短編小説『プロレス舐めんなっ!!……からの……??』

「プロレス」を「八百長」「出来レース」の意味で使った野党女性議員の元に抗議に言ったプロレスラー。
だが、そこで起きたのは……?
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「一体、何ですか、この発言は?」
 と言っても、そもそも、正直言って、どんな趣旨の発言なのか、俺もよく理解してる訳では無い。
 自分で言うのも何だが……。
 ともかく、この女性メス議員が「プロレス」を「八百長」「出来レース」の意味に使いやがった事だけは確かだ。
 そんな生意気なメスはわからせなければならない。
 それこそが男としての義務だ。
 ましてや俺は、プロレスラーだ。
 プロレスラーはヤクザや軍隊や警察に似ている点が有る。
 舐められた時点で戦力の半分を失なったも同じだ。
 プロレスを舐めた奴が居たなら、失なわれた戦力を取り戻す為に、即刻、そいつに「わからせ」を決行せねばならない。
「でも、プロレスって所詮は八百長でしょ?」
 対応したのは、問題の女性メス議員本人。
 そして、そのメスは、ニコニコとした顔で、そんな事を言いやがった。
「プロレスが八百長だってエビデンスが有るのかよッ⁉ エビデンス出せ、エビデンスっ‼」
 女性メス議員の顔には……ニコニコとした……でも、どこか嫌な感じの笑みが貼りついたままだった。
 へひい……。
 その笑みを見ている内に……夢○獏が八〇年代か九〇年代に書いてた格闘小説の悪役がやるような笑い声が聞こえたような気がした。
「例えば……そうですね、男性プロレスラーである貴方が、女性、それも自分の半分以下の体重しか無い私と戦って苦戦する。そうなったら、プロレスは八百長、プロレスラーなんて少しも強くないって証拠ですよね♥」
「お……おい、あんた、本気で言ってんのかよ? あんたも一応、政治家だろ?」
「ええ、吐いた唾は飲む事は出来ないのは判ってます。とりあえず、これにサインしていただけますか?」
 そう言って出された書類には……。
『乙と甲が____年__月__日に練習試合を行なったが、これは、あくまでも双方合意のものであり、片方または双方が如何なる怪我を負ったとしても、あらかじめ両者納得の上のものであり、単なる練習試合中の事故であると見做す』
 そして……奴は、日付欄に今日の日付を……乙の横に自分の名前を書き込み……よりにもよって実印を押しやがった。
「どうぞ。拇印で結構です」
「いいのかよ?」
「ええ……」
 俺は、出されたボールペンで自分の名前を書き……。
「ところで、いつ始めるんだ?」
「もう始まってますよ」
 ズンっ‼
 まだ、俺は指に付いた朱肉を拭き取り終ってさえいなかった。
 奴の指が俺の鼻の穴に入る。
 両方の鼻の穴だ。
 奴の爪が、俺の鼻の穴の中をガリガリと削る。
 気付いた時、俺は思わず鼻を押さえながら後退していた。
「て……てめえ……」
 怒りに取り憑かれた者は冷静さを失なう……そう思い込んでる奴は、本気で戦った事が無い奴だ。
 怒りは時として、脳味噌の中から恐怖や混乱を追い出してくれる。
 俺は、怒りを呼び起す事で、冷静さを取り戻した……つもりだった。
 奴は立ち上り……両手を広げた。
「おや……脚本ブック無しの本気シュートの試合は初めてですか? じゃあ、私が貴方の童貞を奪った相手って事になりますね」
 俺は……奴の構えとも言えぬ構えを見て気付くべきだった。
 その姿が「刃○」の範○○次郎にそっくりだった事に……。
「不意打ちで勝ったと……あれ?」
 俺は……両手で奴の胸倉を掴んだつもりだった。
 そう……掴んだつもり……だが、次の瞬間、俺の耳には他人事のように轟音が響いた。
 握力を失なった俺の手には……奴が着ていたブラウスの切れ端……。
 俺は床に叩き付けられていて……握力のかなめである小指は両方とも折れていた。
「武術家の体を不用意に掴む。それが『プロレス』は所詮『プロレス』に過ぎない理由なんだよ。へけけけけ……」

 ルールが無いのがルール。
 そんな無茶苦茶な試合とも呼べぬ試合が終った時、俺は多くのモノを失なっていた。
 顔への掌底突きのついでに、奴は俺の目に指を入れてきた。
 何度目かに倒れた時、奴は、俺の顔を踏み付け、何本もの歯が折れた。
 俺の生殖能力キンタマは無惨にも2つとも蹴り潰された。
 前蹴りを放てば、カウンターで軸足の膝に関節蹴りが入り……ああ、くそ……この膝は……もう二度と使い物になるまい。いや、二度と使い物にならないのは……この膝だけじゃないが。
 ベリベリベリベリベリ。
 血で視界を塞がれた俺には……何の音か判らない。
 そして……重い何かが、俺のすぐそばに落ちる音。
「さて、道場破りは戸板に乗せて外に出すのが昔からの作法ですよね♥」
 えっ?
 ここって何かの道場だったっけ? あと、俺、道場破りに来たつもり無いんですけど……。

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