マスクイケメンという言葉がある。

ゲイアプリでも、マスク画像を使っている人が増えた。

実際、マスクイケメンという言葉って、マスクとったら実はブサイクでしたという現象ではなくて、勝手にマスク部分を都合よく想像したせいで勝手に失望するという人間の性を示す言葉として使う方が正しいんじゃないかと思う。

まあ人間って、都合のいい生き物ですからネ。

ここ最近、アプリでアプローチされることが増えた。

写真もプロフも変えていないので、理由は全然分からない。

近場の方とは予定が合えばとりあえず会う。
毎日のように見ず知らずの人間とマッチして、メッセして、リアルするこの感覚。
随分世間とズレているのかなと思ったりする。

出会いの数が多ければ、それが実らない数も多くなる。
選り好みしているわけではないと思っているが、出会いが手軽な分、捨てられるのも一瞬だ。

詳細は割愛せざるを得ないが、直近で会った2人の男とは、こちらが驚くほどの軽さで切られた。
仲良くなれそうだと判断するのも、それが叶わないと判断するのも随分早過ぎる気がする。

アプリでマッチした段階で、期待値が高まり過ぎているのかもしれない。
会ってもいない段階から、こんな人だろうと自分の想像で相手のイメージを補ってしまう。
そのイメージは、大方自分に都合よく補ってしまうのだろうと思う。

そして、自分の作り上げたイメージと違った場合に、関係を途絶させることも簡単だ。
そこに、少し様子を見たり、話してみる余地は設けられない。
たぶん2人とも、僕が相手のイメージに合っていなかったんだろうと思う。

その上、僕は、そんな時に殊勝な態度で相手に合わせるタイプではなく、そんな勝手なイメージは困るから、自分の素を出して、お付き合い出来るかを見極めるタイプなのだ。

2人の男からすれば、僕はアプリイケメンだったのかもしれない。

少し前、テレビやネットで、女性のすっぴんを見せることが流行った時があった。

女性のメイク技術の高さに感心した一方で、化粧を落とせば別人のようになる女性を見て、ノンケ男は失望しないのか？
ゲイの僕はそう思っていた。

ノンケの後輩に聞いたところ、すっぴんを見る段階ではもうある程度以上の好意を持っているから、すっぴんを見ただけで失望なんてしないものらしい。

コスパが重視される世の中で、どんどん即物的な出会いが発達して、出会いというものが可視化され過ぎたような気がする。

昔から、お見合い、合コンなんてものはあったけど、出会いを意識するような場面は限られていたように思うし、そんな場面でもナシだから終わり、とはならなかった。

今は、アプリのように、はい！ここが出会いの場！イエスかノーか決めて！とすぐ選択を迫られる。
マッチすると、全てが叶いそうな気分にさせられる。

可視化され過ぎたコンテンツに、出会いというものに期待やときめきを抱いてしまう人間の心が追いついていないのかもしれない。

手痛いリアルに遭遇しても、僕は、懲りずに出会いを探しつづける気がする。
出会いは勝ち負けではないのだが、可視化される部分は優越感という服を着た実質的な勝ち負けで、その勝負って何？なんて思いながら、土俵を降りることはしないと思う。

最近、Youtubeを見ていたら、急にドラマ「やまとなでしこ」がサジェストされた。
僕、一応やまとなでしこリアル世代なんですよ。

松嶋菜々子演じる桜子は、自分の幸せの尺度をお金という一択に据えていて、お金についてはとことん追求するが、それ以外は屁にも思っていなかったりする。

女が一番高く売れるのは27、と豪語して合コン三昧だけど、自分で設定したそのリミットは頑として受け入れている。

端から見ると一見欲張りなように見えるが、自分が幸せになる必要条件を分かっていて、それ以外は求めない所が、高飛車ではなくチャーミングに見える秘訣なのかもしれない。

人ってやっぱり欲張りで、自分が満足するラインを不動にするなんて出来ないものだ。

それが人を成長させるのだろうけど、僕はいつまでこんなリアルをし続けるんだろうかな、と思ったりする。

職場の同僚を見ていると、案外クローズドな世界で生きているんだなと思う。
話に上がるのは、同僚か同級生の話ばかり。

僕は、何通かメッセだけ交わした男と、飯や風呂に行く。

僕がそんなことをしているとは思われていないように、皆んなプライベートでは色々しているのだろうか。
いや、男って結構ざっくばらんにオープンだったりする。
そのあっさり感が可愛いなと思えたりする時もある。

リアルする予定がある時の、退勤時の足取りの軽さが好きだ。
そんな足取りの軽さを感じる時、やっぱりゲイの人生で良かったなと僕は思う。