見出し画像

どうしてお酒×料理を提供したいのだろう…その理由、私の場合。

決意表明のような、愚痴のような、他の方にとってはどうでもいいようなことだろうけど、書いておきたいと思いました。コロナ禍においての雑感の記録のようなものとして。お酒と料理と、生産者さんとお客さんを愛する一料理人の呟きです。

お酒類提供禁止要請により、泣く泣く、またもや夜の営業をお休みしています。また乾杯しましょう。頑張ってください。そう言って、常連さん達は帰って行きました。

(引き続き、ランチ定食、テイクアウトお弁当は全力でお作りしております。)

画像2


コロナ禍で大変な想いをされてる方も大勢いらっしゃることもわかります。だから、収束を願って、ウチは粛々と要請に従います。協力金はなかなか入りませんし、厳しいのですが。


ここ数ヶ月、内心、東京で料理人としてやっている意味がよくわからなくなって、お酒を出す飲食店は全否定されたような気になって、すごく気落ちしていました。前を向こうにも、気持ちを盛り上げようにも、はしごを外されたような気になって。(少し前まで、和食が世界遺産になったり、地方創生が盛り上がったり、復興応援しようってなっていたじゃない、と。)

でも、

考えても、考えても、やっぱり美味しいお酒と料理をお出ししたいし、それで和んでくださる方がいればという願いはどうしようもなく、諦められないのです。

今は、素晴らしい生産者さん、漁師さん、蔵元さんがいても、その食材を使いたいのに張り切って仕入れられません。卸業者さんは大変そうです。

それが悔しい。

だから、やっぱり、負けねーぞー、復活したら盛り上げるぞーと思っています。

画像1

何故、お酒に関わりたいのか


うちの曽祖父は南部杜氏だったらしいし(戦前の福島の大木大吉本店)、故郷岩手花巻石鳥谷は『南部杜氏の里』であるし(南部杜氏協会がある)、祖父は齢九十にして、現役の元気な酒っこ飲みです(しかも日本酒限定の)。ですから、自然とお酒(特に日本酒)は、私の生活やルーツに関わる存在だと思って育ちました。

石鳥谷には、川村酒造店さんの『酉与右衛門(よえもん)』というとびきり美味しい日本酒があります。石鳥谷のお酒に関わっていたい、岩手の食材と共にお出ししていきたいという気持ちはどうしても湧いてきて仕方がないのです。(故郷を離れた後ろめたさも、東日本大震災を機に気付いた故郷の素晴らしさもあって。)

さらに、全国には素敵な酒蔵さんの美味しいお酒はいっぱいあって、実際に色んな蔵元さんにお会いして、それぞれのそのお酒に対する真摯な姿勢や誇りを見せていただきました。尊敬出来る酒屋さんとの出会いもありました。ウチの店(郷酒)では、その蔵元さん方の渾身の一杯をご紹介したいし、是非じっくり楽しんでいただきたいと思っています。

ですから、定食のみの営業ではなく、やはりお酒にもこだわってお出ししたいのです。

画像4

料理人を目指した理由

 大学まで出させてもらったにもかかわらず、なぜか飲食業に従事したのは、キッチンバイトをしているうちに、日本のお酒や日本の食文化にどれほどの歴史があって、熱くて愛がこもってて素晴らしいか、酒蔵さんや農家さんや漁師さんはどれだけ魂をこめて、食材を提供していらっしゃるか、という現実を知ったからです。

うちも実家は農家です。実家を離れ、生産者側でない今は、料理人として、生産者さん達の素晴らしい食材、想いを精一杯、出来る形で伝えていきたいと思いました。

生産者さん達がなかなか儲かる仕事でもないのに、苦労しながらもこだわって素晴らしい食材、商品を提供してくださるのは、その真心、愛、によるもの!!です。だからこそ、生産者さん達の熱い想いを繋ぎたいんです。

世の中には、素晴らしい天才料理人やシェフがたくさんいらっしゃいます。料理を芸術の域まで高めて、お客さんにも生産者さんにも一生に一度の感動を与えるくらいのすごい料理を作られる方だっていらっしゃいます。私にはそんなすごい力はないけど、料理人としてささやかながら、神保町の片隅で発信し続けていきたい、生産者さんとお客さんを繋ぎたい、口福を届けたい、と願っています。『ほっと力を抜いてほぐれる瞬間』を演出出来たら、その食べてくれる人の顔が見れたら、私もとても幸せですし、今や、天職だと思い、そんな仕事が出来るありがたさも感じています。

流通が発達した今、ワサワサの野菜、ピチピチの魚介類、旨味を増したジューシーなお肉は、産直サイトも進化していますし、生産者さんから直接お取り寄せ出来ますよね?是非、おこもり生活のお供にして欲しいとも思っています!
食材を触り、生産者さんと交流するのは癒し効果があるし、旬のものを食べるのは健康効果もありますから。

画像5

↑『東北食べる通信』熱い生産者さん達の作った食材付きの情報誌。食べ物の裏側のストーリーを知ることができます。

どうしてお酒×料理を提供したいのか

お酒もそれだけで美味しいし、料理もそのままで美味しくできるなら、定食やテイクアウトでもいいじゃない、と思われる方もいらっしゃると思います。別にそのこだわりのお酒や食材を買って家で飲めばいいじゃん、とも思われているだろうし、飲まない人から見たら、外で飲む人は、ただ飲んで酔って騒ぎたいだけだろう、と。

ただ飲んで酔いたい人、騒ぎたい人がいるのも事実なので、提供する側もある程度の基準や威厳を持って、お出ししなきゃいけないとは思います。飲む人をダメにするのは店の責任もありますから。

ただ飲んで騒いで酔って、という飲み方をしないで、しっとりと嗜んでもらうための"お酒×料理の場"なんです。

料理で胃にコーティングをすることでお酒の吸収スピードを遅くします。酔いがゆっくりになりじっくり味わえます。

それから、ワインのマリアージュのように、日本酒にも焼酎にもマリアージュ、料理との好相性があります。料理と合わせていただくことでふくらむ旨味、味の変化による驚き、それぞれ単体でも美味しいのに、合わさった時の相乗効果で生まれる味の出会いの奇跡はお酒を飲む時のこの上ない喜びですよね。

それは自分で作ったおつまみでもいいのですが、素敵な空間で、誰かが心を込めて作り、サービスしてくださるもので味わうごちそう感はまた格別だと思うのです。どんなに料理が好きでも、いつもいつも自分で作っている人は時には疲れたり飽きてしまったりということもあるでしょう。私自身が外食でそんな感動体験をさせていただいて、本当に幸福感を味わえることがあるので、今度は届ける側でありたいと思います。

画像6

この先もこの仕事で生きていく

この1年半、状況を鑑みて、言いたいことを我慢して心にフタをしていたら、感性も枯れてきてしまったような気がしていました。営業を制限されると何を作りたいかもわからなくなりました。修業中の辛い時だってさえ、どんな時でも料理をすることだけはやっぱり嫌になることはなかったのに、最近、作りたい欲を我慢していたら、心ががらんどうになったような気がしました。でも、もう、下を向きません。もう、どう考えても、どうしようもなくこの仕事が好きなので。お酒と料理を楽しみ、会話を楽しみ、ほっこり和める場の力を信じているので。

重ね重ねになりますが、ランチは営業しております!!!!

諸々落ち着いたら、またお客さんいっぱいきたら良いな。笑顔あふれて、お酒と料理を楽しんで、そんな風景が見れたらいいな。

画像6

↑大船渡の若手漁師さんを囲んでの三陸の海の幸を楽しむ会から。先付のいくらのピンポン漬け。(いくらがピンポン球みたいにパンパンになっていました。) 美味い海の宝物と旨いお酒をみんなで堪能しました。食べる喜びを生産者さんとシェアする幸せ⭐︎


暑苦しい個人的な想いでした。失礼いたしました。次からはまた素材を楽しむおかず・酒の肴・魚介料理レシピ紹介に戻ります♫

こんな状況を予想もしなかった2019年。



おいでくださりありがとうございます。 不器用な料理人、たぬき女将が季節の食材、料理、方言にまつわるよもやま話を綴っています。おまけレシピもありますよ。