げかい

大学院生

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最近の記事

星の可愛さとマッチョスイーツ

夜空に惹かれる理由がずっと分からずにいた。 星のぎゅっとした堪らなさ、儚さ、可愛さで表現される魅力がなんなのかを説明することが難しい。 一つの説はミニチュアに感じるぎゅっとした凝縮感のなんとも言えない気持ちよさが星にもあるという説。 ミニチュアには空から生活を眺めているような自由な感覚、浮遊感がある。 大地から星空を見上げることは、 空から街を見下ろすことをひっくり返した状態と同じ心象を与えるのかもしれない。 ミニチュアと星々の堪らなさが一緒だとして、 その堪らなさは

    • 博士課程に行くべきか

      博士課程に進学するか迷っている。 研究は続けたい。 今の研究の先に携わっていたい。 自然界のシステムを社会に実装して遊んでみたい。 今の研究の仮説が証明できたら業界を超えて面白い話になると思う。 でも証明できなかったら、研究を続けていけるほどの好奇心が湧くようなテーマを打ち出せるか分からない。 なら就活をするべきか。 経済的に余裕があるからこその安心と冒険心に憧れることもある。 処理能力をドーパミンで補ったきただけだから、たぶん会社で働いても同じように悩むと思う。自分

      • ミカンに支配されている

        みかんをずっと一粒ずつ三日月の形に割いてから食べなければならない面倒な食べ物だと思っていた。 去年か一昨年ぐらいにそんなことせず二,三房の塊で食べてもいいことに気がつき、今月ついに丸齧りしてもいいことをふと悟った。 実がぱつぱつに詰まったみかんは歯の入れどころを間違えると果汁がぶしゃあするのでどうせ口に収納できる大きさの塊でしか食べないけれど、 みかんは丸齧りできる食べ物だという概念に気づかずに生きていたことに驚いた。 そもそもミカンはリンゴやナシと違って皮ごと食べられ

        • 好奇心について

          写真は夜の富士山頂の気温で冷やしたプリンの原液は固まるのか試した実験。 結果、どろどろの甘い液体でしかなかった。 僕は好奇心が強い方だと思う。 その証拠に、山奥の研究棟で「それって社会の何に役立つんですか?」と言われかねない研究をしている。 学問が好きになったのはここ数年で、こんなに世界が面白いものだとは思っていなかった。 碌に受験勉強もしていない人間がこんなところまで来れたのは、 "頭の悪い奴が大学に行くのは無駄"論が 社会に浸透していなかったお陰だと思う。 (親

        星の可愛さとマッチョスイーツ

          ストーカーと鍵だらけの家(人生②)

          小学生の頃、ストーカー被害に遭っていた。 通学路の途中にある家の窓のカーテンの隙間から顔の片側だけを覗かせて、女の人が毎日こちらをじっとみている。 たまに庭で草刈りの格好をしてしゃがみ込んでいる時がある。その真横を通るときだけ、女の人は微動だにしない。 諸事情で引っ越した後も、登下校のルートで待ち伏せされてすぐに家がバレた。 学校が終わり帰宅して、まだ親の帰ってきていない時間、たまにインターホンが鳴る。扉を叩く音と名前を呼ぶ声がする。僕は急いで窓の外からは見えない部屋

          ストーカーと鍵だらけの家(人生②)

          人面藻

          モリの木の幹には人面の模様が浮かび上がるという伝承があるらしい。 真相に興味を持った生態学者たちは モリを管理する国の機関に許可を取って足を運び、確かにそこで人面模様の幹を見つけた。 ところどころに赤褐色の筋が入った灰色の木肌に、大きな卵形の紅色、燻んだ黄色、艶やかな橙、ライムグリーン。色彩豊かな人面模様がポスターのようにへばりついていた。 人面は剛毛で、模様のどこに触れても毛むくじゃらであったそうだ。 学者は調査後に体調を崩したものの、 人面模様から採取した毛状のサン

          善意を催すとき

          電車で席を譲りたくて、なんて言おうか逡巡しているうちに隣の人が席を譲ったとき、もやもやが残る。 その感情が僕自身の優しさに由来しないことに 気付いたのは中学生の頃。 道端のゴミを拾えなかったとき、感謝の言葉がとっさに出てこなかったとき。 優しい人間であろうとしている訳ではないが、 "できなかったこと"に対してしこりが残る。 僕の場合、"何かしなきゃいけない"という感情が発生して、思った通りの行為を遂行するという形でその感情を排出できないとストレスになるらしい。 ある

          善意を催すとき

          のめり込み切れないから芸術

          共同研究先に訪問がてら、 その土地の美術館に行ってきた。 久々に文系脳が捗った気がするので書き出してみる。 入り口は一面がモルタルで、モダンな雰囲気を醸している。 扉を抜ける。 吹き抜けの、足音だけが響くほど静かで、無機質な、階段だけの空間が広がっている。ボスの待ち受ける一部屋前のような予感から来る緊張が、段を踏むごとに高まる。 十分に期待させてから展示室に辿り着く設計になっていた。 最初の展示室は巨大な部屋で、いきなり教室二つ分くらいの圧巻の絵画が現れる。 静か

          のめり込み切れないから芸術

          クリスマス(人生①)

          僕が8歳のときのクリスマスプレゼントは、 ひとつがDSのソフト「星のカービィ ウルトラスーパーデラックス」、もうひとつは弟の死でした。 ポエミーな文章にするつもりはなくて、それは祖母が弟について綴った詩を部屋中に貼り付けていたのと、父と母のこれまた詩的なブログを盗み見たことで、すこし冷静になってしまったから。 詩的なもの自体は好きだけど。 クリスマスの明け方に眠気まなこでリビングに行くと、なんのラッピングもないDSソフトのパッケージがあった。 次の記憶は白っぽい廊下の

          クリスマス(人生①)