見出し画像

「古代ギリシアがんちく図鑑」

芝崎みゆき著「古代ギリシアがんちく図鑑」 2006年 バジリコ株式会社刊


本のご紹介。古代ギリシア神話の入門書としてこれお勧めです。僕のギリシャ神話に関する知識の根幹を支えていただいている一冊です!(笑)

石膏像を取り扱う身としては、ギリシャ神話とか、エジプト文明に関する知識は当然必須のものなんですけど、こういった文明の全体像って、あれこれ書籍をめくってみてもなかなか自分の体の中にしみこんでこないんです。細かい地名・人物名に翻弄されちゃったり、長い長い歴史の変遷と、山のようなエピソードについていけなかったり。そんなときは芝崎先生の出番です!

僕は通して3回は読んでるかな…。その後も、何か疑問があるたびにパラパラとめくる頼りがいのある一冊です。

内容は、
①ギリシア神話のメジャーエピソードを紹介
②古代ギリシア史をざっくりと解説
③著者のギリシア旅行記(珍道中がものすごく面白い)
という構成。

マンガのようなコマ割りに、ゆるさ全開のイラストを交えたスタイルなのでどんどん読み進められますし、文章がとにかく面白い。そもそもギリシア神話はストーリー的には支離滅裂なものが多く、生真面目に捉えようとすると???の連続になりがちです。この本では、そういった面に対しても「なんで弟はしがない漁師なのに兄は王なのかは不明(ペルセウスの冒険譚のエピソード)」みたいなツッコミがガンガン入って笑いを誘います。

ところがです。この本は読み始めればすぐに分かるんだけど、なかなか進まない。親しみ易い雰囲気とは裏腹に、一ページに驚くほどの情報が凝縮されています。そもそも文章の量が半端ない。基本的に文字で埋め尽くしたページの隙間に、理解を助けるためにどうしても必要だったイラストを何とか捻じ込んだ感じ。そのせめぎ合いが素晴らしい。

もう一つ特徴的なのが、文章部分を全部手書きしてること。これが独特の雰囲気を生み出していてとっても魅力的なんです。原稿段階で一度全て活字で作成して、それを後から手書きでトレースする手法だそうです。実際に書籍を見てもらえれば分かりますが、これは驚異的な作業量!古代ギリシアに関する膨大な情報収集と、この(超めんどくさそうな)執筆スタイルのために費やされた時間を想像すると気が遠くなります。

同じスタイルで2004年に「古代エジプトうんちく図鑑」が先行して出版されていて、2006年の「古代ギリシアがんちく図鑑」は芝崎先生の2冊目の著書です。エジプトの方もおすすめです。
(2010年には、マヤ・アステカ本を2冊同時に出版)

根強いファンがたくさんいらっしゃるようで、初版からずいぶん時間が経過した2014年頃の書店でも平積みにされていました。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?