞める
ことになりました。私は、退職時にAから「画像を編集可能な状態にして
渡してほしい。」と言われたのですが、これまでのAの態度に納得がいか
なかったで「あらためて自分で作って欲しい。」とのみ述べ、私が作成し
た画像の使用を承諾しませんでした。また、使用や改変について許可した
ことはありません。
⑵ その後、私は店や知人Aと関わらずに過ごしていたのですが、ふとSNS
をみたときに、SNSで私の画像が無断で投稿されていることに気づきまし
た。さらに、画像の中の一部には、改変も加えられていました。元の画像
を維持したまま、デザインを上乗せする形で使用しています。
⑶ Aの行為は、私のデザインの盗用・改変だと思うのですが、何か法的に
問題はないのでしょうか。
2.アドバイス
⑴ SNS画像が著作物に該当するか
著作権法では、著作物を「思想又は感情を創作的に表現したものであっ
て、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。」と定義して
います。
ご相談者様が作成したSNS画像は、全体として1つの「著作物」に該当
すると考えて問題ないでしょう。
⑵ 著作権とは
「著作権」とは、「著作物」を創作した者(「著作者」)に与えられ
る、自分が創作した著作物を無断でコピーされたり、インターネットで利
用されない権利です。
他人がその著作物を利用したいといったときは、権利が制限されている
いくつかの場合を除き、条件をつけて利用を許可したり、利用を拒否した
りできます。
⑶ 著作権に違反する行為(著作権侵害)
著作権者の許諾を得ずに著作物をコピーしたり、翻訳・加工したり、そ
れらをインターネット上で公開したり、譲渡・販売などをする行為をいい
ます。
Aの行為は著作権法違反(改変の部分は、著作者の「同一性保持権」の
侵害)となるか可能性があると思われます。
⑷ 例外:職務上著作
ただし、職務著作(法人著作)に該当する場合、会社が著作者になるた
め著作権侵害を主張することができません。
職務著作に該当するか否かは、
① 法人等の発意にもとづくこと
② 法人等の業務に従事する者が職務上作成するものであること
③ 法人等の名義の下に公表するものであること
④ 作成時における契約、就業規則その他に別段の定めがないこと
の要件を満たすか否かで判断します。
これらは、労働契約書、就業規則などに著作権の帰属に定めがある可能
性もありますので、これらの関係書類を見直す必要があるでしょう。
⑸ 著作権侵害に該当する場合の措置
著作権の侵害を受けた者は、侵害をした者に対し、次のような請求をす
ることができます。
・ 侵害行為の差止請求
・ 損害賠償の請求
・ 不当利得の返還請求
・ 名誉回復などの措置の請求
また、著作権侵害は犯罪であり、被害者である権利者が告訴することに
より侵害者を処罰してもらうことができます(親告罪。一部を除く)。著
作権、出版権、著作隣接権の侵害は、10年以下の懲役又は1000万円以下の
罰金、著作者人格権、実演家人格権の侵害などは、5年以下の懲役又は5
00万円以下の罰金などが定められています。
さらに、企業などの法人による侵害の場合(著作者人格権侵害、実演家
人格権侵害を除く。)は、3億円以下の罰金と定められています。
3.最後に
大切なアートなのに、法的トラブルに巻き込まれたくないですよね。
ガクソウヤでは、しっかりと手続を説明し、安心して取引を行えるよう
な環境を整えております。
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