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御社の「業務プロセス改善」がなぜ頓挫したのか~第1回 業務プロセス改善を取り巻く環境~

「業務改善/業務改革の成功事例を教えてください」

弊社の仕事柄、このような質問をよく受けます。
しかし、その質問に答えて事例を紹介したとしても、多くの場合は

「その会社と私たちの会社は違いますから」

という言い訳で終わってしまうことが多く、実際にも成功事例の会社と質問をした会社は違うことはその通りなので、冒頭の質問は愚問だと言えます。

ただ、他社の成功事例や失敗事例からは学ぶべきことがあります。
この記事では、私がこれまでに見たり聞いたりしてきた経験から、共通する学びのエッセンスを抽出し、業務プロセス改善のポイントをお伝えしたいと思います。 

中小製造業にとっての「業務プロセス改善」とは

製造業は他業種に比べて歴史の長い企業が多く、その歴史は業務プロセス改善にとってマイナスに作用することがしばしばあります。
変えようと思った時に、

「昔からこの方法でやってきました」
「取引先との関係があってすぐに変えられません」
「従業員が対応できません」

など、積み上げてきた歴史そのものが業務プロセス改革の障害となるのです。
中小製造業にとっての業務プロセス改善は、積み上げてきたものを一度リセットし、新たに業務プロセスを構築すること、つまり業務改革なのです。

業務プロセス改善で得られる結果

業務プロセス改善が成功した企業は、

「従業員のストレスが軽減され、職場の雰囲気が良くなり、従業員が働きやすくなりました」
「お客様に満足いただける結果として、材料費の高騰などの値上げ交渉もスムーズに進めることができました」
「取引先内での手続きが簡単になり、納期遅れがなくなり、生産がスムーズに行えるようになりました」

など、売上/利益向上や在庫削減など、経営に大きなプラスの影響をもたらします。
その結果、変化の激しい現代でも、淘汰されることなく成長する企業へと変身しています。
業務プロセス改善は、企業の存続・成長のための登竜門だと言えるのです。 

業務プロセス改善の目的とは?

ICT、IoT、AI、RPAなど、ITを活用した手段が次々と登場し、自社にとって何を導入すれば良いのかが非常に分かりにくい時代です。

「IT活用が目的化してはいけない」

と言われていますが、業務効率化=コストダウンだけを目的にすることも成功を妨げる要因となっています。
なぜなら業務プロセス改善の目的は、新商品・新サービスの開発や販売単価の向上など、プラスの目的を持たなければならないからです。
このような目的がないと、現場のモチベーションを保つことができないことは、弊社が支援した事例でも証明されていることで、また別の記事でその失敗事例もお伝えできればと思います。

改善活動と業務プロセス改善の違い

製造業の日常に定着している改善活動(カイゼン)は、業務プロセス改善とは全く異なるものであることをまず認識しましょう。
改善活動は、実際に業務を行う担当者が、その目線を活かしながら小さな効果を積み上げていく活動で、ボトムアップの活動です。
一方で、業務プロセス改善は業務改革であり、経営陣の方針と決断が必要なトップダウンの活動です。
同じ“改善”でも真逆のアプローチであることを正しく認識する必要があります。

カイゼンと業務プロセス改善

業務プロセス改善が進まない会社

業務プロセス改善はトップダウンであると説明しましたが、業務プロセス改善が進まない会社は、トップ側の共通の特徴としては2点挙げられます。

・トップのビジョンが明確でない、もしくは伝わっていない
・トップがビジョン実現に向けた行動を取らない

業務プロセス改善を業務改革(BPR)と考えると、業務の在り方を再設定し、業務プロセスを再設計しなければなりません。
この仕事の責任を現場の職長クラスが負うことは無理があることはご理解いただけると思います。
経営陣が業務プロセス改善を現場に丸投げする場合、職長の権限の範囲では業務プロセス改善は進みません。
少なくとも経営陣は、社内のコアメンバーと認識合わせをしたり、具体的なビジョンを示したりする必要があるのです。
これを怠ると、業務プロセス改善をする権限を持たない現場メンバーに丸投げされ、メリットもない現場メンバーはモチベーションも下がり、うまくいかないのでしょう。

業務プロセス改善は、現場からボトムアップで行うカイゼンではなく、トップダウンで行う業務改革である、というのはこういうことを指して言っています。

トップ側の共通点以外に、もう一つ大きな要素があります。
それは「失敗を許さない組織文化」です。
短期的な成果のみで責任を追及されるとあっては、権限をもつ役員とはいえ、なかなか業務プロセス改善には踏み切れないでしょう。

「自分が考えている手段が正しいのか?」

と、やったことがない故に不安を抱え、やったことがない故に答えのない悩みも抱え、実行に移せないのです。
そして、実行に移せないため何も成果が出ずに評価もされません。
そしてまた短期的評価を求めると失敗できない悪循環が起こります。
冒頭で紹介した私が受ける成功事例に関する質問は、正解を欲するこうした失敗を許さない組織からされる質問でもあります。
やったことがないのであれば小さく失敗してみるしかないのです。
失敗は次に生かせるのであれば失敗ではない。
使い古された言葉ですが、態度や言動でもトップから実践していかなければならないでしょう。

失敗を許さない組織の悪循環

業務プロセス改善が進む会社

さて、反対に業務プロセス改善が進む会社はどのように取り組んでいるのかを紹介します。
経営者がビジョンを描いているのは間違いないのですが、意外にもそのビジョンは必ずしも壮大なビジョンではないことも多いのです。
例えば、

「従業員のストレスがなくなる」
「従業員が作業しやすくなる」
「お客様が気持ち良くなる」
「取引先内の手続きがラクになる」

などがあります。
ただし、壮大ではないのですが、具体的であり活動メンバーも認識が共有できていることや、自社の直接的な利益以外の効果や変化を求めて業務プロセス改善に取り組んでいることは、共通点の一つと言えるでしょう。

一方で、新事業開発など「新たに何かを始める」壮大なビジョンが目的となっている場合もあります。
新事業開発への人的資源配分のために既存業務の効率化を図る活動は、配置が変わる人材にとってモチベーションにもなりますし、経営陣としても自分事の課題として認識できるため活動にドライブがかかります。 

第一回の記事はここまでになりますが、この記事を読まれている方の会社はどうでしょうか?
もし失敗事例に当てはまれば軌道修正していただきたいですし、成功事例に当てはまれば自信を持って進めていただきたいと思います。 

次回は、業務プロセス改善に取り組む際の具体的な手法について失敗例を交えて紹介していきます!

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