プロレスの練習生だった話19

数ヶ月ぶりに実家に帰った。

駅には母が迎えにきた。
団体を辞めたことを改めて伝え、東京に行きたいと伝えた。
父親は仕事を辞めプロレス団体に行ったことに反対しており会話もほとんどしなかった。
むしろお互い避けており目を合わさず同じ空間に極力いなかった。

道場に忘れ物があり一度同期に連絡をし、送ってもらった。
迷惑そうだった。
それきり同期Yとは連絡をしていないが
無事にデビューし現在も現役を続けている。

それからは引っ越しや部屋探しなど諸々の計画を立てた。
次の団体は寮はなく週に3回練習に参加し、ジムに通い肉体づくりをするのだという。

新宿スポーツセンターともう一つの練習場に通える中間、小田急沿線に目星をつけた。

まだ未成年だったので部屋探しは母親も同行した。

成城学園の不動産屋や経堂の不動産屋を見てまわったが思うような場所が見つからない。
東京の家賃の相場を知らない田舎者だったのだ。
下北沢とかに住みたいと思っていたが予算だと木造アパートのボロ屋しか無理だった。
幸い下北沢の不動産屋に狛江市の不動産屋を紹介され、気に入ったので決めた。
審査に通るか不安だったがオーナーが夢を追う若者が好きという人らしくOKをもらえた。

ニトリで家具を揃え、引越しの日取りを決めた。
あっという間に引越しの日になった。
父親とは最後まで会話らしい会話をしなかった。

引越しには兄も来てくれ手伝ってくれた。
なんとか住める状態になり新団体の代表に連絡をした。

今沖縄に修行に来ているので8月中旬頃に参加してほしい。と言われた。
先に言ってくれたらもっと静岡にいたのに。そんなことも感じた。
それまでバイトを探したりした。
なかなかバイトは受からなかった。
土地勘もなく、バイトもしたことがなく勝手がわからなかった。
約束した日になり、詳細を確認したが
今週の練習はなくなったと言われた。

早く練習に参加したかった。

プロレスだけしか当てもなく、
所属するコミュニティも持たないので東京の生活は心細さから始まった。

ようやく練習に参加する日になり
新宿スポーツセンターへ行った。
500円払い施設利用券を買う。
大学生のサークルが引き締め合う中でポツンと数人の集団がいたので駆け寄る。
面接をした選手と男2人女1人いた。
女子の練習生は自分より少し年上だった。
男子は学プロ経験者と40くらいの人もいた。
また、フリーの女子レスラーも参加していた。

軽く挨拶を済ませた。
練習生候補として今日からお世話になります。
と告げた。
アマレス仕込みのタックルや受け身を行った。
タックルは初めてだったのでなかなかコツを掴むのが難しかった。

正直練習は余裕だった。
前の団体でスクワットを嫌というほどやってきたので当たり前だった。

受け身はリングではないのでひどく振動が伝わっていたかった。

当時は性格も悪かったのか前の団体を移籍したのだから
周りより早くデビューする気で溢れていた。



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