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AED使えますか? キョルギと心臓震盪

「迷わずAED、迷ってもAED」

10年以上前に韓国の高校テコンドー部でキョルギ中に胴防具への蹴りが原因で生徒が亡くなる事故が発生してしまったことがあります。

テコンドーのキョルギをしていた若者が亡くなる切ない事故が江原道高城で発生した。

江原高城警察署によると、去る27日午後4時頃、テコンドー訓練室でキョルギをしていたキム某(16)君が相手選手の蹴りを胴体に受けたのちに倒れ、病院に移ったが死亡した。

警察の調査によると、金君は仁川高校の生徒とキョルギに入ってからわずか20余秒で蹴りを胴体に受けて倒れ、意識を失い、現場で救急隊の人工呼吸を実施した後、病院に移された。

冬季休暇訓練中だったキム君は防具など安全装具もすべて備えた状態で不意の切ない事故にあった。

 以降、この事故に関する続報がないので原因は明らかではないのですが、スポーツ事故による突然死の原因の一つとして「心臓震盪」というものがあります。(※:以前、「ゼロから学ぶ~~」にも書きましたが、埋もれてしまったので別の記事として書きます)

 心臓震盪とは、「ボールがぶつかる、身体がぶつかるなど、外力による衝撃が心臓に加わり、心臓に致死的不整脈が発生し、全身に血液を送るポンプ機能が失われる病態」のことです。様々な競技で実際にジュニアアスリートの死亡事故も起きています。心臓震盪の発生頻度は高いものではありませんが、健康な青少年に心臓突然死をもたらす病態であることから、テコンドーを子供に学ばせる親御さんは、心臓震盪について知っておくべきだと思います。

 心臓震盪はテコンドーなどの格闘技においては中段への打撃で発生するリスクがあります。(参考動画:空手イベントにおける突然の心停止 ※ショッキングな内容を含みます。閲覧には注意してください)

 強固な電子防具を使用しているテコンドーであっても、死亡事故は発生しています。例えば、2014年のルクソールオープンにおいて、若干21歳のセイタン・アクバリク(トルコ)選手が対戦相手から中段のパンチをもらった直後に倒れ、緊急搬送されるも搬送先で命を落としています(参考動画:Turkish Athlete Seyithan Akbalik dies at Luxor Open, Egypt on Feb 15th 2014 ※ショッキングな内容を含みます。閲覧には注意してください)。また、動画を見ると、AEDの到着まで1分以上経過している様子が分かります。中段への打撃で倒れるようなことがあった場合に、それも悶絶するような倒れ方ではなく脳震盪のように意識が飛ぶような倒れ方であった場合には一刻も早くAEDを持ってくる必要があります。

 下のグラフは心停止となってから電気ショックまでの時間と救命率を示したものです。電気ショックが1分遅れるごとに救命率は10%ずつ低下します。
救急隊や医師を待っていては命を救うことはできません。 119番通報をしてから救急車が到着するまでの平均時間は8.9分。突然の心停止を救うことができるのは、その場に居合わせた「あなた」しかいないのです。(日本AED財団ホームページより抜粋)

という訳で、近年は中段パンチの使用率も増えているWTテコンドーにおいて、救えたはずの命を救えない事故が起きてしまうことが未来永劫無いとは言い切れません。幸い、体育館など公共施設には必ずAEDが備え付けられていますから、自身のお子様の練習場所でAEDがどこにあるのかを確認し、万が一の時にはいち早く対応できるように心構えを作っておくことが大切だと思います。

「心臓震とうから子供を救う会」のホームページに記載された事例を見ても、AEDが使用されずに亡くなった例が複数見られます。

15歳男子、中学校クラス対抗サッカー大会でゴールキーパーをしていたが、胸にボールを受けた約10秒後に倒れた。心肺停止状態で心肺蘇生が実施されたが、AEDは設置されておらず使用されなかった。病院に搬送されたが9日後に死亡。心臓疾患の既往はなし。(2007年3月12日 愛媛県西条市立西条北中学校)新聞報道

中学3年生(15歳)男子、高校生との野球の練習中、2塁の守備で3塁手からの送球を取りそこね胸にボールを受けた(硬式ボール)。ボールを拾い送球後に倒れた。トレーナーが胸骨圧迫を施行、救急要請した。AEDは設置されていたが、救急隊が現場到着後にAEDが現場に届いたため使用されなかった。病院に搬送されたが7時間後には死亡した。(2007年9月1日 大阪府富田林市 PL学園高校)新聞報道

心臓震とうから子供を救う会

最後に、とはいえ専門家の意見が一番なので、こちらの記事をぜひともご一読いただけたらと思います。