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仏教と街づくりへの投資―リート投信を中心に―

近年、メタバースという仮想電子空間が話題になっている。コロナ禍ということもあり、僧侶の中には、こういった技術を使って、仏教を広めていこうという試みもあるようである。

芸術の分野ではNFTの技術などに興味を持つアーティストも多い。インターネット社会において、権利を守るためには必要だ―という考えである。

個人的に言えば、寺院の活動をメタバースに移すという取り組みは、いまいち信仰にどのような結果をもたらすのか明示されておらず、投入費用などを含めると、今のところあまり魅力には思わないが、こういった取り組みに関心を持つことは決して悪いことではないだろう。


さて、筆者にとって、仏教事業は人間との関わりの中で発生しているという認識にたっている。したがって、町づくりをしていくことも、教化の一つの方法であると考えているのである。

たまたま某リート投信法人のポートフォリオを見ていたのだが、寺院から一般借地権を借り入れ、ビルを建てている事業者を発見した。

リート投信とは、不動産を証券化し、複数の人たちによって、1つの不動産に投資するものである。また、投信法人は不動産の保有のみの機能を持っていて、運用は別の会社に任せるものである。これにより高い収益性と安定性を持たせるとともに、流動性も持たせるものなのだろう。

別の投資法人であるが、六本木ヒルズを持つ森一族は、街づくりを重視していたという。人が住む町には、文化が必要であるとして、一体化を説いた結果、最も収益が出るであろうビルの最上階に、美術館を建てたことは聞いたことがあるのではないだろうか。他にも、祭りといった無形文化も大切にしている。人が住むところに文化ありというものを貫いているのである。

別の投資法人では、地方創生を大切にするものもある。地方の不動産を中心に投資し、地方を盛り立てていこうという考えである。

いずれにせよ、不動産の価値をあげるには、町づくりとセットで付加価値をつけていくということが必須であり、それにより、高い入居率をおこし、安定的な配当を出すことに繋がるのだろう。

こうして考えていくと、寺院と不動産事業者というのは、互いに共通の目的を有している。それは、住みやすい街づくりをするということである。そしてそのことは文化継承へと繋がっていくのである。


東京にはおそらく、土地を保有している寺院がたくさんあるのだろう。宗教法人の土地の固定資産税は非課税であるし(もちろん、貸し付ければ収益事業になり法人税が課税されるが)、所有者が寺院であるがゆえ、第三者への売買の可能性も少なく、借主も安定的に借りられるだろう。

こういった不動産を社会に提供していく。そして、同時に事業者とともに文化を提供することで、住みやすい街づくりの相乗効果を引き出せるのではないだろうか。

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