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一級建築士製図試験を受けたはなし⑤

今回は、令和2年度に一緒に記述研究していたモチの体験談です。一級建築士試験でまことしやかに語り継がれる様々な都市伝説。今日はそんな都市伝説の一つを身をもって検証した話です。

製図の都市伝説とは

こんばんは。記述研究所のもちです。本日は、私が解明した一級建築士製図試験にまつわる都市伝説についてお話ししたいと思います。

一級建築士製図試験の作図用紙はあらかじめ緑色で印刷された項目がいくつかあります。これらに関して、こんな話を聞いたことがありませんか?

1.作図場所間違え、図面タイトルを見え消し変更する
2.印刷境界線に「道路境界線、隣地境界線(〇m)」記入が必須
3.印刷方位は鉛筆でなぞることが必須

【注意】これらの都市伝説は合否結果が確認されていますが、あくまで当時の結果です。現在は採点基準が変更されているかもしれません。とりわけ、1番に関しては時間がない時の最終手段として記憶の片隅にとどめる程度としてください。

・作図場所間違え、図面タイトルを見え消し変更したのち合格

A2の作図解答用紙は大まかに4分割され、上下左右の位置に各階の平面図、断面図などが指定されます。年度によって位置が入れ替わることがありますが、試験の緊張から、勘違いをする受験生が一定数存在します。

早めに気が付いた場合は書き直すことができますが、一面書き終わった場合などは取り返しがつきません。その際に印刷された「1階平面図兼配置図」の文字を二重線で消して「2階平面図」と書き直すことで対応する作戦です。これは合格した人が確認されている案件です。

・印刷境界線に「道路境界線、隣地境界線(〇m)」記入が必須一階部分の記入

位置には、敷地の境界線が記入されています。四周面の各線には、距離と線種の説明を記入しなければならないとされています。しかし、記入しなかったとしても合格した人はいますが減点の可能性はあります。

・印刷方位は鉛筆でなぞることが必須

図面方位はあらかじめ印刷されています。この方位は自分でなぞる必要があるとの説もあります。しかし、この件に関しては多くの人がなぞることなく合格していますので、ほぼほぼ噂話と思われます。時間に余裕があるときは書けばいいでしょう。

このように、作図用紙にあらかじめ印刷されているものについては、諸説あるようです。

検証テーマ

今回のテーマは、そんな作図用紙について「印刷されている敷地境界線を別の場所に書き直したら一発アウトになるか?」というものです。

・境界線書き直しは一発アウトではない

結論からお話ししますと、作図用紙に印刷されている敷地境界線を書き直してもランクⅣ、すなわち一発アウトにはなりません。根拠は、私が実際にやったからです。それも合格した年にです。

ランクⅡ、Ⅲどころか、合格できましたので、重大な減点ではなかったようです。

・なぜ書き直したのか

私が敷地境界線を書き直した理由は、車いす使用者用駐車場の寸法不足に気づいたからです。敷地ヘリアキ7mのところに、幅3.5m以上必要な車椅子使用者用駐車場を2台分書こうとしていました。

建物の外壁センターから7mだと、外壁や柱の外面からは3.5×2=7mが確保できません。バリアフリー法違反は確実でした。

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記入状況(朱書き寸法は説明のため追加)

このヘリアキ不足に気づいたのは、試験時間残り1時間くらいのときでしたので、図面を書き直していては到底きn間に合わない状況でした。悩んだ末、なんと、ヘリアキ不足解消のためだけに、印刷されている敷地境界線を「×」で消して、1mずらした場所に書き直しました。

「えっ!そんなことで!?」と思いますよね。

普通に考えたら、「バリアフリー法違反なんて、小さな減点ですむ」と割り切ってそのままにすると思います。しかし、私が受験したときの問題文には、この一文がありました。

「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」に規定する特別特定建築物に該当し、「建築物移動等円滑化基準」を満たすものとする。

この一文を重く受け止め、境界線書き直しという思い切った行動に出てたのでした。

製図試験本番というプレッシャーのなかでは、些細なことが気になって、普段ではやらないようなことをやってしまうものなんだと実感しました。

書き直したから合格したのか、書き直さなくても合格できたのかは分かりませんが、敷地境界線を書き直しても一発アウトではないということは証明されました。

・どんなふうに書き直したのか

実際には、下記写真のように書き直しました。

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再現イメージ(北側)

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再現イメージ(南側)

・印刷された境界線を「×」で消して、1mずらした場所に太めの線で寸法線もすべて修正
・「道路境界線」「隣地境界線」は書き直し忘れ
・歩道の切り開きは書き忘れ
・書き直していることを確実にアピールするため、寸法線だけはしっかり書くことを意識

振り返ると、ほかの部分でけっこう書き忘れがあったのに合格できたので、建物の位置さえわかればOKなのかなと思います。

・ヘリアキ不足に気づいたそのとき、、、

先ほども少し書きましたが、私がヘリアキ不足に気づいたのは、残り1時間くらいのときでした。

次のようなことを考えながら、しばらく悩んでいました。

・図面を書き直していたら、確実に時間切れになる
・ヘリアキ不足を解消するには、敷地境界線を書き直すしかない
・軽微な減点ですむかもしれない
・重大な減点を取られるかもしれない
・これが合否を分けるポイントになるかもしれない

ここで、恐らくほとんどの人はそのままにすると思います。しかし、私の頭にはあることがよぎっていました。

「2階平面図と3階平面図の作図場所を間違えてしまい、図面のタイトルを矢印で入れ替えて合格した人」が実在することを、人づてに聞いて知っていたのです。

図面タイトル入れ替えがいけたのなら、敷地境界線書き直しもいけるのではないか?と考えました。悩んだ末、「守りに入っては勝てない、攻めるしかない!」と実行に移しました。

検証結果

ただでさえ時間がない中で、悩むのに時間を使ってしまいましたので、最後はギリギリの戦いでした。

何度も「今年もダメなのか?」という考えが浮かびましたが、同時に頭にひびいたのは、あの有名なセリフでした。

「あきらめたら そこで試合終了ですよ…?」

安西先生に力をもらった私は「まわりも苦しんでいるはず 完成させて採点の土俵に乗ればチャンスはあるはずだ!」と信じて、何とか最後までやりきることができました。

試験終了後はしばらく放心状態で「また来年もか~」とかなり落ち込みました。

そして、合格発表の日。合格している気がしなかったので、なかなか試験元ホームページの合格発表を確認することができませんでした。

確認できないまま仕事をしていましたが、私が打合せをしていると、遠くで上司が親指を立てているのが見えました。

思わず打合せを抜けて確認すると、本当に自分の名前がありました。

とてもうれしかったと同時に、「これで開放される」と、ほっとしたのを覚えています。

まとめ

私の体験をもとに、作図用紙の都市伝説についてお話ししました。今後、どうなるかは分かりませんが、次のようなことが言えます。

・敷地境界線を書き直しても一発アウトではない
・「道路境界線表示」や「歩道切り開き」の記入漏れは重大なミスではない

正直、図面に関しては、ほかにも結構ミスしています。(庇、敷地の歩行者出入口▲、断面図の設備等の記入漏れ)

それなのに合格できたのは、記述で点数を稼げたのではないかとも思っています。記述はけっこう手ごたえがありましたので。

そして、この試験を通じて学んだのは、最後まであきらめずにやりきればチャンスはあるということです。あのとき、勇気をもって行動し、最後まであきらめなくて本当に良かったと思います。

今後、一級建築士製図試験を受験する方があきらめそうになった時、安西先生とこの記事を思い出して、最後まで戦い抜いてくれたらうれしく思います。最後まで読んでいただきありがとうございます。

テーマが都市伝説なので、これだけは言わせてください。「信じるか信じないかは、あなた次第です!」

今回の体験談シリーズの写真は、長崎県諫早市にあるフルーツバス停です。


こちらの経験談も参考にしてみてはいかがでしょう。


最後まで読んでいただきありがとうございます。記事をまとめたマガジンもご覧ください。





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