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ネッテル・ワールドへのご招待

 こんにちは、現代書館営業部です。昨年12月刊行のグアダルーペ・ネッテル『花びらとその他の不穏な物語』、各所で盛り上がっております🌵🥀今回はネッテル関連イベント、書評、書店さまでの展開やフェア情報をお届けいたします。

グアダルーペ・ネッテル著/宇野和美訳『花びらとその他の不穏な物語』書影。帯の文章は次の通り。「他人には言えない習慣、強烈なる思い込み、奇妙な癖を手放せない人びとの物語。」「すべての人間はモンスターであり、人間を美しくしているのは、私たちのモンスター性、他人の目から隠そうとしている部分なのです。グアダルーペ・ネッテル」
『花びらとその他の不穏な物語』
グアダルーペ・ネッテル著/ 宇野和美訳
2000円+税 現代書館

まぶたに魅了されたカメラマン(「眼瞼下垂」)、夜、むかいの集合住宅に住む元恋人を見つめる女性(「ブラインド越しに」)、植物園に通い、自分はサボテンであり、妻はつる植物だと気づく男性(「盆栽」)、小さな島で〈ほんものの孤独〉を探す十代の少女(「桟橋の向こう側」)、トイレに残った香りの主を探す若者(「花びら」)、似た者同士の恋人とこじれた関係に陥る女性(「ベゾアール石」)。
パリ、東京、メキシコシティ、ヨーロッパの架空都市を舞台に、
ひと癖持ち合わせた登場人物たちが大いに躍動する。
メキシコの実力派作家グアダルーペ・ネッテルの世界観全開、
6篇の珠玉の短編小説集。

 『花びらとその他の不穏な物語』は、2021年刊行の『赤い魚の夫婦』に続く2作目の日本語訳です。ネッテルについて詳しくは『赤い魚の夫婦』訳者の宇野和美さんによるあとがきを公開しています。ぜひご覧ください。

 外国文学をあまり読まずにきた人生ですが、ぐいぐい読み進めずにはいられないおもしろさでした。個人的には「桟橋の向こう側」が好きです。読み終えてから冒頭のエピグラフに戻って痺れました。

 ちなみにメキシコでの刊行は『花びらとその他の不穏な物語』が2008年、『赤い魚の夫婦』が2013年です。どちらから先に読もうか迷われている方のご参考になればと思います。

【イベント情報】

 今週末の2月4日(土)、千代田区立内幸町ホール国際交流事業「メキシコ文化フェア」内で、『花びらとその他の不穏な物語』『赤い魚の夫婦』訳者の宇野和美さん、スペイン語文学者の柳原孝敦さんのトークショーが開催されます。直前の宣伝となってしまい恐縮です……。
 イベントは入場無料、トークショーは13時45分からです。「メキシコ文化フェア」の詳細は下記リンクをご参照ください。

 会場では『花びらとその他の不穏な物語』と『赤い魚の夫婦』の販売をおこないます。販売は11時ごろをめやすに開始します。12時ごろからは訳者の宇野さんもお越しいただける予定です(ご希望があればお手持ちの本にもサインをしてくださるとのこと!)。おまけの特製しおりもお持ちいたします。お立ち寄りいただけたら幸いです。

書籍2冊としおり2枚。書籍はグアダルーペ・ネッテル『花びらとその他の不穏な物語』『赤い魚の夫婦』各1冊。しおりは白地に緑色でサボテンが描かれたものと赤色でベタが描かれたもの各1枚。
『花びらとその他の不穏な物語』『赤い魚の夫婦』と特製しおり

【書評情報】

 各社新聞の書評欄で『花びらとその他の不穏な物語』を取り上げていただいた中から、いくつか抜粋してご紹介いたします。

鴻巣友季子さん(翻訳家)

昨年邦訳が話題を呼んだ『赤い魚の夫婦』につづき刊行された『花びらとその他の不穏な物語』には、日常風景の隅にまぎれた危うい言動やいびつな瞬間を截りだす六篇が収録されている。(中略)どの篇にも、のぞき、フェティシズム、妄想、抜毛……など大なり小なり変わった「奇癖」がとりあげられる。ひたむきになにかを追う束の間のはかない時間があり、それを過ぎゆくままに見送る人たちがいる。怖いような執着、執念と底知れぬ諦念が同居しているのだ。

毎日新聞2022年12月24日

大塚真祐子さん(書店員・三省堂書店成城店)

谷崎潤一郎や川端康成をも彷彿とさせる、フェティシズムの偏執や狂気を淡々と紡ぐ物語群は、描かれる都市とともに、読む自分の日常もいつしかあちら側へ「越境」するようだ。

毎日新聞2023年1月25日

長山靖生さん(評論家)

想像を超えるのは著者の描写の深さであり、それが表面的な異常性を突き抜けて、普遍的な人間の欠落、誰もが抱える人間の歪みへの自覚へと到達する。画家は平面の中に、立体の組み合わせで出来ている世界を表現するが、作家は文字という概念表現で、不可視の魂を捉えようとする。ネッテルは人間の真実と驚異を鮮やかに捕捉することに成功している。だから読者が気付かされるのは物語の中の特異性や逸脱ではなく、自分の中にある不穏な部分だ。

北海道新聞2023年1月29日

中野善夫さん(英米幻想文学研究家、翻訳家)

これらの「不穏な物語」を読み終えると、自分の隠している癖が膨らんで表に出てくるのではないかという不安を抱いてしまいそうである。自分にはまったく癖がないと思っている人でも、そこで初めて自分の癖に気づいてしまいそうだ。今まで平穏に生きてきたのに。あるいは、人の癖に気が付いて、気になって仕方がなくなるかもしれない。

図書新聞2023年2月4日号

 ネッテルの魅力を凝縮した文章を寄せていただきました。書評をふまえて作品を読むとまた違った味わいを得られます。ありがとうございました!

【フェア情報】

紀伊國屋書店新宿本店さま

 エスカレーターで2階に上がってすぐの場所で、既刊『赤い魚の夫婦』とあわせて盛大に展開してくださっています(感謝と敬意を込めてネッテルタワーとお呼びしています)。美しく迫力のある陳列、不穏さ漂う「10の質問」が目を惹きます。

次の質問にお答えください

人には言えない癖がある
物心つく前に罪を犯したことがある
無意識に何かに感情移入することがある
小説との共鳴は自らの開放を意味する
前世の記憶がある
〈ほんものの孤独〉という楽園を知っている
村上春樹作品を好んで読む
死に対して恐れという感情が当てはまらない
秘匿すべき部分に自己愛を注いでいる
親和性を感じる特定の昆虫・動物・植物が存在する

はいと答えたものが半分以上あった場合、
あなたはすでにネッテルの世界に足を踏み入れています。

 こちらの「10の質問」、なんと文芸ご担当者さまのオリジナルです! 刊行まもない12月から2月現在に至るまで大きく取り上げてくださり、たいへん励みになりました。まだ展開してくださっているので、どうかネッテルタワーをお見逃しなく🥀

紀伊國屋書店吉祥寺東急店さま

 文芸・文庫ご担当者さまによる新春推し本フェア「読書って、すごく密なので」に『花びらとその他の不穏な物語』を選書していただきました。

 フェアは2/28まで、詳細は上記のリンクからご確認いただけます。選書の紹介文もサイトで公開されています。1冊ずつ添えられた紹介文や店頭のポップからご担当者さまの熱意を感じ、その中に選んでいただいたことをうれしく思います。私も店頭で『ガルシア=マルケス中短篇傑作選』を購入しました。

 紀伊國屋書店新宿本店さま、吉祥寺東急店さまには大展開とフェアのお礼を兼ねて特製しおりをお持ちしました。特典付き書籍として店頭で販売してくださっています。特製しおり、書店さまからご要望いただけたらどしどしお作りいたします。お気軽にご連絡ください!

 『花びらとその他の不穏な物語』訳者あとがきで、宇野さんは「ネッテルは、特別なもの、特殊なものを排除しない。むしろ賛美し、日常と地続きで描く。ネッテルの物語世界は、分断しがちな現代社会と対極にあるのかもしれない。」と書いていらっしゃいます。誰しも抱えるいびつさや欠落を描き出すネッテル・ワールド、さらに広がっていくさまを見てみたいなと思います。そしていつか長編作品の翻訳をめざして、営業部としても引き続き盛り上げてゆきたいです。

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