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御社の「業務プロセス改善」はなぜ頓挫したのか?~第10回 これからの展望とDX~

業務プロセス改善に関わる本連載もいよいよ最終回です。今回は、これからの展望と中小製造業が取り組むDX(デジタルトランスフォーメーション)について紹介します。ただのデジタル化やITツールの導入ではなく、DXとは一体どんな取り組みが求められているのかを改めて考えることで、業務プロセスの改善に繋げていきたいと思います。 

DXの本質とは

DXと叫ばれて久しいですが、相も変わらずDX=デジタルツール導入と謳うキャッチコピーや、ITツールの販売事業者が後を絶たないのが非常に残念です。

DXとは、デジタルを活用してビジネスプロセスや組織文化をトランスフォーメーション、すなわち変革することであり、その本質はトランスフォーメーション、変革にあります。

つまり、今の業務のプロセスを変えずにただIT化したからと言って何も変革はされていなければそれはDXではないだけでなく、何も効率的になっていなかったり、効果的な製品やサービスを提供することに繋がっていなければ、経済産業省が求める変革とは全くの別物なのです。

逆に、製造設備などにセンサーを付けて取得したデータを、事務所に設置したモニターでモニタリングできるようにしただけであったとしても、それによって社長が現場をウロウロしなくなって良い方向に現場の緊張感が取れて自由な発想のカイゼンが進むようになったのであれば、それはDXと言って良いでしょう。

繰り返しになりますが、DXの本質は“変わる”ことになると覚えておきましょう。

中小製造業にとっての理想のDXと注意点

理想のDXは、企業の経営課題を明確にし、その課題を解決するために適したデジタル技術を選定し、導入した結果、課題が解決され目的を達成できることです。

つまりDXとは、最初からDXをしようと思うこと自体が理想的な取組ではなく、あくまでも目的達成や課題解決の結果をDXと呼ぶのです。

「最新のデジタル技術を導入しよう!」

最初にこうなってしまったら、それはこの時点で既に理想のDXとは言えません。

DXの本質でも触れたとおり、本質はあくまでも変革であるので、変革するための手段としてデジタル技術を活用しなければならないのです。

さて、改めて考えてみましょう。今、これをお読みになっている方の企業は、どんな変革をする必要があるのか、ということを。

例えば、業務効率化によるコスト削減で利益率を大幅に上げなければならない、新たに自社製品の開発をして下請けを脱却しなければいけない、など、大きな課題があるでしょうか。

まずは、SWOT分析などの経営環境の分析をきちんと行い、PEST分析などで自社がおかれている環境や今後の動向を見極め、PPMなどによって自社の製品やサービスの方向性を決めていくことが重要です。

その次に、課題を解決する手段の検討をする際に、デジタル技術の活用が可能かを考えます。

もちろん、課題解決の方法はデジタル技術とは限らないため、デジタル技術以外の方法で課題解決をしても全く問題なく、その場合はDXではないが変革して課題が解決されているため、目的を達成しているのであればそれで良いと思います。

中小製造業DXの事例

それでは、ここで弊社が支援したDXの事例を紹介します。

E社(プラスチックリサイクル業)が取り組んだIoT/AI研究

プラスチックをリサイクルし、顆粒状のプラスチック材料を製造するE社は、従業員16名、売上規模2~3億円の企業です。

顆粒状の製品に仕上げる最後の撹拌粉砕工程は、製品品質を決定づける重要な工程ですが、カメラによって映し出された映像を人が目視することで撹拌粉砕作業終了の判断をしていました。

撹拌粉砕工程はバッチ処理であり、1バッチのサイクルタイムが5~10分であるため、人がほぼ付きっきりで目視しなければならないことがボトルネックになっていました。

以前から、放射温度計によって温度を監視するなどのさまざまな自動化代替手段を考えて実験してきたものの、どれも生産で使用できる完成度に至らず人の目視を継続していましたが、作業負担が大きいことに加えて見逃しや判断の誤りにより、度々設備トラブルを発生させるなどの問題が生じていました。

そこで私は、撹拌粉砕設備の回転軸モーターの電流値を監視することで作業終了を判断できないか検討しました。市販のセンサーとマイコンとPCを組み合わせて電流値を波形に変えてモニタリングし、その取得した1,000を超える波形の分析を行うことで特徴量を見出すことに成功し、電流値波形のモニタリングによるリアルタイムな作業終了予測の機械化(AI化)を実現したのです。

市販のセンサーを組み合わせた計測機器
計測された電流値波形

この研究にかかった費用は計測器の製作や研究者の現地立ち会い含めて総額50万円程度です。

このように、AI研究やDXは、大きな費用をかけずに知恵と工夫で行うことができるのです。

DXは中小企業の方が取り組みやすい

業務プロセス改善もそうなのですが、組織や事業が変革するとき、とにかく手を動かして進めることが大切であり、実行した結果を踏まえながら改善していくプロセスに乗せることが重要です。

誰もがやったことがないことなので、リスクを恐れ過ぎて検討に検討を重ねても明確な答えなんてないことの方が多いのです。

また、対象となる業務範囲が広くなればなるほど作業が複雑になります。

従って、小さい組織の方が、スピード感があり作業範囲も小さいためDXなどの変革には適していると言えます。

大企業が検討や稟議を繰り返しているうちに、中小企業は小さな失敗を何度もでき、失敗から得られた知見を次に生かすことができるのです。

トップの声が現場に届きやすいことも変革をしやすい理由の一つです。

経営方針から経営課題が明確になり、経営課題解決のための手段の検討や実行まで、トップの目の届くところで変革を行うことができます。

この連載を通じて一貫してお伝えしている“トップの姿勢”を明確に見せることで、業務プロセス改善やDXの推進力を現場に伝えることが可能なのです。

おわりに

全10回にわたってお届けしてきたこの連載ですが、業務プロセス改善に頓挫した理由、成功のヒント、具体的実行手段など、行動に移せるものはありましたでしょうか。

今回の連載を通じて、日本産業を支える製造業に少しでも貢献できていれば幸いです。

業務プロセス改革にお困りの企業様は、ぜひ弊社にご相談ください!

一緒に変革を遂げましょう!!

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