10月14日、結婚を報告した相席スタート・山崎ケイ。一方、相方の山添寛はトーク番組やライブなど各所で“クズ”仕事が増加中だ。コンビ間“社会性格差”が拡大する一方の2人に、2020年の“3大トピックス”を聞いた。

――2020年も終わりが近づいてきていますので、今回は今年の「相席スタートの3大トピックス」から始めさせてください。

山添：なるほど。「コンビのラジオなくなる」「単独ライブなくなる」……あともう一個、なんですかね。

ケイ：「ケイ結婚」は……？

山添：あぁ！　そらそうや。「ケイ結婚」ですね。

―― 一個目に来るかな、と予想してました。

ケイ：言い出さないなぁとは思ってたんだけど。

山添：すみません。この3つですね。

――では「コンビのラジオなくなる」から聞かせてください。昨年秋から始まった『相席スタートの密会Midnight』（文化放送）が今年9月で終了した件ですね。

ケイ：「ラジオ聞いてファンになりました」って言って劇場まで足を運んでくださった方もとても多くて、手応えはわりといいなと思ってたんです。ラジオ局の方も「好評ですよ、メールもたくさん来てます」って言ってくださってて、「嬉しいな」と思った矢先に、番組改変に伴い……。

しかも同じ枠でやっていたミキと和牛、チョコプラさんは別の時間帯に移動して、私だけ同じ局で別のラジオ（『卒業アルバムに1人はいそうな人を探すラジオ』）が始まったので、結果として山添だけ追放になりました。

山添：偉い人たちの間で「どうやって穏便に、相席スタートの男のほうだけ外すか」って会議がなされたんじゃないかと思うような形になりましたね。

ケイ：私個人は別の番組が始まってありがたいんですけど、ほかの3組はコンビで残留だったのも心に響きはしますよね。

山添：だから僕は最近、浜松町（文化放送の所在地）のほうに足を向けて寝てます。

――何か理由に心当たりはあるんですか？

ケイ：がんばってたほうなんですけどね。

山添：ケイさんはもともとラジオめっちゃ好きでずっとやりたくて、夢が叶ったわけですよ。僕はまったくラジオを聞かない青春時代を過ごして、自分でやらせてもらうようになって好きになったんです。だからもう、告られて付き合ったら自分のほうが好きになって最終的にフラれた、みたいな気持ちです。

ケイ：すごい良い表現じゃん。

山添：好きになったほうが負け。

ケイ：「ラジオに興味ない君が好きだったんだよ」ってことじゃない？　「私のこと好きな人は好きじゃないの」ってあるじゃん。

山添：愛されるより愛したい放送局やったんか……。

――悲しいすれ違いですね。2つ目は「単独ライブなくなる」。4月の開催予定が劇場休業に伴って中止になり、8月に今度は「濃厚接触者の疑いあり」ということで当日中止になってしまいました。

山添：コンビ組んでからずっと毎年やり続けてきたから、初めてできなかった年になりました。

ケイ：8月なんて、全部ネタつくって小道具も発注して技術スタッフさんとの打ち合わせも済ませて、本番迎えるだけだったもんね。準備っていう、単独のいちばん楽しくないところだけをやった。

山添：4月から協力してくれてた作家さん、スタッフさんにお給料をお支払いできてないから、なんとか2回め売ってお支払いできたらいいな、って意味でもやってたんですけど、結局それもできず。本当申し訳ないですね。

――そしてマイナスのトピック2つを乗り越えて、10月にケイさんの結婚発表がありました。おめでとうございます。

山添：本当よかったです。悲惨な年で、唯一いいことがあったといったらケイさんの結婚ですね。

――山添さんはお付き合いされてることも知らなかったんですよね。

山添：知らなかったです。だから報告を受けたときに「彼氏いはったんや」って思いました。探ったこともあったんですよ。「彼氏いるんすか？」「彼氏は……いないかなぁ」「いや、はぐらかす言い方やめてくださいよ」みたいな。でもそこから踏み込んで本気では探らないでいました。ちょっとどこか謎めいてるほうがケイさんはおもろいやろなって思ってたんで。「いいひんかったら、いろいろ聞くのも傷つけるかもしれんし」とかも考えました。

ケイ：みんなが私のいい女キャラを守ってくれる（笑）。

山添：いいひんかったら、そのキャラするのしんどなってくるでしょうしね。

――結婚することでそのキャラクターに影響があるかも、とためらいを感じたりはしましたか？

ケイ：まったくなかったと言ったら嘘になりますけど……。

山添：へぇ〜、そうなんや。

ケイ：女の人はどうしても、結婚すると周りからの見え方が絶対変わってしまうんですよね。自分では変わってないつもりでも。たとえば「結婚って、別にしなくてもいいと思うんですよ」って独身の女性が言うのと既婚者の女性が言うのとでは意味合いが違う。

同じ気持ちで言ってても、聞いてる側は結婚してる人に対して「してるから言えるんじゃん」って思うじゃないですか。男の芸人さんはそんなに変わらないと思うんですけど、どうしても女性の場合「おもしろい」って部分はちょっと減る気がしていて。

山添：なんかこう、哀愁みたいなんがなくなりますよね。

ケイ：そう。そのへんの不安はありましたけど、でも「だから結婚しない」とは思わなかったです。

山添：男に毒づくときも、独身の女性のほうが愛嬌は出ますよね。結婚されてる女性がやると、説得力が増しすぎるというか。

ケイ：そこは多分、男女コンビだからいいのかなって。女性同士だと「だからあんたは独身なのよ」って言いにくいじゃないですか。かといって、そこをいじらないのも説得力に欠けちゃう。男女コンビだと同じことを言ってもそんなに気にならないと思うんですよね。そのへんは得ではあるのかなと思います。

――クズ彼氏にキレる彼女というコントも、厚みが増して面白くなりそうですね。

ケイ：もし旦那さんにむかつくことがあったら、山添に報告してネタにしてもらうとかね。

山添：それはありがたいですね。ケイさんが怒るキャラクターをやるときも、お客さんが前より見やすくなるんちゃうかなと個人的には思ってます。“いい女”のケイさんは穏やかで心に余裕があるイメージがあるだろうから、怒ってるのがもしかしたら違和感があったかもしれないんですよね。

それが結婚されてる方ってなったら、奥さんが旦那さんに怒るってすごく一般的なことなので、コントのキャラクターでやっても自然さが一個増すんちゃうかなと。より自分が怒られやすくなってくるとは思います。

――それこそケイさんが仰った「だからあんた結婚できないのよ」みたいなことも怒られることも、男女コンビだからという前提に加えて、山添さんのキャラクターだからこそ成立する部分もあるのかな、とうかがっていて思いました。

ケイ：そうですね。こんな言い方もあれですけど、モテなさそうな人に「モテないのはこういうところが理由だ」って言っても多分あんまり気持ちよくないんですよね。でも山添の外見で、モテそうなのにモテないことについて言うと、見ていて気持ちいいんだと思います。

よく言ってるんですけど、私はスクールカーストみたいなものでいったら確実に山添より下にいた人間なので、山添にやいやい言うことで思春期にためてきた「いいな、あの人たちは楽しそうで……」って気持ちを昇華させてるから。

山添：勝手に恨まれてたんですね。

ケイ：何もされてないのにね。「くそ〜、彼氏だの彼女だの、ヤッただのヤラないだの……私たちはそんなレベルにもいないのに！」って思ってたのを、やっと口にしてお金をもらってる（笑）。だから見てる人もすっきりするのかなって。

――実際、山添さんはネタだけでなく、番組などでも“クズ”キャラとしてのお仕事が増えてきてますよね。なんというか、どんどん“言ってもいい人”になっていってる感じが……。

山添：まぁ僕で世の女性がデトックス効果を得られるんやったら……それに尽きますね（キリッとした顔）。

ケイ：この顔するんですよ、絶対。クズの話をしてるときは語尾も敬語になりますし。キリッとした顔で「うん、うん」ってうなずく。

山添：クズなこと言うときはできるだけ真摯な言い方で、プラマイゼロに持っていきたいって気持ちでいます。

――クズ紳士ですね。以前から、ケイさんにお金を借りてるという話をよくされてましたが、精算されたんですか？

山添：いやいや、真っ最中ですよ。シャッキングです（うなずく）。

ケイ：「うん、うん」じゃないのよ。

――「結婚を機に完済しよう」みたいなことは……。

山添：いや、そうなんですよ。もう返しに行かんと。

ケイ：ごはんもごちそうしていただきましたし、お揃いのちょっと高級なワイングラスをプレゼントしていただきましたし、ご祝儀もいただきました。

山添：そこはね、やっぱりお世話になってる女性にはちゃんとする男ではありたいから（キリッとした顔）。

ケイ：でもご祝儀渡してくれたあとに「ちょっと今月は、返済は勘弁していただきたくて……急な出費が多かったもので」って。“急な出費”の原因の人間にそれ言う？（笑）

■相席スタート
2013年結成の、自称「ちょうどいいブス」山崎ケイと、自称「クズ紳士」山添寛で構成する男女コンビ。

■インタビュー動画 「BEHIND THE STAGE」

https://youtu.be/s8jHnp2qyGI

■取材協力
koe' lobby
住所：東京都渋谷区宇田川町3-7 ヒューリック渋谷公園通りビル 1F

相席スタートINFO

よしもとお笑いライブ～師走の笑い締め～ in 練馬
日程：2020年12月12日(土)18:30開場・19:30開演
会場：練馬文化センター 大ホール(こぶしホール)
出演：NON STYLE、とろサーモン、ジャルジャル、アインシュタイン、パンサー、コマンダンテ、相席スタート、ゆりやんレトリィバァ

性格の悪いネタをするライブ
日程：2021年1月26日(火)19:00開場　19:30開演
会場：ルミネtheよしもと(東京都)
出演：囲碁将棋／TEAM BANANA／相席スタート／ニューヨーク／サンシャイン／シシガシラ／他
※チケット販売予定日は未定

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ライター／斎藤岬　撮影／越川麻希
スペシャルインタビューMOVIE：CAMSIDE