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プロレス超人列伝第25回「マイケル・コール」

この連載では多くのプロレスラーのその背景について説明してきた。

だがプロレスに関わるのは何もプロレスラーだけではない、アナウンサーや解説、レスラーを志す者の途中で夢破れたグリーンボーイ、設営スタッフ、売店のお姉さんお兄さん、親会社の社員、放送するテレビのスタッフ…まあ実に多い。

彼らの人生が寄り合い集まったモノ、それがプロレスなのだ。

というわけで今回は一歩違い、プロレスの実況アナの人生について振り返っていきたい。

ところで、プロレスの実況アナウンサーといえば日本ではその団体を放送しているテレビ局のアナウンサーがなることが多い。

古舘伊知郎や辻よしなりなどがその典型例だ。

しかし、アメリカではその団体そのものでアナウンサーを雇っていることがしばしばある。

今回紹介するマイケル・コールもその一人だ。

彼の名前はマイケル・ショーン・クルサード、WWEでは「マイケル・コール」という名前で知られている。

WWEで20年以上にわたり実況を務めるマイケルは選手を抜かせば、その最盛期から常に団体を見守り続けていた文字通りの「WWEの守護神」といってもおかしくはないだろう。

さらに驚くが、このマイケルはWWEで20年以上働いているが休んだことは3日しかないのだ。

色んなタフガイが世界中から集まるWWEではあるが、本当にタフなのはこのマイケル・コールであるかもしれない。

そんな隠されたタフガイのコールは元々、CBSに入社をしていた。

1993年に入社した彼の初仕事は教会でおきた大火災のレポートであった。

このころから彼は度胸が据わっていたのだ。

その翌年、1994年に起きたサラエボ紛争では身を切りながら半年以上も戦争の状況を伝えていた。

入社して1年で紛争地域のレポートである、どんなレスラーでもこんな状況に耐えられるとは思えない。

この時点から彼は肝が据わっていたのだ。

その翌年は連邦爆破テロ事件の取材を担当。

さらにその翌年は後に大統領になるビル・クリントンのバンキシャとして活躍して、大統領になるまでの彼を追い続けていた。

そして、1997年そんな彼の才能を目にかけたWWFは彼をスカウト。

しばらくはバックステージのアナウンサーとして活躍して、ショーン・マイケルズやザ・ロックにバカにされる優男という設定までついていた。

その状況は1999年まで続いた。

恥辱ともいえるような行為を受けてもコールはビクともしなかった。

サラエボの紛争があったのだから、プロレスラーなど相手ではなかったのだ。

見た目をいくら装ってもあいつらは所詮プロレスラーでしかない、本当のタフガイは自分であるという自負が恐らくあったのかもしれない。

1999年に、コールは当時から始まったWWFの新番組である「スマックダウン」の担当アナウンサーとなった。

それ以降現在に至るまで彼はWWEでアナウンス業務を続けている。

そんな彼だが、実はやらかしてしまった過去があったりする。

2010年、NXTの兼任アナウンサーでもあったマイケルは突如としてNXTの方針に反対してヒールターンを行ってしまう。

ここで実況アナウンサーだけどヒールという矛盾したキャラクターが誕生した。

一言だけつっこむと、解説員の中でヒールをヨイショしてベビーフェイスをズタボロに貶すヒール解説員は存在するがヒールアナウンサーとなるとなかなか存在していなかった。

このヒールアナウンサーギミックはとんだ大失敗で、ファンの中には本気のブーイングをコールにするものもいた。

解説員だったジェリー・ローラーと誰も得しない抗争を行うこともあった。


そんな彼の転機がとうとう訪れることとなったのだ。


2012年、長い間相棒としてそばにいたジェリー・ローラーが番組中に突如心臓発作を起こしたのだ。

この直前に60以上になるはずのローラーは老体に鞭を打ち、試合を行っていた。

この試合での過労が重なりローラーは倒れたのだ。

そんな中、隣にいたマイケルは焦らずわめかず淡々と実況をした。


どんなハプニングが起こっても番組を続けなくてはいけない。

コールにはそれがわかっていた。

なぜなら、それこそ「ジャーナリズム」であるからだ。


そして、プログラムが終了後コールはカメラマンにその想いをぶちまけた。


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「今、私の横に10年以上の付き合いがある友人であり相棒のジェリー・ローラーが倒れました。私と彼には『抗争』があったことは皆様ご存知でしょう。この番組は『エンターテイメント』ですが、アクシデントは『エンターテイメント』ではありません。」


感情を抑えながら語るマイケルのその姿に全米のファンは改めて感動した。

ここでマイケル・コールはその不名誉なヒールキャリアをとうとう終わらせることに成功したのだった。

観客はマイケルに再び声援を飛ばすようになった。

その後、ジェリーは回復して再びマイケル・コールとの解説タッグを組むこととなった。

そして、現在マイケル・コールはWWEの実況担当としてそのトーク能力を発揮している。

世界中からタフな男が集まるWWE、その中で一番のタフガイは実はこのマイケル・コールに他ならないだろう。





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