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暇な時に見上げた空が茜色だった「プライド勇者」の話

ある村に凶悪なモンスターが現れました。
孤独な1人の男性が大切にしていたものをそのモンスターが壊してしまいました。

大切なものを壊された男性はモンスターとの闘いに挑むことを決意しました。
村の人々は賛同し、惜しみなく彼を支援しました。
彼は村人たちの期待を一身に背負いモンスターに挑んだのです。
なんと彼はモンスターに勝利しました。
そしてモンスターは姿を消したのです。

しかし彼はなぜか人々からあまり称賛はされませんでした。
モンスターを倒したのは彼なのに、彼はたくさんの支援を受けたために、倒して当然と思われてしまったのかもしれません。

彼は思いました。
私が勇者なのに思ったとおりの称賛をされないのはなぜだ?
そうだ、私が強すぎるからだ。
支援してくれる村人はまだまだいるぞ!
私を称えないやつらはみんなモンスターの仲間じゃないか!
奴らはモンスターだから私を称えないのだ。
モンスターでなければ私を讃えて当然じゃないか!


そして勇者は村人たちに訴えました。
あいつもこいつもモンスターだ!
まだたくさんのモンスターがいるぞ!
私が倒すぞ!

支援者は感動して応援しました。
勇者は新たなモンスターを見つけて倒そうと挑みました。
その時、別のモンスター退治に向かう勇敢な人が現れて、勇者にお願いしました。
たくさんの聴衆にモンスター退治の話を聞かせてください。
この世にいるモンスターを退治するためにあなたの話が必要です。


勇者は喜んで伝えようと、観衆の前に立とうとしましたが、勇敢な人はそれを静止したのです。
勇者はたいそう怒りました。
なぜ私が直接伝えてはいけない?
偉業を成し遂げたのは私だぞ!
私を馬鹿にしているのか!


彼のプライドが許さなかったのです。
プライドを傷つけられた勇者は村人たちにまた訴えました。
勇敢な人を調べてみたら奴は実はモンスターだった!
私はあのモンスターを退治するぞ!

支援者から与えられた武具を纏ってモンスターと対峙する勇者。
しかしモンスターだと思っていた敵はモンスターでもなんでもありませんでした。
それを見ていた聴衆は気付きました。
彼は勇者でもなんでもない。
最初に倒したモンスター以外は彼がプライドのためにでっち上げた普通の人なのだと。


村人たちは勇者だった彼を嘲笑い1人また1人と離れていきました。
勇者だった彼は残った村人たちに叫び続けたのです。
私は正しいのだ。
モンスターに立ち向かえるのは私だけだぞ!

しかしもう彼の話を聞いてくれる人はほとんどいません。
彼はまた孤独になりました。
プライドが高すぎる彼は裏切られたと思ってしまい、他者を許容できなかったのです。

勇者だったその男が孤独になったのはなぜか?
それは彼自身がモンスターだったからです。

THE END


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