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ヨーロッパ旅行記

西洋に興味を持ったのはいつだっただろう。最初の心当たりは恐らく中学校3年生。受験の合間に聴いていたショパンやチャイコフスキーだろうか。あとは、長崎のテーマパーク、ハウステンボスに行ったことだろうか。

高校では、バンドSEKAI NO OWARIにハマり、そのファンタジーな世界観に憧れを持った。世界史の授業があり、古代ローマやらフランス王朝のやたらの長いカタカナの名前を覚えていた。

そんなどこか遠い世界、本やテレビの世界に行けると知ったのは、周りが留学などであちこちに行っていることを聞いた時。

「いつかは行ってみたい」

実現性もないようなうわ言で、ぼんやり片付けていた自分がいた。


大学3年の秋の終わりに、Aという彼女ができた
。行動力と言うか、無鉄砲と言うか、やりたいことはどんどん言ってくるし、何か行動を起こすような人だ。Aは私とは違い、こう言った。

「いつかは“行く”。できれば大学生のうちに。」

卒業旅行でヨーロッパに行こうと約束したのは、今から2年前の3月だった。何かスイッチが入った音がした。

それからは、旅行資金を貯め、単位を十分に取り、いつでも行ける準備をした。復学後は六畳のワンルームで芸人の若手時代のような同棲生活を送り、さらに手に入れた資金でカナダやタイに行った。

スリなどの軽犯罪が多いとの情報を得て、対策を色々と講じた。ダイソーでチャックを開けられないものを買い、カメラや携帯はカラビナで鞄とくっつけた。

 あとは、カメラの調子が悪かったので、レンズとの接合部を綺麗にしたりした。試しに家の近くのスズメを撮ってみるとすごくいいかんじ。これなら大丈夫だろう。


そうして待ちに待ち望んだ旅行の前日に、私は風邪をひいた。幸い熱はないものの、喉の痛みと鼻水が止まらない。感染対策も数年前かのように徹底したのに。旅の始まりの日、今日は福岡に向かうだけなのだが、ワクワクより憂鬱の多い日になった。最近よく酔う高速バスに2人で乗り込み、雲ひとつない空の下を4時間かけて向かった。

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